温泉の楽しみ方は人それぞれですが、全国数多の名湯を見てきている“温泉の目利き”がこだわるポイントやおすすめも知っておきたいところ。
新潟では、30ある市町村のすべてで温泉が湧出しており、宿泊施設のある温泉地数は144件。全国で第3位と、隠れた温泉大国なのです。
今回は、新潟県長岡市出身でにいがた観光特使を務める山崎まゆみさん、温泉ビューティ研究家でトラベルジャーナリストの石井宏子さん、フリーアナウンサーで美容・温泉ライターとして活躍する植竹深雪さんの、3名の温泉のスペシャリストに新潟の温泉地で食べた忘れられないひと品をご紹介いただきました。
山崎まゆみさん
栃尾又温泉の〈ラジウム納豆〉
おすすめの食べ方はネギとポン酢。大豆の旨みが酸味と少々の辛みで引き立ちます。
豪華な懐石料理をお腹いっぱいいただくのもいいけれど、自分の体ととことん向き合う温泉旅であれば、滋味深い食事で胃腸も整えたい。そんな気持ちに応えてくれるひと品です。
魚沼市の栃尾又温泉は、数軒の旅館が立ち並ぶ小さな温泉地です。全国でも有数のラジウム泉で、古来より療養目的で訪れる人が後を絶ちません。35度くらいのぬる湯に1~2時間ほど浸かる栃尾又温泉の伝統的な入浴法は、肉体的な疲労やストレスを感じやすい方にもぜひ試していただきたい入浴法。山崎さんは、「(温泉と身体の温度が近いので)お湯と身体が一体となって溶け出す感じ」とその心地よさを表現します。「近くのマッサージより、遠くの温泉」(自在館HPより)ですね。自在館は湯治宿ですが食事がついており、湯治初心者にもやさしいお宿です。
〈栃尾又ラジウム温泉 自在館〉の詳細
にいがた観光ナビ:栃尾又ラジウム温泉 自在館|https://niigata-kankou.or.jp/reserve/43501
Information
Profile 山崎まゆみさん
新潟県長岡市生まれ。温泉エッセイスト・跡見学園女子大学“観光温泉学”講師。VISIT JAPAN大使(観光庁任命)として日本の温泉文化を国内外に広く発信。国の観光政策の重要な会議に参画し、また「観光庁長官表彰」審査員や「新潟の魅力を考える懇談会」委員、「新潟プレミアサロン」のコーディネーターも務める。著作に『行ってみようよ!親孝行温泉』『女将は見た 温泉旅館の表と裏』ほか。
石井宏子さん
出湯(でゆ)温泉〈出湯温泉パン工房〉の〈五頭の宝石箱〉
「〈出湯温泉パン工房〉の〈五頭の宝石箱〉というパンが、とてつもなくおいしいのです。温泉水で仕込んだくるみと雑穀が入ったパン生地に、メープルシロップに漬け込んだレーズンといちじくがたっぷり。さらに、甘酸っぱいクランベリーとかぼちゃの種やナッツがアクセントになっていて、チーズやワインと一緒に楽しみたい、大人のご褒美パンです。
朝10時頃焼き上がり、すぐに売り切れてしまうので、宿をチェックアウトしたらすぐにパンを入手して帰ります。ワインやドライフルーツが好きな方なら〈五頭の宝石箱〉、みんなで食べるおやつなら〈五頭あんぱん〉(680円・税別)がおすすめです」
まさにぎっしりと詰まった宝石箱! おつまみにもなるパンということで、どんなお酒に合わせるか悩ましいですね……。
パンの仕込み水には、共同浴場と同じ泉質の弱アルカリ性の温泉水を使用。きめが細かく、ふっくらとしたやわらかい仕上がりになるのだそう。
阿賀野市の出湯温泉(五頭温泉郷)は、弘法大師(空海)が、錫杖を地面についたら温泉が湧きあがったという伝説があり、越後最古の温泉。寺の境内に今も温泉が湧いています。ぬるめの温泉にゆっくり浸かると心身が癒されるラジウム泉です。
出湯温泉(五頭温泉郷)の詳細
にいがた観光ナビ:出湯温泉(五頭温泉郷)|https://niigata-kankou.or.jp/spot/11589
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Profile 石井宏子さん
温泉ビューティ®研究家、旅行作家。日本・世界の温泉や大自然を旅して写真撮影・執筆をする旅行作家。温泉や食、自然環境を通じて美しくなるビューティツーリズムを研究。日本温泉気候物理医学会会員、日本温泉科学会会員、温泉入浴指導員。著書『全国ごほうびひとり旅温泉手帖』『感動の温泉宿100』『温泉ビューティ』ほか。
植竹深雪さん
越後湯沢温泉〈温泉珈琲 水屋〉の〈湯澤るうろ〉
「越後湯沢駅からすぐの〈HATAGO井仙〉に宿泊し、ほかの越後湯沢温泉をはしご湯して楽しみました。その際にいただいた〈HATAGO井仙〉の直営カフェ〈温泉珈琲 水屋〉の〈湯澤るうろ〉をおすすめします。
パティシエがつくる日本一おいしいロールケーキといわれたことがあるほどで、純白の雪をモチーフに仕上げられているケーキです。
まるでスフレチーズケーキのようにふわふわしたやわらかい食感が真綿のよう。サンドされている絶秒な甘さの生クリームとのバランスがたまらない味わいでした。
ここではケーキとともに、人気No.1 の〈水出し温泉珈琲〉と合わせるのがおすすめ。地元神立地区の温泉水を使用していて、8時間もかけて抽出するというこだわり。風味そして香りが全然違いました」
コシヒカリの米粉、地元産の牛乳や卵などを使用している〈湯澤るうろ〉は口当たりがやさしく、淡雪のようにしゅわっとほどける口溶けの良さも魅力の一品です。お店は越後湯沢駅から徒歩1分ということで、旅の始まりに立ち寄れば、これから始まる温泉旅への期待が高まること間違いなしです。
越後湯沢温泉は、川端康成の小説『雪国』の舞台として冒頭の一節とともに知られている温泉地。徒歩でも湯巡りをすることができるコンパクトさが魅力です。東京から越後湯沢駅まで上越新幹線で1時間強、スキー場も多くあるので冬は多くのスキー客で賑わいます。泉質は主に単純温泉で、やさしい湯触りの温泉が多いのが特徴です。
〈HATAGO井仙〉の詳細
にいがた観光ナビ:HATAGO井仙|https://niigata-kankou.or.jp/reserve/30947
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Profile 植竹深雪さん
温泉ジャーナリスト。国内外2800以上の温泉に入り1200泊以上宿泊。現地に何度も足を運び、温泉全般、旅館、サービス、グルメなどにおいて温泉施設、旅館経営者や女将さんなどへ綿密な取材のうえ、各メディアに発信。人気情報番組から報道番組コメンテーター、雑誌連載での利用者目線のわかりやすい解説は、各業界からの信頼も厚い。温泉に関する資格多数取得。著書『からだがよろこぶ!ぬる湯温泉ナビ』。
「現代湯治を提唱する宿、栃尾又温泉〈自在館〉の朝食でいただいた〈ラジウム納豆〉がおすすめです。魚沼市内の老舗納豆店〈大力納豆〉に温泉水を持ち込んで約2日間“湯治”。もちろん原材料にもこだわり、新潟県産大豆でつくっているそうです。納豆というより、大粒の大豆をいただくような上質な逸品です」