新潟のつかいかた

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〈まつだい棚田バンク〉で
自分が手をかけたお米は
格別ウマい! | Page 2 Posted | 2018/10/29

みんなを巻き込む棚田オーナー制度

十日町市を代表する棚田写真スポット〈星峠の棚田〉。たくさんの観光客が訪れては、その光景を写真に収めていきます。

「星峠も水がなくて、本来はやりづらい棚田なんです」と教えてくれたのは、〈まつだい棚田バンク〉を運営するNPO法人〈越後妻有里山協働機構〉の竹中想さん。

「でも、400年以上前から続いている棚田なんです。もしかしたら1500年前かもしれないという説もあるんですよ」

全国でも有数の美しい景観を誇る、星峠の棚田
〈星峠の棚田〉は全国でも有数の美しい棚田の景観を誇る。

こうした美しい棚田を、みんなを巻き込みながら保っていきたいという思いを込めて〈まつだい棚田バンク〉は活動しています。基本的な仕組みは、保全活動へ出資することで、リターンとしてお米が届くというもの。お米が届くのを待つだけでなく、希望者は田植えや稲刈りなどにも参加できます。棚田の保全活動をしながら、自分の棚田で採れたお米を食べているという実感を得ることができるのです。きっとそれは、いつもの何倍もおいしいはず!

慣れた手つきで稲を刈っていくリピーター参加者
慣れた手つきで稲を刈っていくリピーターの参加者もたくさんいました。

標準コースならば一口35,000円。過去平均で37.3キロの配当米が届きます。小口コースならば一口10,000円で、過去平均で9.4キロの配当米。豊作であればたくさん届くし、今年のように夏に雨が少なかったり、大雨や台風などが続くと収量が減ってしまうことも。

天候によって毎年の収量が異なるという、よく考えれば当たり前のことにも気づかされます。お金を払っていても、一定のサービスを受けられるわけではないのです。もし棚田バンクに登録していたら、十日町市の天気が気になって仕方ないことでしょう。

稲刈りの服装。頭にかぶった笠、酒蔵の前かけと、トラディショナル&スタイリッシュ
頭にかぶった笠、酒蔵の前かけと、トラディショナル&スタイリッシュ。

2017年度は、約200口の棚田オーナーが誕生しました。

「棚田のオーナー制度は、なかなかリピート率が芳しくないという話を聞きます。〈まつだい棚田バンク〉では60%くらいがリピーターになってくれています。小口コースもあるので、まずはお試しで参加してもらい、ぜひまつだいに来てみてください」

稲をわらでまとめる参加者
稲をわらでまとめるには、ちょっとしたコツがいるようです。

2003年に始めた当初は、取り扱う棚田は1,900平方メートル程度。今では96,000平方メートルを超えるといいます。徐々にこの活動が認知されてきたようです。

「最近では、農家から直接『うちの田んぼもやってほしい』という話が舞い込むようになりました。もう私たちが引き受けないと、耕作放棄地になってしまうんです。だから条件がよくない棚田でもなるべく引き受けるようにしています。地域の人たちもやりたがらない棚田で私たちがお米を育てていると、相互関係が成り立って、私たちの活動の意味も強くなっていきます」

大量の稲を抱える参加者。まるで大きな花束をもっているかのよう
大量の稲は、まるで大きな花束。

そのような依頼も増え、〈まつだい棚田バンク〉メンバーひとり当たりが管理する棚田が多くなり、手が回らなくなってきているそうです。すると地元農家の米づくりのクオリティに達することが困難になってきます。

「地元の米農家の方たちと頻繁にコミュニケーションを取っているし、育て方も教えてもらっているので、みなさんがすごく手をかけて米を育てていることを知っています。あるとき、80歳代の農家の方が自分の田んぼからもれている一滴の水を指して話してくれました。その一滴ずつ漏れている水は、積み重なると五石分の減収になるというのです。これを聞いたときは“目からウロコ”でした。これは“一滴五石”という話です。こうして代々受け継がれてきた蓄積はすごいものがあり、そこに近づきたいのです」

普段は棚田を手がけることの難しくなってしまった地域の農家の人たちも、田植えや稲刈りイベントのときなどは、〈まつだい棚田バンク〉メンバーと一緒になって、十日町市に受け継がれてきたお米づくりの方法や背景、価値などを守り、伝えようと努力しています。

刈った稲を抱える子ども
子どもたちも楽しく稲刈り。

「棚田での米づくりは体力的にも経済的にも一筋縄ではいきませんが、里親の方々や地元の方の協力をいただきながら、なんとか成り立たせようと頑張っています」

〈まつだい棚田バンク〉の稲刈りイベントの参加者たち

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