冬は温泉が恋しくなる季節ですよね。新潟は意外と温泉地が多いってご存じでしたか? 実は「宿泊施設のある温泉地数」は新潟県内に137か所(※)あり、北海道、長野に続き全国で第3位。月岡温泉や越後湯沢温泉など、全国的に有名な温泉もありますが、今回は新潟らしいユニークな温泉をピックアップしました。監修してくださったのは、新潟県長岡市出身で温泉エッセイストの山崎まゆみさんです。
この記事では、下越エリアから新潟らしい特徴のある温泉を5つご紹介します。それぞれの温泉の詳細を知ると、思わず行きたくなるはずです。ぜひこの記事で取り上げた新潟の温泉に足を運んでみてください。
※温泉利用状況「令和3年度温泉利用状況」(環境省)
Profile 山崎まゆみさん
新潟県長岡市生まれ。温泉エッセイスト・跡見学園女子大学“観光温泉学”講師。VISIT JAPAN大使(観光庁任命)として日本の温泉文化を国内外に広く発信。国の観光政策の重要な会議に参画し、また「観光庁長官表彰」審査員や「新潟の魅力を考える懇談会」委員、「新潟プレミアサロン」のコーディネーターも務める。著作に『女将は見た 温泉旅館の表と裏』『温泉ごはん 旅はおいしい!』ほか。
Index この記事の目次
新潟・下越の温泉は王道路線から変わり種まで!
新潟県・下越地方で有名な温泉といえば、新発田市にある月岡温泉。新潟県内の人気温泉地にも上位に名を連ねるほどで、県下有数の規模の温泉街や美肌の湯として人気を博しています。飲泉してみると味にクセがあり、テレビ番組『月曜から夜ふかし』ではタレントのマツコ・デラックスさんに「日本一まずい温泉」として紹介され話題となりました。
でも、下越で人気の温泉は月岡温泉だけではありません。新潟市で有名な温泉は、西蒲区にある岩室温泉。300年の歴史を誇る温泉地で、新潟の芸妓発祥の地として知られています。また、村上市にある瀬波(せなみ)温泉も歴史に名高い温泉で、日本海に沈む美しい夕日を眺めながらゆっくり過ごせる温泉として地元の人からも観光客からも愛されています。
有名な温泉ももちろんいいですが、エッジの効いた変わり種の温泉を体験すれば、また新しい新潟の一面を知ることができそうです。
下越の温泉①咲花温泉
美肌3成分を含む「美肌の湯」
新潟県五泉市にある咲花温泉は、「美肌の湯」として知られています。美肌効果があるとされる4つの条件である、PH7.5以上の弱アルカリ性、炭酸水素塩泉、硫黄泉、硫酸塩泉のうち、炭酸水素塩泉以外の3つの条件を満たしているのです。
また、塩化物泉の条件も満たしているため、「塩のパック効果」も期待できます。湯上がりに保湿クリームを塗らなくても肌がコーティングされたような感覚が残り、入浴後も肌を覆って「美肌の湯」が逃げないようにしてくれます。
一般的に刺激が強いとされる硫黄泉ながら、刺激が強すぎないため、湯あたりの心配も少なく安心して入れることができるのも特徴のひとつです。
ほかにも、温泉の成分によっては、ひすい色、透明、緑色、乳白色と気温でお湯の色が変化する、という変わった特徴もあります。咲花温泉は、この珍しい変化を見るのが楽しい温泉でもあります。
咲花温泉を楽しむなら〈佐取館〉がおすすめ。ひすい色のお湯に身を委ねて、展望大浴場から雄大な阿賀野川と山々を一望することができます。
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下越の温泉②新津温泉
温泉ファンを魅了する強烈な石油臭
温泉ファンには有名な温泉が新津温泉です。その理由は、お湯から匂う強烈な石油臭。石油産出県の新潟らしい温泉です。そもそも石油の採掘中に湧出した温泉で、新潟県にはこうした石油掘削中に温泉を掘り当てた、という温泉地がいくつかあります。その代表的な温泉が新津温泉です。
入浴すると、鼻がつんとするほど匂いが強烈です。お湯の色は無色透明ですが、ごくわずかに微白濁があります。また、自家源泉なので温泉の成分が損なわれていません。源泉は間欠泉になっており、4か月に1回墳出します。
お湯に触れた感触はぬるりと重めです。皮膚病やアトピー治療の効果が期待できます。石油臭という強烈な個性のある温泉ですが、一度入るとクセになり、地域のご高齢の方々にも根強い人気がある温泉です。
