食通たちがそろって称える“美食大国”新潟。そんな新潟から、『ミシュランガイド新潟2020特別版』掲載店をはじめとしたスゴ腕シェフ達の贅沢レシピがネットで続々と発信されているってご存じでしたか? 新潟食材を取り寄せて、シェフのレシピを自宅で再現してみましょう。挑むのは、これまで周囲を震撼させてきた料理ベタ女子。新潟からはるばるやってきた「あがの姫牛」の行く末やいかに!?
控えおろう! 牛の“姫”のおな〜り〜!
新潟といえば、サシの入ったとろとろの〈にいがた和牛〉! かと思いきや、赤身が多いのに和牛に負けないくらいやわらかく、とろけるような肉質で人気の牛さんがいるそうなんです。
その名も〈あがの姫牛〉。新潟県阿賀野(あがの)市が誇る国産ブランド牛です。普通は食肉といえばオスですが、姫牛はみんなメス。阿賀野で活躍する食の匠集団〈あがの衆〉が大切に育てる“箱入り娘”だといいます。
その販売とプロデュースを担う〈佐藤食肉〉の『新潟直送計画』ページを覗いてみると、ありました、〈あがの姫牛〉。さっそく注文して、お越しになったのがこちら!
〈あがの姫牛〉の「切り落とし」。ずっしりと重みのある、紅色の美しいお姫さまです。
ショップには、ほかにも良質な赤身をたっぷりと味わえる贅沢な「ロースステーキ」や霜降りの肩ロースの「しゃぶしゃぶ用」など6種類がありました。
なかでも、この「切り落とし」は「いつもの料理に〈あがの姫牛〉を使うだけで、上質なお肉の旨みがとけ出してワンランク上の味に!」という商品説明。これはやんごとない。期待が高まります。
一流シェフのレシピ動画を視聴
ここで、恒例の“秘密兵器”投入の儀。『ミシュランガイド新潟2020』で一つ星として掲載された老舗旅館〈酒の宿 玉城屋〉の料理長・栗山昭(あきら)さんのレシピ動画を視聴します。
フレンチのシェフである栗山さんが、〈あがの姫牛〉をフランスでおなじみの郷土料理である「ビール煮込み」にアレンジしてくれました。
あれっ、多い、多い、材料が多い! と一瞬青ざめましたが、よく見ればレシピは「材料を切る」「鍋で煮込む」「バターライスを炊く」の3ステップ。ちょっとしたカレー感覚でつくれそう。というわけで、元気復活。いざ、レッツ・クッキング♪
あがの姫牛の「ビール煮込み」に挑戦!
【材料】(2人分)
・ベーコンスライス …… 50グラム
・あがの姫牛コマ …… 300グラム
・塩 …… 3グラム(ひとつまみ)
・サラダ油 …… 適量
・バター …… 15グラム
・にんにく …… 1かけ
・玉ねぎ …… 1個
・砂糖 …… 10グラム
・赤ワインビネガー …… 25グラム
・トマトペースト …… 5グラム
・薄力粉 …… 10グラム
・ビール …… 200ミリリットル
・チキンブイヨン …… 200グラム
【A】タイム …… 適量
【A】ローリエ …… 1枚
【A】黒こしょう …… 1グラム
【A】ジュニパーベリー …… 1グラム
【B】塩 …… 適量
【B】バター …… 5グラム
<バターライス>
・米 …… 2合
・玉ねぎ …… 40グラム
・にんじん …… 50グラム
・バター …… 60グラム
・塩 …… 5グラム
・チキンブイヨン …… 400グラム
まずは、材料の下準備。にんにくは半割りにし芽を取り、玉ねぎは繊維を断つようにスライス、ベーコンは2センチ幅に切ります。牛肉にはあらかじめ塩をパラパラ。
フライパンにサラダ油をひき、ベーコンをこんがり焼いたら、同じ油で牛肉にもしっかりと焼き色をつけます。栗山シェフ曰く「ここがポイント!」。
「香ばしいくらいに焼いておくことで、香りや味に深みが出るんです。肉は真っ黒にならないかぎり苦みは出ないので、おいしそうな焦げ色をしっかりつけてくださいね」(栗山シェフ)
キッチンにはジュウジュウと焼けるお肉のたまらない香り! 鍋にバターを溶かし、黄金に泡立つオイルでにんにくを泳がせます。
その鍋に玉ねぎ、さらに砂糖を加えて炒めます。お肉と同様、ここでしっかり焦がすのがポイント。カラメルの香りをつけながら、玉ねぎ全体が茶色くなるまで炒めます。
「弱火で、フタをしながら10分ほど加熱しましょう。フタをすることで、水分が全体にいきわたって焦げすぎるのを防げます。もし鍋の壁が焦げついてしまった場合は、水を足して剥がせば大丈夫です」(栗山シェフ)
食材にツヤが出てきたら、赤ワインビネガーを入れ、牛肉とベーコンを加えて混ぜます。ささ、姫、どうぞ玉ねぎ座布団の上でおくつろぎください。
続いて、トマトペーストを加え軽く炒め、薄力粉をふるい入れましょう。粉気がなくなるまでしっかり炒め、ビールを加えます。
「薄力粉は、つなぎの役割を果たすもの。いわゆるルーですね。入れる順番は、薄力粉、それからビール。先に薄力粉を炒めて粉っぽさを飛ばしてからビールを入れるのがコツです」(栗山シェフ)
ビールのアルコールは2〜3分で飛ぶといい、ここでしっかり飛ばします。キッチンにビールの濃厚な香りが漂って、もうこれだけで酔っ払っちゃいそう! 姫、大丈夫ですか? と覗いてみたら、鍋内はゴキゲンなムード。すっかり陽気です。
続いて、チキンブイヨン、ブーケガルニを加えて、さらに15分ほど煮込みます。
最後に、適量の塩で味を整え、お好みで“追いバター”をどうぞ!
