食通たちがそろって称える“美食大国”新潟。そんな新潟から、『ミシュランガイド新潟2020特別版』掲載店をはじめとしたスゴ腕シェフ達の贅沢レシピがネットで続々と発信されているってご存じでしたか? 新潟食材を取り寄せて、シェフのレシピを自宅で再現してみましょう。挑むのは、これまで周囲を震撼させてきた料理ベタ女子。新潟からやってきた、立派な「塩引き鮭」の命運やいかに?
塩引き鮭さん、いらっしゃ〜い
“鮭のまち”として知られている、新潟県村上市。「秋といえばやっぱり鮭だね」「うちには塩引き鮭っていう珍しい“熟成鮭”があるんだよ〜!」なんて、地元っこから“お国自慢”を聞かされて、生ツバをゴクリ……。
村上市の川で生まれた鮭は、川から海に出たあと、北太平洋の海を何年もかけて回遊します。短ければ2〜3年、長ければ10年近くも海を満喫していることがあるんだとか! 鮭さんたちは旅好きなんですね。
「塩引き鮭」とは、そんな鮭を豪快に1匹まるまる洗って、シンプルに塩を刷りこみ、寒風の力も借りながらゆっくりと熟成させる、おいしいスローフードなんですって。
絶対食べたい! というわけで、村上鮭の専門店〈千年鮭 きっかわ〉のお取り寄せサイトで、えいやっと注文してみました。フツーの切り身じゃなくて……
ドカン! いっぴき!!!!!
鮭ってこんなに大きいの!? ピカピカの鎧をまとった一流の戦士の風格。広い北大西洋で戦って帰ってきた、まさに川の王者です。こんなサイズの魚に体当たりされたら死んじゃうよ。これをガンガン片手でシバきまわして食べているクマってすごいですね。
一流シェフのレシピ動画を視聴
そのままガブッといきたがる心のクマをおさえつけ、ガスで炙って日本酒じゃ〜! と騒ぐ心のオッサンも黙らせて、もっとおいしくて、上品で、美しいレシピをつくりましょう。
教えてくれたのは『ミシュランガイド新潟2020』に掲載された〈料亭 能登新〉の11代目店主・山貝誠さん。塩引き鮭の濃厚な旨みをグッと引き出す「炊き込みご飯」にアレンジしてくださいました。そのレシピ動画がこちら!
今回は炊飯器という心強いお助けマンがいるので、すっかり大船に乗ったつもりでレッツ・クッキング!
「越後村上塩引き鮭の炊き込みご飯」に挑戦!
【材料】(2人分)
・塩引き鮭 …… 100グラム
・カブ …… 50グラム
・サラダ油 …… 少々
・米 …… 1合
★カツオと昆布の合わせだし …… 150cc
★薄口しょうゆ …… 大さじ1
★みりん …… 大さじ1
・生姜 …… 少々
・ごま …… 1つまみ
・青じそ …… 1枚
まずは、塩引き鮭を2センチ角くらいのサイコロ状に切り分けて、フライパンに入れ、油で炒めます。
むにゅ、むにゅ。弾力があって切りにくいな……。
「少し凍らせておくと切りやすいですよ。天然物の秋鮭は脂が少なめでさっぱりとしているので、サラダ油で炒めることでコクが増します。鮭は焼くと縮むので、皮目だけパリッと焼くくらいの気持ちで。ほどけてフレークにならないように気をつけて!」(山貝さん)
大将の金言に従って、フライパンで皮目からジュワッ。
さらに、角切りにしたカブを加えます。山貝さんのレシピでは、鮮やかな赤カブを使っていますが、今回はスーパーで入手した普通のカブになりました。これはこれで美しい♪
「炒める時間はだいたい1〜2分が目安。あとで炊くので、ここではさっと炒めて食感が残るようにするのがコツです」(山貝さん)
一方、お米のほうは、さっと研いで30分給水させて、ざるにあけて水を切ります。
続いて、カツオと昆布の合わせだしに薄口しょうゆとみりんを加え、ひと煮立ちさせてから冷ましておきましょう。
続いて、炊飯器に、お米、冷ましておいた合わせだし、千切りにした生姜を入れます。
さらに、炒めた鮭とカブも加えて、「炊飯」をスイッチオン!
炊き上がったら、ごまと青じそをプラスして、ざっくりと混ぜ合わせます。あとは、茶碗に盛り付ければ完成!
できました〜!(がんばったのは炊飯器)
まさに料亭の〆ご飯!“鮭200%”の炊き込みご飯
いただきまーす、と軽い気持ちでひと口。うっ、こ、これは……。まさに料亭で懐石コースをいただいたあとの、最後の〆に出てくるご飯! 鮭の脂からいい香りがして、照りもすごいのです。もはや「鮭200%!」という感じ。1匹の内側に2匹分の味がします。
ちなみに、この「塩引き鮭」はだいたい1か月かけてつくるといわれていますが、村上には、さらに熟成を進ませて半年以上干すという“超熟成”された鮭も……。日本酒をかけて食べる風習があることから、「酒びたし」と呼ばれるのだそうです。塩引き鮭でこの濃厚さなら、酒びたしは一体どうなっちゃうんでしょう。こんな鮭に出合えるなら、村上に行ってみたいなあ。
「この炊き込みご飯は、おにぎりにしても絶品だし、焼きおにぎりにしても最高です。お茶漬けにすると、お茶をかけるだけで絶妙な塩気とコクが楽しめますよ。あとはお好みで、ワサビや海苔を足してくださいね」(山貝さん)
今回はまるまる1匹という大胆なショッピングをしましたが、もちろん小分けパックでも販売されています。山貝さんのお店〈料亭 能登新〉でも、骨を抜いた状態の切り身のパックが販売されていますよ。気になった人、ぜひ味わってみてくださいね。
ごちそうさまでした!
Recipe
【材料】 2人分
・塩引き鮭 …… 100グラム
・カブ …… 50グラム
・サラダ油 …… 少々
・米 …… 1合
★カツオと昆布の合わせだし …… 150cc
★薄口しょうゆ …… 大さじ1
★みりん …… 大さじ1
・生姜 …… 少々
・ごま …… 1つまみ
・青じそ …… 1枚
【作り方】
1 塩引き鮭とカブをサイコロ状に切り分け、油で炒める。
2 お米をとぎ、30分給水し、ざるにあけ水を切る。
3 ★を火にかけて沸かし、冷ましておく。
4 炊飯器に2→3→千切りにした生姜→1を入れて炊く。
5 炊き上がったら、ごま、青じそを入れて混ぜ合わせる。
6 茶碗に盛り付けて完成。
Profile 矢口あやは
大阪生まれ、東京在住。ライター・編集・イラストレーター。雑誌やWEB、書籍などの制作を中心に活動。料理が大の苦手。文化祭でゴマ団子を調理した際には破裂した団子が天井で跳ね返り、意中の人を直撃した。 Web|ayaha-yaguchi.amebaownd.com Instagram|@ayaha614
credit text:矢口あやは photo:やまひらく