新潟のつかいかた

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栄養たっぷりで滋味深い〈あがの姫牛〉 Posted | 2021/11/12

ご当地の食材をお取り寄せして調理し、おうちにいながら現地を訪れたような最高の旅気分を味わいませんか? 今回は、新潟が誇る〈あがの姫牛〉のおいしいヒミツと、名店シェフが提案する贅沢レシピをご紹介します。

新潟で愛される“箱入り娘”〈あがの姫牛〉って?

新潟といえば、お肉の好きな人にとってはやっぱり〈にいがた和牛〉でしょうか。でも、実は今、新潟で新しい国産ブランド牛が誕生して話題になっているのです。

その産地というのが、新潟県阿賀野(あがの)市。雄大な五頭山や五頭温泉郷などのあるまちで、観光地としてはもちろん、なんと白鳥たちにも人気のエリア。今シーズンも美しい「瓢湖(ひょうこ)」にはぞくぞくと白鳥が訪れているそうですよ。

そんな自然の豊かな阿賀野で、2016年に誕生したのが〈あがの姫牛〉。脂のサシ入りが多い和牛が多いなかで、赤身肉の味の良さで瞬く間に全国区になった国産ブランド牛です。

皿に盛られた〈あがの姫牛〉のスライス肉

手がけるのは、食の匠集団〈あがの衆〉。阿賀野を盛り上げようと立ち上がった地元の企業4社が参画しています。まず、〈スワンレイクビール〉を製造する〈天朝閣グループ〉から出たビール粕を、食品開発の〈バイオテックジャパン〉が乳酸菌とかけあわせて良質な飼料を製造。畜産業を営む〈臼井農畜産〉が牛を飼育し、食肉販売店の〈佐藤食肉〉が販売とプロデュースを担当しているそうです。

〈あがの姫牛〉の公式サイトには、「食の匠が本当につくりたかった、おいしい牛肉」「飼育環境やエサなどにこだわり、地元でたいせつに育てあげた、箱入り娘」とつづられています。その気になる味わいを、プロフェッショナルに聞いてみました。

老舗旅館〈酒の宿 玉城屋〉の栗山シェフも太鼓判!

「滋味深くておいしいですよ! 一般的には食肉牛といえばオスが主流なのですが、あがの姫牛の場合は“姫牛”というだけあってメス限定。通常、メスは乳牛や産経牛として活躍するので、食べるのは珍しいこと。希少なメスのお肉をいただいていることになりますね。宿のお料理でも必ず使っています」

そう教えてくれたのは、『ミシュランガイド新潟2020』で一つ星として掲載された〈酒の宿 玉城屋〉で料理長を務める栗山昭(あきら)シェフです。

〈酒の宿 玉城屋〉料理長、栗山昭シェフ

もとは東京都出身で、フレンチの道に進んだ栗山シェフ。東京の有名店での修業を経て、『ミシュランガイド東京』で2021年現在8年連続で二つ星を獲得しているレストラン〈リューズ〉の飯塚隆太シェフに師事し、飯塚シェフが新潟県十日町市の出身だったご縁から、2017年に〈酒の宿 玉城屋〉料理長に就任。現在は主に宿のディナーコースにて腕を振るっています。

〈酒の宿 玉城屋〉の入口
日本三大薬湯として有名な松之山温泉郷にある旅館〈酒の宿 玉城屋〉。新潟ならではの里山フレンチとかけ流しの温泉が自慢。
玉城屋のダイニングルーム

「自然豊かな新潟は珍しい食材が豊富。遠方からのお客さまは、きっと知らない食材がたくさんあるはず。『何がなんだかわからない……』というのではなく、『これはこんな食材で、こんな味なんだ!』という新しい出合い発見を楽しんでいただけるように、調理や演出を心がけています」(栗山さん)

旬の食材の素材感を大切にする栗山さんの調理技法は、師である飯塚隆太さんゆずり。宿では、里山ならではの保存食や新潟の地野菜などをいかしたフランス料理と、日本酒やワインとのペアリングなどを楽しめる料理を提供しています。

