直火でじっくりと焼くから、おいしくなる
工場の中に響くガチャンガチャンというにぎやかな音は、車麩を巻きつけた金属の棒が回転するときに鳴る音でした。回転するタイミングは、1回目、2回目、3回目、4回目と、それぞれの焼き上がりに合わせて調節しています。
![オーブンに棒に巻きつけた生地を並べる](https://img.howtoniigata.jp/2021/12/31105511/spot-kyodoshoku-006-photo8.jpg)
焼きの工程にかかる時間は、およそ45分。オーブンはガスの直火ですが、かつては炭火で焼いていたそうです。
![直火で焼いていく工程](https://img.howtoniigata.jp/2021/12/31105513/spot-kyodoshoku-006-photo9.jpg)
「新潟で麩といえば『車麩』のことを指しますが、実は全国的には珍しい部類の麩で、他県の人からは『これはなんですか?』と尋ねられることは、今でもよくありますよ。直火で焼くのは新潟の車麩ならではです」(信太郎さん)
![木宮信太郎さんに車麩の説明を受ける](https://img.howtoniigata.jp/2021/12/31105514/spot-kyodoshoku-006-photo10.jpg)
石川県でつくられる車麩は2回巻や3回巻が主で、グルテンを多めに入れて、ふわっと大きく焼き上げるのが特徴。金沢おでんの代表的な具材です。全体的にやわらかい麩になるのだそう。
「出汁をたっぷりと染み込ませ、とろとろの食感に仕上げる金沢おでんには、そういうつくり方の麩があっているのでしょうね。新潟の車麩といえば、主に煮物に使われます。焼き目の数が多い分、特に4回巻きはしっかりしていて煮崩れしないんです。箸で持ち上げても崩れず、断面の角がしっかり立っているものが好まれますね」(信太郎さん)
そんなお話をうかがっている間に、車麩がきれいに焼き上がりました。
![焼き上がった車麩](https://img.howtoniigata.jp/2021/12/31105516/spot-kyodoshoku-006-photo11.jpg)
このあとは、金属の棒を抜いて1~2日程度おいて落ち着かせます。すぐに薄くスライスできればいいのですが、休ませた車麩はカチカチに堅く、そのまま切っては端が欠けてしまいます。
そこで、180センチメートルの長さの車麩を蒸し器に入る大きさに切り分け、蒸気の力で柔らかくしたあとにスライサーで輪切りにすると、美しい断面ができあがるのだそうです。
スライスした車麩は紐でくくって、しっかりと乾燥させます。温かい空気が昇る工場の2階が、車麩の乾燥室です。
![紐でくくられたスライスした車麩。乾燥の工程](https://img.howtoniigata.jp/2021/12/31105517/spot-kyodoshoku-006-photo12.jpg)
生地づくりから焼き上げ、蒸して乾燥まで、車麩が完成するのにかかる時間は、およそ1週間。
![焼き上がったばかりの車麩](https://img.howtoniigata.jp/2021/12/31105518/spot-kyodoshoku-006-photo13.jpg)
せっかくの機会なので、焼き上がったばかりの車麩を味見させていただきました。焼きたての巨大な車麩は、まるでフランスパンのよう。パン切り包丁でサクッと切れます。
![小さくスライスされた車麩](https://img.howtoniigata.jp/2021/12/31105520/spot-kyodoshoku-006-photo14.jpg)
こちらが4回巻きの車麩の断面です。断面をよくみると、内側にうっすらと色味がかった1回目の焼き目があることがわかります。1回目は金属の棒に生地を薄く巻きつけて芯の代わりにするので、焼き目の色も控え目です。
![車麩を試食中のごはん同盟のお二人](https://img.howtoniigata.jp/2021/12/31105521/spot-kyodoshoku-006-photo15.jpg)
焼き目は香ばしくカリカリ。生地の白い部分はまだ水分が残っているせいか、しっとりとした食感です。噛みしめると小麦の甘みをほのかに感じました。でも、やっぱり、しっかりと水で戻した車麩のほうがおいしいかな(笑)。
車麩をおいしくいただくためにはどうしたらいいのか。その調理のコツを、店舗を切り盛りする社長夫人の木宮満智子さんにお聞きしました。
![揚げた麩を煮含める様子](https://img.howtoniigata.jp/2021/12/31105448/spot-kyodoshoku-006-next2.jpg)