温泉の楽しみ方は人それぞれですが、全国数多の名湯を見てきている“温泉の目利き”がこだわるポイントやおすすめも知っておきたいところ。
新潟では、30ある市町村のすべてで温泉が湧出しており、宿泊施設のある温泉地数は144件。全国で第3位と、隠れた温泉大国なのです。
今回は、新潟県長岡市出身でにいがた観光特使を務める山崎まゆみさん、温泉ビューティ研究家でトラベルジャーナリストの石井宏子さん、フリーアナウンサーで美容・温泉ライターとして活躍する植竹深雪さんが「気に入った泉質」をテーマに、新潟の温泉地をピックアップ。温泉の本質とも言える泉質。温泉のスペシャリストによる三者三様のお気に入りをご紹介しましょう。
山崎まゆみさん
貝掛温泉
越後湯沢駅からバスで約25分、関越自動車道湯沢インターから車で約15分。そこから徒歩で橋を渡ると見えてくる一軒家の湯が貝掛温泉です。山のなかにひっそりと佇むさまは、まさに秘湯。今も昔も眼病に悩む人が湯治に訪れます。
Information
Profile 山崎まゆみさん
新潟県長岡市生まれ。温泉エッセイスト・跡見学園女子大学“観光温泉学”講師。VISIT JAPAN大使(観光庁任命)として日本の温泉文化を国内外に広く発信。国の観光政策の重要な会議に参画し、また「観光庁長官表彰」審査員や「新潟の魅力を考える懇談会」委員、「新潟プレミアサロン」のコーディネーターも務める。著作に『行ってみようよ!親孝行温泉』『女将は見た 温泉旅館の表と裏』ほか。
石井宏子さん
妙高赤倉温泉
「おすすめしたいのは妙高赤倉温泉。冬は豪雪。スキーも楽しめます。気軽に泊まれる宿から、ご褒美のクラシックホテルまで揃うのもいいところ。豪快な露天風呂の日帰り温泉〈滝の湯〉(4月から11月上旬の営業)もおすすめです。車で少し移動するとまったく異なる泉質の温泉に出合えるので妙高高原エリアの湯巡りも楽しいですね。
泉質は、カルシウム・マグネシウム・ナトリウム-硫酸塩・炭酸水素塩泉。泉質名には出てこないですが、お湯に含まれる硫黄がほのかに香り、微細な湯の花がふわふわと舞います。ミネラルバランスが絶妙で、ふんわりやわらか、なめらかな感触のさじ加減がたまらなく好き。肌をなめらかに整えて、しっとり潤う、至れり尽くせりの美肌湯ですね」
妙高赤倉温泉での石井さんの過ごし方をうかがうと、春夏なら温泉街の宿に泊まって、温泉巡りを楽しみ、秋冬なら絶景が楽しめる〈赤倉観光ホテル〉へご褒美の旅をし、土日なら、チェックアウトした後に、えちごトキめき鉄道のリゾート列車〈雪月花〉に乗車して、上越の山、田園、海の風景を楽しみながらランチを楽しんで帰るのだとか。妙高赤倉温泉を拠点に、楽しみ方の幅が広がりますね。
〈赤倉観光ホテル〉の詳細
Information
Profile 石井宏子さん
温泉ビューティ®研究家、旅行作家。日本・世界の温泉や大自然を旅して写真撮影・執筆をする旅行作家。温泉や食、自然環境を通じて美しくなるビューティツーリズムを研究。日本温泉気候物理医学会会員、日本温泉科学会会員、温泉入浴指導員。著書『全国ごほうびひとり旅温泉手帖』『感動の温泉宿100』『温泉ビューティ』ほか。
植竹深雪さん
駒の湯温泉
「魚沼市奥只見の湯之谷温泉郷最奥にある駒の湯温泉の〈駒の湯山荘〉をご紹介します。ここは自前で発電した電気のみで運営している湯宿で、電気はランプのみ。テレビはなく、スマホも圏外。Wi-Fiなし。完全にデジタルデトックスもできる秘境の温泉です。
泉質はアルカリ性単純温泉で、つるっとしつつ、すべすべの浴感が心地よい温泉で、湯上がり後は驚くほど肌がサラサラになりました。源泉は32度程で清涼感たっぷり。加温の浴槽と交互浴がたまらなく気持ちよくて、無限ループ。永遠に入っていたいと思うほど湯が極上です。
また、湯量が毎分2000リットルとかなり豊富で、関東甲信越屈指の湯量と言われています。圧倒的な湯の投入量のおかげで湯がとにかく新鮮。その証とも言えるフレッシュなアワアワが全身を包み込みます。体温より低いぬる湯温泉ですが、湯に浸かると体のコリがほぐれるかのようで、とことんリラックスできる癒しの温泉です。副交感神経が優位になり、湯上がり後は泥のように眠ることができるので、不眠でお悩みの方にもおすすめですよ!」
昭和28年開業の〈駒の湯山荘〉。湯之谷温泉郷にはほかに折立温泉、大湯温泉、栃尾又温泉があり、魚沼産コシヒカリの新米や地酒、天然のキノコなどの特産品を用いた、料理自慢のお宿も多いのが特徴です。ぜひ湯巡りしてみてはいかがでしょうか。
〈駒の湯温泉〉の詳細
にいがた観光ナビ:にいがた観光ナビ:駒の湯温泉|https://niigata-kankou.or.jp/spot/11610
Information
Profile 植竹深雪さん
温泉ジャーナリスト。国内外2800以上の温泉に入り1200泊以上宿泊。現地に何度も足を運び、温泉全般、旅館、サービス、グルメなどにおいて温泉施設、旅館経営者や女将さんなどへ綿密な取材のうえ、各メディアに発信。人気情報番組から報道番組コメンテーター、雑誌連載での利用者目線のわかりやすい解説は、各業界からの信頼も厚い。温泉に関する資格多数取得。著書『からだがよろこぶ!ぬる湯温泉ナビ』。
「前回、35度程度のぬる湯の栃尾又温泉をご紹介しましたが、この貝掛温泉もややぬるめです。37度ほどのお湯にじっくりと浸かると、水温が体温に近いためか、違和感なく体に馴染みます。私は特に内風呂が好きで、枕木に頭を置いて全身を委ねると、本当に体が浮くんです! それがすごく気持ち良くて。実際に貝掛温泉では“浮力浴”と呼んでいるそうです。
泉質は無色透明で無臭のナトリウム・カルシウム塩化物温泉。成分としてはメタホウ酸を多く含んでいるため目に良いとされています。ですので、露天風呂で目を洗っている方をよく見かけますね」