ご当地の食材をお取り寄せして調理し、おうちにいながら現地を訪れたような最高の旅気分を味わいませんか? 今回は、新潟が誇る野菜「里芋」のおいしいヒミツと、名店シェフが提案する贅沢レシピをご紹介します。
縄文時代からのおつきあい!「里芋」の魅力
イモといえば、じゃがいもやさつまいも。でも実は、これらがメジャーになったのは江戸時代以降のお話だそう。それまでイモ界の王者として君臨してきたのは「里芋」だったといわれています。
インド東部から東南アジアが原産で、高温多湿なところが大好きな里芋。中国から日本に伝わってきたのは、なんと縄文時代のことなんだとか。増え方も独特で、まるでファミリーのように親芋から子芋がどんどん増えていくことから、豊かさの象徴として、また縁起のいい野菜として長く愛されてきたのだそう。
新潟県でも、そんな里芋をたくさん育てています。信濃川や阿賀野川などが流れる水はけのいい肥沃な場所で栽培されており、「JAグループ新潟」の公式サイトによれば、年間2000トンもの生産量があるんだとか。4月に植えた種いもを9〜10月にかけて収穫するのが新潟の毎年のルーティン。そこから翌年の春にかけて出荷されていく秋冬の味覚です。
中国四川料理店〈喜京屋〉の疋田シェフも支持
「新潟の里芋はいろんな種類があるんですよ。魅力は、やっぱりきめの細かいところ。他県のものとじっくり比較したことはありませんが、ぬめりもしっかりとあります」と教えてくれたのは、『ミシュランガイド新潟2020特別版』に掲載された中国四川料理店〈喜京屋(ききょうや)〉の5代目店主・疋田昭一郎さんです。
疋田さんが言うとおり、新潟には〈帛乙女(きぬおとめ)〉〈里のいもこ〉〈砂里芋(さりいも)〉といった数々の“ブランド里芋”があります。
「里芋といえば、思いだすのが『のっぺ』。お正月に食べるハレの日の伝統料理で、だしと醤油でシンプルにいただく家庭もあれば、甘くする家庭もあって、それぞれ家によって味が違うんですよ。我が家でも祖母がよくつくってくれました。里芋のとろみがおいしいんです」(疋田さん)
懐かしの味をそう語る疋田さんは、新潟県長岡市生まれ。明治28(1895)年創業の〈喜京屋〉の4代目である父の背を見て育ち、高校卒業後は“中華の鉄人”こと陳建一さんに師事。陳さんが営む〈四川飯店〉(東京・永田町)で修業したのち、家業の〈喜京屋〉を継ぎました。
「“料理は愛情”というのが師の教えでした。だから、私たちのお店のモットーも“愛情笑売”。レシピに忠実にあることよりも、お客さまの顔を見ながら味見をして、そのつど最もおいしいと思うものを提供するように心がけています」(疋田さん)
長岡を代表する“まちの中華屋さん”として地元に愛される〈喜京屋〉は、「麻婆豆腐」や「海老チリ」、「チンジャオロース」、「よだれ鶏」など100種類を超えるお品書きと卓越した味わいで今日も賑わっています。
Information
疋田シェフのおすすめ里芋レシピ
新潟の秋の風物詩ともいえる里芋。これを使って疋田さんが教えてくれたのが「里芋と海老のクリーム春巻き」です。
「春巻きといえば中華のメニューですが、今回はその垣根を超えて洋風に仕上げました。アツアツの里芋の食感は、グラタンのようなクリームソースによく合うのです」(疋田さん)
寒い季節に心と体をほっこりと温めてくれるこのレシピは、新潟のスゴ腕シェフたちのレシピ動画を発信しているメディア『新潟ウチごはんプレミアム』に掲載されています。
「今回の春巻きでは、食感にもこだわってみました。里芋はほくほく、海老はぷりぷり、クリームソースはとろとろで、春巻きはパリパリ。口に運ぶたびに、いろんな味と食感が楽しめるはずです。また、春巻きは平らなので、フライパンで気軽に揚げ焼きにできる点も魅力。多めにつくって冷凍しておくと便利ですよ」(疋田さん)
ちなみに、里芋は一般的に、新聞紙やペーパータオルなどで包み、日光のあたらない、風通しのいいところに置いておくと、秋冬なら1か月ほどもつといわれています。皮つきのまま冷凍した場合も1か月ほど保存でき、食べるときは電子レンジで加熱して皮をむけばすぐに食べられます。
ねっとり、むっちり、ほっこりと、いろいろな味わいで楽しませてくれる里芋。新潟ならではの逸品を使った春巻き、ぜひお試しを。
Recipe
【材料】 10人分
・里芋 …… 皮つきで200g
・むき海老 …… 100g
【A】塩 …… 適量
【A】片栗粉 …… 適量
【B】塩 …… 1つまみ
【B】酒 …… 少々
【B】こしょう …… 少々
【C】片栗粉 …… 少々
【C】サラダ油 …… 少々
・卵 …… 1個
・春巻きの皮 …… 10枚
・ピザチーズ …… 50g
<クリームソース>
【D】牛乳 …… 200cc
【D】バター …… 10g
【D】塩 …… 1g
【D】小麦粉 …… 12g
【D】砂糖 …… 4g
【D】こしょう …… 少々
【作り方】
1 里芋をレンジ600Wで4分加熱し、粗熱が取れたら皮をむき、拍子木切りにする。
2 むき海老に【A】を加えてよく揉み、水で洗い、水分をよく拭きとる。
3 海老をボウルに入れ、【B】を加えてよく揉む。粘りが出たら卵白を小さじ2加え、更に揉む。【C】を加え軽く混ぜる。
4 フライパンに油を少々ひき、海老の両面を焼く。火が通ったら取り出して半割りにする。
5 フライパンに【D】を入れ中火にかける。トロミがついたら器に移し冷蔵庫でよく冷やす。
6 春巻の皮の裏表を確認して、皮の中央やや手前にソース20gチーズ5g里芋15g海老1匹分を乗せ巻く。3で余った卵を溶いて、皮をつなぎとめる。
7 170℃くらいの中温の油でゆっくりと揚げて完成。
Profile 矢口あやは
大阪生まれ、東京在住。ライター・編集・イラストレーター。雑誌やWEB、書籍などの制作を中心に活動。料理が大の苦手。文化祭でゴマ団子を調理した際には破裂した団子が天井で跳ね返り、意中の人を直撃した。 Web|ayaha-yaguchi.amebaownd.com Instagram|@ayaha614
credit text:矢口あやは photo:やまひらく