不要になった木の端材が動物に変身
“廃材再生師”という肩書きを持つ加治聖哉さんの正体は、芸術家。廃材を使って立体的な作品を生み出すジャンク・アーティストです。
活動拠点は、長岡市栃尾の谷内(やち)商店街にあるギャラリー〈白昼堂堂〉。この日は体長約3.5メートル、高さ約1.3メートルという大きなトラの作品が置かれていました。角張った木の端材から生まれたとは思えない、美しい肢体が目を引きます。
「大人が乗っても大丈夫なんですよ」と、ひょいっと乗って見せてくれた加治さん。「解体もできるんです」と、今度は頭部をごそっと外してくれました。大人の体重に耐えられるのは、動物が本来持っている理にかなった骨格ゆえだそう。機会があれば、こういったことを気さくに見せて説明してくれるため、作品を見た子どもたちは興味津々なのだとか。
新潟県村上市出身の加治さんは、長岡造形大学でアクセサリーなどをつくる彫金を専攻。卒業後は埼玉県にある現代美術家の村上隆さん率いるアートカンパニー〈カイカイキキ〉の制作スタジオで働いていました。そして2019年7月、地域おこし協力隊として長岡市栃尾へ。
「このギャラリーはもともとここに住んでいたおばあちゃんが、取り壊しを考えていた空き店舗でした。でも、まちの人たちは、なんとかして残したいと、地域おこし協力隊を呼んで活用することにしたんです」
加治さんの主な任務は、空き店舗をギャラリーに改装して運営すること。そして作品を通して地域を盛り上げていくこと。
「仕事内容を聞いたとき、地域に貢献しながら独立を目指すのは、やりがいがあって、おもしろそうだなと思いました。いつかは長岡に戻ってアーティストとして活動したいと考えていたので、協力隊になることに迷いはなかったです」
着任後は休耕田を利用して作品づくりをしたり、栃尾エリアの飲食店などを借りてワークショップを開催したそう。ギャラリーは2020年9月にオープン。作品展やイベントのほか、ギャラリースペースの貸し出しも行っています。