新潟のつかいかた

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商店街の空き店舗をギャラリーに。
廃材アートで栃尾地域を盛り上げる | Page 2 Posted | 2022/03/23

商店街を盛り上げるイベントを企画

トラの作品にまたがる加治さん

ギャラリーがオープンしてからは、2か月に1度、土日を利用してアートイベント〈とちおでマーケット〉を開催。仲間のアーティストにも声をかけ、地域の人たちが気軽にアートを楽しめるイベントを企画しています。

「たとえば『ワークショップ』をテーマにしたときは、写真、グラフィック、水彩画など5つのブースを用意し、興味のあるジャンルを好きなだけ体験してもらえるようにしました。また『アート&クラフト』がテーマのときは、金属、ガラス、アクセサリーなど、異なる分野で活躍する作家さんが、それぞれ自分の作品を販売するマーケットを開きました。毎回、2日間で100人以上のお客さんが足を運んでくれます」

インタビュー中の加治聖哉さん

イベントや展覧会がないときは、ギャラリーはアトリエに。午前中は仕事の打ち合わせで外出することが多く、午後から作品づくりをするそうです。そもそも加治さんが廃材で作品をつくろうと思ったのは、大学2年生のとき。

「建築の課題に椅子製作があるのですが、みんな材料取りがうまくできなくて、端材がたくさん出てしまうんですよね。だからゴミ捨て場に木材がいっぱい捨ててあったんです。これを使ってあと2、3脚はつくれるなと思ったのがきっかけでした」

いろいろな端材
木の端材は地元の大工さんや建築会社から調達。

それから廃材を主役にした作品づくりが始まります。

「彫金を学ぶ生徒のなかでは完全に異端児(笑)。先生からも、お前は好きなことをやっていいといわれ、卒業制作では木と鉄の廃材を使い3.5メートルのカジキマグロをつくりました」

今でも作品のモチーフは動物のみ。骨格の比率を正確に割り出し、原寸大でつくることをモットーとしています。

作品の設計図と木材
作品の材料は木材が中心。時にはコルクを取り入れることも。

「動物に限定しているのは、廃材を“死んだ材料”と捉えているから。捨てた人にとって価値がなくなってしまったものに“もう一度命を吹き込む”という意味で、生きている動物をつくろうと思いました。素材の持ち味を生かしたいので、塗装はしません。でも作品を見てくれる人にリアルな動物を伝えたいから、実際のサイズにはこだわっています」

骨格から描かれた作品の設計図
骨格から導き出す設計図。

加治さんが作品をつくる際も端材が出ます。これらは猫やキツネなど比較的小さな動物になり、さらにそこで出た端材はヒヨコやタツノオトシゴなど、さらに小さな生き物に。どこまでも廃材と向き合い、その可能性を見せてくれます。

全長20メートルのザトウクジラ作品
「観光名所やフォトスポットのひとつとして、地域にアートを」というテーマのもと、地域おこし協力隊としての仕事として制作したザトウクジラ。全長20メートル!
本物のペンギンと並んで展示されたペンギン作品
2021年、上越市立水族博物館〈うみがたり〉で本物のペンギンと並んで展示された作品。塗装をせず、木材を焦がすことで、色調のメリハリを出します。
地域でのワークショップの様子

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