文・シライジュンイチ(ごはん同盟)
おいしいお米が育つところには、おいしいご飯のお供があるもの。魚沼産コシヒカリのふるさと、新潟県南魚沼市には、「きりざい」という昔ながらの郷土料理があります。
「きりざい」とは、野菜や漬け物を細かく切って納豆と混ぜ合わせた料理で、「きり」は切ることを、「ざい」は野菜のことを指しています。
南魚沼市をはじめとする魚沼地方は、日本有数の豪雪地帯。冬の間は長く雪で閉ざされていたため、漬け物や塩漬け、干物など、食材を長期間保存する食文化が発達しました。
なかでも良質なタンパク源だった納豆は大切なごちそうです。この貴重な納豆を大切に食べ続けるために生まれたのが「きりざい」。漬かりすぎた古い漬け物や野菜を細かく刻んで納豆に混ぜこみ、量を増やして食べていたそうです。
ご飯と一緒に効率よく栄養を摂取できることからも、厳しい自然環境で生活していた先人たちにとって大切な料理だったのでしょう。同じ新潟の中でも、地域によって受け継がれ愛されてきた料理に違いがあるのはおもしろいです。
この魚沼地方の郷土料理「きりざい」を広め、ご当地グルメとして地域おこしにも生かしている〈味の店 京〉の南雲勇路さんを訪ねました。
家庭ごとにあった「我が家のきりざい」
南魚沼市の中心部、JR六日町駅からほど近くの商店街にある和食割烹〈味の店 京〉は、魚沼の食材や地酒を楽しめるお店です。代表の南雲さんは、「南魚沼きりざいDE愛隊」のメンバーとして、「きりざい」を全国にPRする活動も行っています。
「今でこそ少子化で家族構成は小さくなりましたけれど、昔は3世帯同居が当たり前の時代。そんな頃に、じいちゃん、ばあちゃんから子どもたちまで、家族みんなで分け合って食べていた料理が『きりざい』なんです。各家庭で漬けていた漬け物を刻んで納豆と混ぜて、それをおかずの一品としていました。きりざいは、言うなればおかずの最終手段。私も子どもの頃から、ご飯のお供としてよく食べていましたよ」(南雲さん)
家庭料理ですから、つくり方も人それぞれ。家庭ごとに「我が家のきりざい」の味がありました。
野沢菜と納豆だけでシンプルに仕上げるか、それとも、たくあんや紫蘇の実、大根、にんじんなどを加えて具だくさんに仕上げるか。納豆は大粒か、小粒か、ひき割りか。味つけも、醤油だけだったり、だしや砂糖を加えたりと、その組み合わせは無限に広がります。
さまざまな種類がある「きりざい」のなかから、今回は〈味の店 京〉で提供されている〈南魚沼きりざい丼〉のつくり方を教わりました。
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