新津温泉のオープンは1954年。場所は新津の市街地にあります。トタンで覆われたひと昔前の民家のようなレトロな外観で、浴室には楕円形の湯船がひとつ。大人4人でいっぱいになるローカル感たっぷりの温泉です。
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下越の温泉③出湯温泉
開湯1200年。お寺の境内にある温泉
新潟県内最古ともいわれる温泉が出湯(でゆ)温泉。開湯1200年の歴史を持ち、弘法大師が杖をついて湧出させたという伝説が残っています。そのため、華報寺境内にある共同浴場の湯口の上には小さな弘法大師像があるところが特徴です。境内で入浴できるのは全国でも珍しく、貴重な体験ができます。
お湯は無色透明、無臭。光が射し込むと、お湯がキラキラする透明感が美しいです。寺湯の〈華報寺共同浴場〉だけでなく、〈出湯温泉共同浴場〉も近くにあり、こちらは2008年2月に新しく生まれ変わった施設のため、地元では「新湯」と呼ばれ親しまれています。泉質はどちらの共同浴場も弱アルカリ性単純温泉です。
ちなみに温泉旅館の泉質はラジウム温泉(単純弱放射能冷鉱泉)で、アトピー性皮膚炎に効果があるといわれ、全国から多くの人が訪れています。
また、出湯温泉には日本初といわれる「温泉水を100%使用したパン」があることでも有名です。地元産天然酵母にもこだわり、〈出湯温泉パン工房〉は、出湯温泉に訪れる人のお馴染みの立ち寄りスポットとなっています。
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下越の温泉④村杉温泉
開湯700年! 日本有数のラジウム温泉
村杉温泉は世界的に見ても稀な地質構造から生まれたお湯が湧き出ています。ラジウム温泉と言われ、花崗岩の成分が溶け出したお湯にラジウムが多く含まれており、婦人病に効果があることから、古くから「子宝の湯」といわれています。
また、お湯の守り神の薬師様を祭る薬師堂があることからも、古くから村杉温泉が親しまれていることがうかがえます。「村杉」という地名は、この薬師堂へ続く道に、仏の恩に報いるために杉や松を植えたことから名づけられました。
春には頭上に桜が咲く共同浴場〈薬師の湯〉は、観光客向けというよりも地元の人々の社交場となっています。そのすぐ裏にある〈薬師の足湯〉は、温泉街の真ん中のラジウム温泉湧出地を囲むようにつくられている足湯で、ジェット、バブル、足裏マッサージの3種類を楽しむことができます。
旅館に泊まるなら、立派な日本庭園がある〈風雅の宿 長生館〉、名建築がすばらしい〈環翠楼〉がおすすめです。
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下越の温泉⑤月岡温泉
もっと美人になれる「日本一まずい温泉」
最後にご紹介するのは、「もっと美人になれる温泉」と呼ばれている月岡温泉。全国的にも知名度が高い温泉です。入浴後は肌がしっとりとして、保湿効果をはじめ、アトピー性皮膚炎、尋常性乾癬、慢性湿疹、表皮化膿症にも効果が期待できます。
月岡温泉の泉質は、含硫黄-ナトリウム-塩化物・硫酸塩泉。旅館の〈泉慶〉〈華鳳〉〈別邸 越の里〉の自家源泉〈白玉の湯〉は、国内随一の成分含有量を誇る硫黄泉が自慢です。
お湯はエメラルドグリーン色で、強い匂いと両手でこすると軋む感じがするところが特徴。味はクセがあり、タレントのマツコ・デラックスさんに「日本一まずい温泉」としてテレビ番組『月曜から夜ふかし』で取り上げられたほどです。
温泉街の中心には飲泉所〈源泉の杜〉があるので、そこで「日本一まずい温泉」を味わうことができます。
月岡温泉のもうひとつの魅力は、県内随一の規模を誇る温泉街。煎餅の手焼き・絵付けを体験できたり、新潟産の干物や発酵食品を試食できたり、まち歩きも楽しい、観光しがいのある温泉です。
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新潟ならではの温泉は、どれも個性的。秘湯も温泉街もあり、それぞれほかにはない魅力があって、どこに行こうか迷ってしまいますよね。今回は珍しい特徴がある温泉ばかりを紹介しましたが、まずは気になった温泉から行ってみてはいかがでしょうか。温泉をきっかけに新潟の文化を知るのも楽しいはずです。
credit text:藤岡あかね