佐渡の温泉？　と思うかもしれませんが、佐渡には、島特有のゆったりとした時間が流れる“島時間”を堪能しながら楽しめる温泉が数多くあります。

泉質も多岐にわたり、ロケーションもバラエティ豊かなので、体でも目でも楽しめるすばらしい温泉が点在しています。今回は、新潟県長岡市出身で、温泉エッセイストの山崎まゆみさんに佐渡のおすすめの温泉をピックアップしていただきました。

佐渡の温泉の特徴

佐渡の温泉は、泉質の豊富さが特徴です。塩化物泉、単純温泉、炭酸水素塩泉、硫酸塩泉といった多様な泉質を楽しむことができます。特に、塩化物泉は、体が湯冷めしにくく、保湿効果があり、切り傷の治療にも効果的とされています。

また、佐渡の冬の温泉は、大自然の美しさを最大限に感じながらの入浴ができるのも魅力です。雪景色をした山脈や海岸線の風景とともに、“島時間”を過ごしながら楽しむ温泉は、まさに至福のときといえるでしょう！　さらに、地元の新鮮な魚介類や地酒を堪能できるのは、冬の佐渡ならではの贅沢です。

Profile　山崎まゆみさん

新潟県長岡市生まれ。温泉エッセイスト・跡見学園女子大学“観光温泉学”講師。VISIT JAPAN大使（観光庁任命）として日本の温泉文化を国内外に広く発信。国の観光政策の重要な会議に参画し、また「観光庁長官表彰」審査員や「新潟の魅力を考える懇談会」委員、「新潟プレミアサロン」のコーディネーターも務める。著作に『女将は見た 温泉旅館の表と裏』『温泉ごはん 旅はおいしい！』ほか。

新潟・佐渡の温泉①【相川長手岬温泉】
佐渡の自然と歴史を感じる温泉地

相川長手岬（ながてみさき）温泉は、佐渡島の西岸、美しい景勝地・七浦海岸にほど近い場所に位置しています。温泉地としての魅力はもちろん、雄大な日本海が眼下に広がり、その水平線に夕陽が沈む光景は訪れる者の心をとらえます。また、「佐渡島（さど）の金山」のうち「相川鶴子金銀山」に近く、観光と湯浴みを両立させることができるのは大きな魅力と言えるでしょう。

佐渡の文化や歴史を感じたあとに、夫婦岩を背景にした露天風呂での湯浴みは、まさに至福の時間。宿泊施設は、〈SADO RESORT HOTEL AZUMA〉をはじめ、さまざまな宿泊施設が点在しています。

〈SADO RESORT HOTEL AZUMA〉は、7000坪の公園や海浜遊歩道を有し、客室からは空と海のコントラストや夕陽の美しさを楽しむことができます。また、ホテルの前身が料亭〈阿づ満（あづま）〉であったことから、海の幸を工夫を凝らした料理で味わうことができます。

このように、相川長手岬温泉は自然の美しさと佐渡の歴史や文化を五感で感じることができる温泉地です。

新潟・佐渡の温泉②【佐和田温泉】
佐渡の隠れた温泉「モール泉」

佐和田温泉は、佐渡島の西岸に位置する真野湾の潮騒が聞こえる歴史ある温泉地です。昭和45年に温泉堀削を行ったときに、弘法大師のお告げによって黒い湯脈が発見され、湯が地上15メートルも吹き上がったとされています。

佐和田温泉は「モール泉」と呼ばれ、植物起源の有機質を多く含んでおり、肌に触れると滑らかな感触が楽しめます。色は独特の飴色〜コーラ色で、単純泉や塩化物泉としての効能が期待できるとされています。

〈旅館入海（いりうみ）〉は、真野湾の美しい海辺に建ち、佐和田温泉に入れる唯一の宿泊施設です。客室からは砂浜が広がるオーシャンビューを楽しむことができ、かもめたちとのんびりとした時間を過ごすことができます。

また、佐渡の新鮮な海の幸を提供する宿としても知られており、自然を目の前に、佐渡の新鮮な食事を楽しむことができる隠れた温泉地です。

新潟・佐渡の温泉③【佐渡八幡温泉】
自然と温泉、そして皇室御用達ホテル

佐渡八幡（やはた）温泉は、佐渡の中心エリアに位置しているので観光に便利なロケーションです。佐渡随一の湧出量を誇り、地下1000メートルから豊富な湯を噴出しています。また、48.5度の弱食塩泉はリウマチや慢性湿疹などに効果があるとされ、多くの人々に愛されています。

佐渡八幡温泉に入浴できる宿泊施設のなかでも〈国際観光ホテル 八幡館（やはたかん）〉は、皇室ゆかりの名宿として知られ、昭和天皇をはじめ皇室関係者や政府要人、多くの著名人も訪れています。上階の客室からは、真野湾と大佐渡・小佐渡の両山脈を一望することができ、松林に囲まれた敷地内は、静かで落ち着いた雰囲気が広がっています。

ホテルの敷地内には佐渡博物館も併設されており、文化や歴史に触れることもできます。自然と温泉、そして歴史あるホテルが訪れる多くの人に特別な時間を提供してくれる場所といえるでしょう。

新潟・佐渡の温泉④【椎崎温泉】
トキの飛来伝説を持つレイクビュー温泉

椎崎温泉は歴史ある温泉地で、トキが傷を癒すために飛来したという伝説があります。泉質は、ナトリウム塩化物泉（弱アルカリ性低張性高温泉）で、伝説のとおり、神経痛や筋肉痛、切り傷、やけど、慢性皮膚病、慢性婦人病などに効果があるとされています。

また、佐渡の玄関口・両津港から車でわずか５分とアクセスが良好なのもうれしいところ。周辺の宿泊施設からは美しい加茂湖を望むことができ、四季折々の表情を見せる加茂湖周辺にトキが飛来するのを見ることができるかもしれません。

なかでも、〈ホテルニュー桂〉は、海と湖に囲まれた絶好のロケーションにあります。豊富な湯量の温泉は、本館・別館大浴場に露天風呂が併設され、さらに信楽焼の浴槽の貸切露天風呂は、天井までの大きな窓からの自然光が浴場を照らします。

また、地元両津市場で仕入れた新鮮な魚介や、季節に合わせた地物野菜を使用した料理で、来訪者をもてなしてくれます。

credit　text：山田卓立