姫を守る御庭番衆(バターライス)をつくろう
刻一刻とおいしくなっていくスープのお供に、バターライスの御庭番衆をつくります。おまえたち、陰ながらしっかりと姫御をお守りするんだよ。
フライパンにバターを溶かし、みじんぎりにした玉ねぎ、にんじん、さらに洗った生米を加えて炒めます。え……生米を? ここで? 炒め続ける? と思ったら、「あとは拙者に任されよ!」と飛び出してきたのがウチの家臣、そう、炊飯器です。よくぞ駆けつけた。えらいぞ。
フライパンで炒めた具を忠義の炊飯器に詰め込んで、チキンブイヨンと塩を加えてスイッチオン。これでお料理は完了。のほほほほ。ラクチンです。褒美をとらせたい。
あとは、炊き上がったライス衆の上に、スープになった姫をふんわりと盛り付ければ完成です!
新潟の姫牛、のどかなフランスの田舎町へ
カレーほどの粘度はなく、さらりとしたスープカレーのようなひと皿になりました。スプーンですくって、ひと口。味わいもサラサラかと思ったら、すばらしい濃厚なコク! ビールがもたらす深い陰影。ほろほろとやわらかい姫牛のお肉。香ばしくて、金色に輝く小麦の穂がどこまでも揺れるのどかなフランスの田舎が見えるかのようです。
噛めば噛むほど、じわ〜っと広がる肉の旨み。ずっと噛み続けていたいお肉です。姫……おいしゅうございますぞ。フランスのうるわしい田園風景に、よく似合っておいでですぞ。ライス衆も良い働き。褒めてつかわそう。
食べ進むにつれて、体もぽかぽか。きっとシンプルにパンを添えてもおいしいけれど、これまたバターライスの満足感がたまりません。スープとライス、両方から立ちのぼるバターの湯気を思う存分浴びて楽しむ“バター浴”の時間です。脳内はもう、幸せホルモンでたぷたぷ。
味といい、熱といい、幸福感といい、これからどんどん気温が下がるこの時期、重宝するひと皿になりそうですよ。ごちそうさまでした!
Recipe
【材料】 2人分
・ベーコンスライス …… 50グラム
・あがの姫牛コマ …… 300グラム
・塩 …… 3グラム(ひとつまみ)
・サラダ油 …… 適量
・バター …… 15グラム
・にんにく …… 1かけ
・玉ねぎ …… 1個
・砂糖 …… 10グラム
・赤ワインビネガー …… 25グラム
・トマトペースト …… 5グラム
・薄力粉 …… 10グラム
・ビール …… 200ミリリットル
・チキンブイヨン …… 200グラム
【A】タイム …… 適量
【A】ローリエ …… 1枚
【A】黒こしょう …… 1グラム
【A】ジュニパーベリー …… 1グラム
【B】塩 …… 適量
【B】バター …… 5グラム
<バターライス>
・米 …… 2合
・玉ねぎ …… 40グラム
・にんじん …… 50グラム
・バター …… 60グラム
・塩 …… 5グラム
・チキンブイヨン …… 400グラム
【作り方】
1 にんにくは半割りにし、芽を取る。
2 玉ねぎは繊維を断つようにスライスし、ベーコンは2センチ幅に切る。
3 牛肉はあらかじめ塩をしておく。
4 フライパンにサラダ油を熱し、ベーコンを焼き色がつくまでこんがり焼く。
5 ベーコンを取り出し、その油で牛肉をこんがり焼き色がつくまで焼く。
6 別鍋にバターを熱し、にんにくを色づくまで炒める。
7 玉ねぎを加え、強火で薄茶色になるまで炒める。
8 砂糖を加え炒め、焦がして色づける。
9 ツヤが出てきたら赤ワインビネガーを加え、鍋にこびりついた旨みを溶かす。
10 牛肉、ベーコンを加え混ぜる。
11 トマトペーストを加え軽く炒め、薄力粉をふるい入れる。
12 粉気がなくなるまでしっかり炒め、ビールを加える。
13 2〜3分煮たら、チキンブイヨンと【A】(ブーケガルニ)を加える。
14 15分ほど煮たら、仕上げに【B】を入れて味を調整する。
15 フライパンに、バターで玉ねぎ、にんじんを炒め、洗米済みの米を加えてさらに炒める。
16 15を炊飯器に移し、チキンブイヨンを加えて、炊飯する。
17 器にビール煮込みとバターライスを盛り付けて完成。
Profile 矢口あやは
大阪生まれ、東京在住。ライター・編集・イラストレーター。雑誌やWEB、書籍などの制作を中心に活動。料理が大の苦手。文化祭でゴマ団子を調理した際には破裂した団子が天井で跳ね返り、意中の人を直撃した。 Web|ayaha-yaguchi.amebaownd.com Instagram|@ayaha614
credit text:矢口あやは photo:やまひらく