新潟県民が新潟の魅力を発信する「新潟※(コメジルシ)プロジェクト」。その活動の一環として、新潟の魅力をよく知る人が、各エリアの魅力的な日帰りツアーをご案内。今回は、長岡市内を巡る旅を〈株式会社FARM8〉代表の樺沢敦さんに案内していただきました。
新潟県のほぼ真ん中にある長岡市。全国的には長岡花火で知られていますが、多いときは4メートルも雪が積もる豪雪地帯であり、中越地震の被災地・山古志や上杉謙信の生まれ故郷・栃尾も含まれているエリアです。雪とともに暮らし、中越地震を乗り越えてきた長岡の地には、人々の強さと温かさが根づいています。
長岡出身であり、長岡で起業した樺沢さんは、食品開発のほか、地域ブランディングなどさまざまな事業を手がけ、地元愛にあふれています。そんな樺沢さんが案内してくれたのは、「地元の人が積み重ねてきた“人間力”に触れる旅」でした。
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江戸時代からの発酵の息吹が残る
「摂田屋」エリア
まず案内してもらったのは、長岡駅からひと駅の宮内駅から歩いて10分ほどの醸造のまち「摂田屋(せったや)」。江戸時代から醤油をつくり続ける〈越のむらさき〉や新潟で最も古くからある酒蔵〈吉乃川〉をはじめ、味噌やサフラン酒など、発酵にまつわる蔵元が多く軒を連ねるエリアです。そんな摂田屋で樺沢さんが最初に足を止めたのは、越のむらさき前にあるお地蔵様でした。
「私の祖母は樺沢ツルという名前だったのですが、私自身、幼少期に病院のお見舞い帰りに、祖母がお地蔵様に千羽鶴をかける姿をよく見ていました。祖母が亡くなったあとも誰かしらが続けて千羽鶴をかけてくれていたようで、いまも数十年の時代を感じる鶴がお地蔵さんの周りを埋め尽くしています」と樺沢さん。
地域の人々が受け継いできた温かい思いやりが感じられますね。幼い頃からこの地域で過ごしてきたからこそ、思い出深いエピソードもたくさんあるようです。
摂田屋の醸造元を巡り終えて向かったのは、〈江口だんご 摂田屋店〉。長岡市内に6店舗を構える江口だんごですが、2022年7月に摂田屋店を開店。越のむらさき創業家の旧邸宅を活用し、喫茶としても営業しています。日本庭園を眺めながら日本茶とみたらし団子をゆっくりと味わうと、疲れた心が解きほぐされていくよう。風情ある空間で過ごすひとときが、疲れた心に安らぎをもたらしてくれます。
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柿の種はここから生まれた!?
元祖柿の種〈浪花屋製菓〉
摂田屋から車で5分ほど移動して向かったのは、〈浪花屋製菓〉。いまや誰もが知る米菓となった柿の種を生み出した会社でもあります。今回は柿の種が生まれて100年を迎えることを記念して2024年にオープンしたミュージアム兼ショップ〈新潟・長岡 柿の種発祥の地〉を案内してくれました。
1923年創業の浪花屋製菓は、もともとあられなどの米菓をつくっていました。ところがある日、社長の奥さんが誤って小判型の金型を踏んでしまい、三日月型に変形。修理が高額で諦め、そのまま使い続けたところ、「柿の種みたいだ」と評判になり、現在の「柿の種」の形が生まれたそうです。いまや全国的に有名になった柿の種は、こんな失敗から生まれたことに驚きです。
店内では、こうした柿の種誕生エピソードや製造工程を紹介する動画を見たり、元祖柿の種を買ったり、柿の種バイキングをしたりとさまざまな楽しみ方ができます。
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地元の旬食材を生かした和の味わい
〈旬・菜・魚 かおる家〉
さて、たくさん歩いて回っていたらお腹が減ってきました。この日お昼に向かったのは、長岡の旬の食材をふんだんに使った料理が楽しめる〈旬・菜・魚 かおる家〉。樺沢さんが県内外から来るゲストを20回以上連れてきている、お気に入りのお店です。ランチはもちろん、地元の仲間と集まるときにもよく利用しているそうです。
お米や野菜は地元農家から、魚は毎朝市場で仕入れるというこだわりのお店です。店主の栗田さんは「おすすめ料理をつくる」というよりも、「どの料理もハズレがないこと」を意識しているそうです。
「お客さんが食べたいものって日々変わるじゃないですか。だから、すべての料理をおいしくしようと思っています。例えば、冬は雪かきで疲れている人のために、味つけを少し濃くしたり。求められるものに応えられるよう毎日工夫しています」と栗田さん。
細やかな心遣いが詰まった料理が、訪れる人々の心と体を温めてくれます。
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