新潟のつかいかた

喉越しツルツル、潮の香りが豊かな「へぎそば」

喉越しツルツル、
潮の香りが豊かな「へぎそば」 Posted | 2021/09/03

ご当地の食材をお取り寄せして調理し、おうちにいながら現地を訪れたような最高の旅気分を味わう連載企画「旅する食卓」。今回、取り上げるのは新潟名物「へぎそば」です。レシピをご教示いただいたのは『ミシュランガイド新潟2020特別版』で一つ星として掲載された日本料理店〈日本料理 魚幸(うおゆき)〉で料理長を務める渡辺 雄太シェフ。名店シェフの手にかかると、へぎそばは一体どんな料理に!?

織物カルチャーと蕎麦のおいしいコラボ

新潟で広く愛されている「へぎそば」。都心にも専門店があって、見かけたり、食べたりしている方もきっと多いはず。とってもおもしろい蕎麦なのですが、まずはこの「へぎ」という言葉のハテナを解消しましょう。

「へぎ」とは“剥ぎ(はぎ)”がなまったもので、木を剥いでつくられた四角形の器の名前のこと。ここに盛りつけられるから「へぎそば」といわれるのだそう。ひと口ずつを分けて盛られる様子はとても上品で風流です。

発祥は、新潟県魚沼地域といわれます。通常はつなぎに小麦粉を使うところを、海藻である「布海苔(ふのり)」を使っているところが大きな特徴なんだとか。

へぎそば
(写真提供:新潟直送計画)

魚沼といえば、米どころとしておなじみですが、実は蕎麦もたくさん栽培されてきた地域です。一方、耳慣れない布海苔とは、織物の糸をピンとはるための糊などに使われてきたもの。特に新潟は「小千谷縮(おぢやちぢみ)」や「越後上布」を輩出するなど、昔から織物業が盛んだったこともあって、魚沼の暮らしの中にも自然と布海苔がありました。

そう、蕎麦と布海苔が結ばれて、ハレの日のスペシャルなごちそうとして誕生したのが「へぎそば」なのです。昔、この辺りではワサビが手に入りにくかったことから、へぎそばはカラシでいただくのが定番だといいます。

老舗〈日本料理 魚幸〉の渡辺シェフも愛する郷土の味

〈日本料理 魚幸〉の料理長を務める渡辺雄太さん

「おいしさの秘密はやっぱり布海苔というアイデア。布海苔のおかげで、従来の蕎麦とはひと味ちがう、ツルツルとした珍しい食感や強いコシが生まれているんですよ」

そう教えてくれたのは、『ミシュランガイド新潟2020特別版』で一つ星として掲載された日本料理店〈日本料理 魚幸(うおゆき)〉で料理長を務める渡辺雄太さんです。新潟県燕市に生まれ、料理人の父の背を見て育ったという渡辺さん。京都や新潟での修業を経て、地元の燕市で2014年に〈日本料理 魚幸〉をオープンしました。

〈日本料理 魚幸〉の暖簾
店主自慢の暖簾。(写真提供:日本料理 魚幸)
〈日本料理 魚幸〉の店内
非日常を演出するモダンな店内。(写真提供:日本料理 魚幸)

コンセプトは「新潟や燕市の食材を用いた京風の日本料理、懐石料理が食べられるお店」だといいます。

「特にこだわっているのが、すべての基盤になるだしです。京都で修業したことを生かして、素材には妥協せずにイリコやかつお節を使って、煮炊きものに使うだし、お吸い物に使うだしなど、それぞれ使い分けて丁寧につくっています。地元の皆さんに、本格的な日本料理のすばらしさを伝えていけたらうれしいですね」(渡辺さん)

昆布を煮出す
丁寧に煮出すこだわりのだし。(写真提供:日本料理 魚幸)

Information

【日本料理 魚幸】
address:新潟県燕市米納津3216
tel:0256-93-2657
営業時間:11:30〜14:30(13:30L.O.)、17:30~21:30(20:00L.O.)
定休日:火曜
web:Facebook

渡辺シェフのおすすめへぎそばレシピ

そんな渡辺さんも、小さい頃からへぎそばを食べて育ったと言います。

「ぼくの家でも、よく母がつくってくれました。普段から食べますよ。ほのかにやさしい磯の香りがして、喉越しもいいところが好きです。味にはそれほどクセがないので、お年寄りから子どもまでみんなに愛されていますね」(渡辺さん)

地元新潟では、温冷どちらの食べ方もポピュラー。でも、夏場はやっぱりキリッと冷えているほうがへぎそばの良さを味わいやすい、と渡辺さん。氷で冷やして、ちゅるちゅるっと一気にすするのがたまらないんだそう。

「ただ、意外かもしれないのですが、実は“焼きそば”にするのもおいしいのです。よく中華麺を使った焼きそばをまかないでつくるのですが、試しにへぎそばでつくってみたら想像以上に美味な一品になりました」(渡辺さん)

そのユニークなレシピを紹介しているのが、新潟のスゴ腕シェフたちのレシピ動画を発信しているメディア『新潟ウチごはんプレミアム』。ここに、渡辺さんが編み出したへぎそばの「焼きそば」レシピが掲載されています。

おうちでもカンタンにできるようにと、手順はたっぷりのお湯で茹でた「へぎそば」を、炒めた具材と合わせるだけのシンプルスタイル。

「ポイントは、芯が少し残る程度に茹でること。3〜4分で仕上がる麺なら、1分30秒〜2分くらいを目安にするといいですよ。へぎそばは麺にぬめりがあるので、流水でしっかりとすすいでくださいね。茹でたあとは伸びやすいので、ここからはスピード勝負。フライパンで具材を炒めて、茹でたそばを合わせれば、あっという間にできあがりです」(渡辺さん)

お料理に慣れた人なら、15分もあれば完成できそうです。中華麺のソース焼きそばとはひと味ちがう、和の繊細な風味と上品な香りを楽しめます。

今回は、豚肉ともやし、長ネギが具材として飛び込みましたが、冷蔵庫に余ったほかの食材もなんなく受け入れてくれそうな懐深いレシピです。ぜひご自宅でお試しを。

Recipe

へぎそばの焼きそば

【材料】 2人分
・へぎそば(乾麺) …… 150グラム
・豚バラ肉 …… 65グラム
・もやし …… 75グラム
・長ネギ …… 30グラム
・顆粒だし …… 小さじ1
・醤油 …… 大さじ2
・サラダ油 …… 大さじ2
・塩 …… 2つまみ
・胡椒 …… 少々
・酒 …… 50ミリリットル
・刻み海苔 …… 適量
【作り方】
1 へぎそばを湯がき、流水でよく洗い、水分を切っておく。
2 フライパンで豚バラ肉、もやし、長ネギの順に塩と胡椒で炒める。
3 具材を炒めたらへぎそば、酒、顆粒だし、醤油を入れ、炒める。
4 器に盛り、刻み海苔をかけて完成。

矢口あやはさん

Profile 矢口あやは

大阪生まれ、東京在住。ライター・編集・イラストレーター。雑誌やWEB、書籍などの制作を中心に活動。料理が大の苦手。文化祭でゴマ団子を調理した際には破裂した団子が天井で跳ね返り、意中の人を直撃した。 Web:ayaha-yaguchi.amebaownd.com Instagram:@ayaha614

credit text:矢口あやは photo:やまひらく

へぎそばの焼きそば

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