始まりは“捨てられていたアルコール”
2019年、越後薬草では酵素商品の品質向上と製造過程の効率化のため、減圧式蒸留器を導入。すると、それまで熱で気化させて空気中に放出していたアルコールが、低温蒸留によって液体として手元に残るようになりました。
製造過程でアルコールがつくられる場合、酒造免許の取得が必須です。さらに蒸留酒の免許取得の条件としては、年間で6キロリットル以上の製造が必要とされています。
「製造量はクリアし、まずは全国の大手酒造メーカーにアルコール原料としての買い取りを打診しました。ですが、80種類のボタニカルが含まれた独特の原酒はどこも取り扱いの実績がなく、『こんなもの使えない、扱い方もわからない』と断られ続けてしまって……」
そこで「じゃあ自分たちで売るしかない」と決断したのが、同社の2代目である塚田和志社長です。これが越後薬草のクラフトジンの始まりとなりました。


「お酒が好き」という
シンプルな動機で蒸留担当へ
蒸留部門の責任者・梅田智博さんは、蒸留所建設前は本社の事業部長を務めていました。「お酒が好きだから、自分で責任をもってやってみたい」と手を挙げ、自ら名乗り出ての転身だったそうです。
「梅田本人は今まで他社メーカーでの修業経験はないですし、担当になってからもつくり方を外部から教わることはありませんでした。小さな蒸留器からひたすら試行錯誤を繰り返し、酒販店やバーテンダーにフィードバックをもらいながら磨き上げました。レギュラー商品の〈EXTRA HERB〉にたどり着いたのが2024年で、約4年かかったと聞いています」

お酒づくりに関してはまったくの素人だった越後薬草が、外からの知見を入れずにつくったからこそ、唯一無二のジンができあがったのかも知れません。

廃棄からアートへ
蒸留所のすべてに意味がある
2022年に建てられた越後薬草蒸留所は、1階のファクトリー、2階のアートギャラリー、3階のラボフロアから成り、すべて塚田社長のアートへの情熱から生まれています。
2階に展示されている絵画の絵具は野草を煮出したエキスでつくられ、本社(酵素)と蒸留所(ジン)を物語の上でつないでいます。3階のカウンターテーブルには、妙高山から日本海にかけての関川の石が上流から下流の順に埋め込まれているそうです。


“アートとして五感で味わう”というコンセプトのとおり、まるで美術館のような越後薬草蒸留所ですが、ただ美しいだけではありません。ごみを一切出さない循環型蒸留所を目指し、「リサイクル」ではなく、「自然環境に配慮したサイクル」を構築しています。
「酵素飲料やジンを製造するうえで使用した野草ハーブは、農業用の肥料に加工し、その肥料を使用した畑でハーブなどの原材料を生産しています。その畑で育ったものを酵素飲料、ジン、スピリッツの原材料に使用するサイクルで、循環型の蒸留所を実現しています」



