新潟のつかいかた

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ブランドイチゴ〈越後姫〉
新潟の春を象徴する「赤い宝石」の
おいしさの裏側を追求 Posted | 2024/02/19

甘くておいしいイチゴが、今年も旬を迎える季節になりました。全国各地で多彩なイチゴが栽培されていますが、食の王国・新潟県にも、県外ではなかなかお目にかかれない希少なブランドイチゴがあります。

「可憐でみずみずしい新潟のお姫さまのようだ」ということから、その名がついた〈越後姫〉。甘く、ジューシーなおいしさで、口にした瞬間に幸福感に満たされます。

新潟県オリジナル品種の〈越後姫〉はどのように生まれ、そしてどんな特徴があるのか。その煌びやかな美しさから「赤い宝石」とも表現される〈越後姫〉のおいしさの裏側に迫ります。

春の訪れを告げる〈越後姫〉

イチゴ畑で〈越後姫〉を1粒つまんでいる様子
写真提供:JA全農にいがた

毎年冬から春にかけて、新潟県内の直売所やスーパーは芳醇なイチゴの香りで満たされます。甘くて酸味が少なく、華やかでうっとりするような濃厚な香りが特徴の〈越後姫〉。その甘い香りで、私たちに春の訪れを感じさせてくれます。

冬が長い新潟県の気候を生かし、主に1月から6月に収穫期を迎える〈越後姫〉。2月上旬に旬を迎える「冬の越後姫」は、およそ2カ月間かけてひと粒ひと粒ていねいに育てられ、大粒で酸味が少ないのが特徴です。

4月中旬頃から旬を迎える「春の越後姫」は、春の日差しをたっぷりと浴びて収穫されるため、甘みと酸味のバランスがよく、絶妙な味わいになります。

パック詰めされた〈越後姫〉

「冬の越後姫」と「春の越後姫」。ふたつの顔と旬を持つ〈越後姫〉は、収穫時期によって味わいこそ異なりますが、柔らかな果肉と濃厚な果汁の上質なイチゴとして人気を博しています。

ふたつの旬を持つ〈越後姫〉ですが、最盛期は4月中旬から5月中旬。採れたてでみずみずしい甘さをダイレクトに味わえるイチゴ狩りも県内各所で体験できます。

〈越後姫〉誕生ストーリー

大粒のイチゴを両手いっぱいに持っている

新潟県の園芸研究センター(現・新潟県農業総合研究所園芸研究センター)で、6年もの歳月をかけて開発された新潟県オリジナル品種のイチゴ〈越後姫〉。果重が15〜20グラムと大粒で甘く、ほどよい酸味と豊かな香りを持つ「新潟のお姫さま」が生まれるまでの道のりには、先人たちの努力がありました。

新潟県でイチゴの新品種開発が進められたのは1980年代。それまで、イチゴといえば県内では〈宝交早生(ほうこうわせ)〉という品種が主流でしたが、1980年代中頃になると、九州産の〈とよのか〉や北関東産の〈女峰(にょほう)〉などの新品種が開発され、市場を席巻していきます。その影響から、新潟県内でもさまざまな品種の栽培が始まりましたが、気温が低く、日射量が少ない新潟では、甘くて大きなイチゴは育ちませんでした。

苗の先に実ったイチゴ

1988(昭和63)年、新潟の気象条件に適していて、より甘く、より香り豊かでおいしいイチゴをつくろうと研究が進められます。〈とよのか〉〈女峰〉、そして、寒冷地向きの品種である東北地方の〈べルルネージュ〉といった品種の交配、改良が行われ、1994(平成6)年にようやく誕生したのが〈越後姫〉です。

当初〈越後姫〉は新潟市や新発田市、五泉市などの下越地方を中心に栽培されてきましたが、誕生から30年となる現在は、新潟県内全域で栽培されています。名実共に、新潟県を代表するイチゴへと成長したのです。

新発田産の〈姫のてまり〉とは?

パック詰めされた〈姫のてまり〉
写真提供:新発田市農林水産課

新潟県内全域で栽培されている〈越後姫〉ですが、「このおいしさを、もっとたくさんの人に知ってもらいたい!」という地域と生産者の熱い想いから誕生したのが、ひときわ大粒な新発田産の越後姫〈姫のてまり〉です。

鮮やかな朱色と丸みを帯びた形が、まるでお姫さまが遊ぶ「てまり」のようだったことからその名がつけられました。

〈姫のてまり〉のロゴと半分に切ったイチゴ
写真提供:新発田市農林水産課

一般的な〈越後姫〉は果実の重さが約15〜20グラムのところ、〈姫のてまり〉は約3倍の45グラム以上のもので、新発田産の越後姫のなかでも大粒のものが厳選され、商品化されています。毎年3月下旬から4月中旬の間にだけ味わえる、特別な〈越後姫〉です。

通常の約3倍の果実はより甘さが増す先端部分が広く、口いっぱいに笑顔がこぼれるほどのおいしさが広がります。

2022年のデビュー以来、新発田市内のスーパーや直売所で販売されているので〈姫のてまり〉を求めて新発田市を訪れてみてはいかがでしょうか。限られた期間でしか出合えない希少な〈姫のてまり〉は、特別なパッケージに包まれていて、ギフトとしても最適です。

〈越後姫〉のおいしい食べ方&選び方

ロールフィルムがかけられる前の出荷準備を待つたくさんの〈越後姫〉

水分量が多く、ほかのブランドイチゴとは桁違いの果肉の柔らかさを持つ〈越後姫〉は、傷みやすく県外への流通が難しいことが長年の課題でした。

過去には「県外不出の幻のイチゴ」とさえ言われた〈越後姫〉ですが、卵のように個々が重ならないようにパック詰めできる容器が開発され、2007(平成19)年から首都圏での販売もスタート。県内外でフレッシュなイチゴはもちろん、ケーキやパフェ、ジェラートといった加工品でも、〈越後姫〉のおいしさを実感できるようになりました。

〈越後姫〉を購入する際は、「果実の色つや」「ヘタの緑色の濃さ」「ふっくらと太った形」が選ぶポイントです。円すい形で果皮が鮮やかな朱色になる〈越後姫〉は、なるべく全体が色づいていて、形がいいものを選びましょう。

縦半分にカットしたイチゴ

〈越後姫〉を丸ごと味わうのなら、ヘタを付けたまま洗い、ヘタのほうから食べ進めていくと先端の甘みを感じながら、最後までおいしく食べられます。

〈越後姫〉がモチーフである「えちごのイチゴのプリンセス」がわかりやすく果実の特徴を紹介してくれる「JA全農にいがた You Tubeチャンネル」も必見です(越後姫について/JA全農にいがた)。

〈越後姫〉の粒に顔のイラストが描かれたイメージカット
写真提供:JA全農にいがた

ひと口頬張れば、思わずにんまり笑ってしまう〈越後姫〉。食べて、贈って、笑顔あふれる春をお過ごしください。

credit 写真提供(メインカット):JA全農にいがた text:松永春香