夜のフレンチフルコースのメイン料理
栗山さんが手がける夜のフレンチのフルコースのメイン。予約をすれば、日帰りでもいただける。

Information

【酒の宿 玉城屋】
address:新潟県十日町市松之山湯本13
tel:025-596-2057
web:酒の宿 玉城屋 公式サイト

栗山シェフもおすすめ!〈あがの姫牛〉レシピ

「〈あがの姫牛〉はやわらかくて、バランスよくサシの入った赤身が特徴の肉質です。サシが多いと脂がしみだしてドロッとしがちなのですが、赤身肉なら煮込んでも軽やかで、なおかつ奥深い味わいになるんです」(栗山さん)

そう話す栗山さんが、〈あがの姫牛〉を用いたレシピとして編み出したのが「あがの姫牛のビール煮込み」! こちらは、新潟のスゴ腕シェフたちのレシピ動画を発信しているメディア『新潟ウチごはんプレミアム』に掲載されています。

「ビール煮込みは『カルボナード』といって、フランスではおなじみの郷土料理です。現地ではパンと合わせて食べることが多いのですが、今回は日本ということでバターライスを添えてみました。基本的には、材料を刻んで煮るだけ。お好みのものも入れて、自由に楽しんでくださいね!」(栗山さん)

カレーやハヤシライスにも似ているけれど、ビールのコクが加わって、ひと味違う風味が楽しめるといいます。そういえば〈あがの姫牛〉もビール粕で育てられています。ビール粕は赤身の旨みを引き出すとされていて、おいしさの秘密なんだとか。

新潟の誇る新しい牛肉を、華やかなフランスの風が包み込む栄養満点のこのレシピ。一度つくれば家族みんながやみつきになって、おうちの“名物”になっちゃうかも。

Recipe

あがの姫牛のビール煮込み

【材料】 2人分
・ベーコンスライス …… 50グラム
・あがの姫牛コマ …… 300グラム
・塩 …… 3グラム(ひとつまみ)
・サラダ油 …… 適量
・バター …… 15グラム
・にんにく …… 1かけ
・玉ねぎ …… 1個
・砂糖 …… 10グラム
・赤ワインビネガー …… 25グラム
・トマトペースト …… 5グラム
・薄力粉 …… 10グラム
・ビール …… 200ミリリットル
・チキンブイヨン …… 200グラム
【A】タイム …… 適量
【A】ローリエ …… 1枚
【A】黒こしょう …… 1グラム
【A】ジュニパーベリー …… 1グラム
【B】塩 …… 適量
【B】バター …… 5グラム
<バターライス>
・米 …… 2合
・玉ねぎ …… 40グラム
・にんじん …… 50グラム
・バター …… 60グラム
・塩 …… 5グラム
・チキンブイヨン …… 400グラム
【作り方】
1 にんにくは半割りにし、芽を取る。
2 玉ねぎは繊維を断つようにスライスし、ベーコンは2センチ幅に切る。
3 牛肉はあらかじめ塩をしておく。
4 フライパンにサラダ油を熱し、ベーコンを焼き色がつくまでこんがり焼く。
5 ベーコンを取り出し、その油で牛肉をこんがり焼き色がつくまで焼く。
6 別鍋にバターを熱し、にんにくを色づくまで炒める。
7 玉ねぎを加え、強火で薄茶色になるまで炒める。
8 砂糖を加え炒め、焦がして色づける。
9 ツヤが出てきたら赤ワインビネガーを加え、鍋にこびりついた旨みを溶かす。
10 牛肉、ベーコンを加え混ぜる。
11 トマトペーストを加え軽く炒め、薄力粉をふるい入れる。
12 粉気がなくなるまでしっかり炒め、ビールを加える。
13 2〜3分煮たら、チキンブイヨンと【A】(ブーケガルニ)を加える。
14 15分ほど煮たら、仕上げに【B】を入れて味を調整する。
15 フライパンに、バターで玉ねぎ、にんじんを炒め、洗米済みの米を加えてさらに炒める。
16 15を炊飯器に移し、チキンブイヨンを加えて、炊飯する。
17 器にビール煮込みとバターライスを盛り付けて完成。

矢口あやはさん

Profile 矢口あやは

大阪生まれ、東京在住。ライター・編集・イラストレーター。雑誌やWEB、書籍などの制作を中心に活動。料理が大の苦手。文化祭でゴマ団子を調理した際には破裂した団子が天井で跳ね返り、意中の人を直撃した。 Web|ayaha-yaguchi.amebaownd.com Instagram|@ayaha614

credit text:矢口あやは photo:やまひらく

あがの姫牛のビール煮込み

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