子どもたちに「廃材アート」を伝える活動
もうひとつ協力隊として行っているのが、地域の学校での講演。
「昨年は月に1度のペースで行いました。写真を見てもらいながら作品ができるまでの工程を説明して、質問も受けます。時間に余裕があるときはワークショップを取り入れることも」
そして講演では必ず「お金の話」をするといいます。
「いつも牛の作品を例にして聞くんです。『これはいくらだと思いますか?』って。38万円の値段がついたものですが、たいていの子どもは、それを聞いて『高い』って反応するんです。でもどうしてこの価格になるのか。材料は廃材なので無料ですが、運搬費や人件費がかかります。見た目だけではわからない、ものができるまでにどんな人たちがどのように関わっているのかを知ってもらえたらと思って」
講演に加え、機会があれば栃尾以外の地域でもワークショップを開き、廃材アートの楽しさを伝えている加治さん。活動は少しずつ知られるようになり、商店街でもいろいろな人から声をかけられるようになったそうです。
「小学生が学校帰りに遊びにきてくれたり、夜まで作品づくりをしていると、近所の人たちが夕食を持ってきてくれたり。ありがたいですね。時には家に呼ばれて、お茶をごちそうになることも。年配の方の話を聞くのが好きなので、そんな時間も楽しいです」
今年、地域おこし協力隊の任期を終えます。活動の集大成として、5月28日から6月5日までの9日間、栃尾のまち全体をギャラリーに見立てた作品展を開催するそう。
「栃尾にある施設に協力してもらって各エリアに作品を展示します。作品とともに、栃尾のまちを見て回ってもらいたいというのが狙いです」
都会の希薄な人間関係が苦手で、ちょっぴりお節介な人たちに囲まれたこのまちが心地いいと話す加治さん。「このまま協力隊を続けたいくらい毎日が楽しい」という言葉が印象的でした。今後も栃尾を拠点にアーティストとして活動していく予定。廃材からどんな生き物が生まれるのか、これからの作品も楽しみです。
Information
【廃材再生師 加治聖哉】
web:廃材再生師 加治聖哉
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【白昼堂堂】
web:白昼堂堂
credit text:矢島容代 photo:池戸煕邦