新潟市を代表する職人の
おにぎり専門店〈越後屋〉
お米がおいしい新潟県。お米の有名な産地にまで行かなくても、玄関口である新潟市内でも、同じくらいおいしいご飯に出合うことができます。それは一番シンプルな“料理”ともいえるおにぎりです。新潟に着いていきなりおにぎり。帰りの新幹線でもおにぎり。新潟市内でお手軽に、本格的なおにぎりを楽しめるのです。
新潟市内にも、おにぎり専門店が増えたようです。そのなかでこだわりの3店をピックアップしました。
まずは〈越後屋〉さん。新潟駅前の居酒屋〈かっぽうぎ〉内に、ショップインショップのようなかたちで展開しています。実は昭和50年創業で、かつて古町にあった〈越後屋〉。1日に数千個も売り上げていたというおにぎりの名店でした。古町の〈越後屋〉を閉店後、〈かっぽうぎ〉のオーナーと出会い、現在のかたちになりました。
〈かっぽうぎ〉店内に入ると、すぐ左手にカウンターがあり、そこが〈越後屋〉スペースです。カウンターの奥には、お寿司のようにたくさんのメニューが掲示されています。
おにぎりもお寿司も、たしかに米と具だけ、そしてお米がおいしくないといけないという共通点があります。さすが米どころ新潟です。お米を楽しむ文化が根付いています。
使用しているお米は岩船産コシヒカリ。新潟県からエコファーマー認定を受けている〈神林カントリー農園〉のお米を使用しています。粘り気があって、おにぎりに向いています。
握ってくれる職人さんは、和田利春さん。移転前の〈越後屋〉時代からおにぎりを握ってきました。実際に握っている様子を見ていると、なんと木枠を使っていました。
「少し前に流行った“おにぎらず”の元祖みたいなものですね」と和田さんは笑います。木枠に土台となるご飯を押しこまないように入れ、具を乗せます。そしてご飯でふたをします。このとき、手のひらをくぼませて、こんもりと乗せます。中味の具を潰さない工夫です。
木枠から取りだした後も、ほとんど力を加えずに握っているので、そのままでは崩れやすく、形は海苔で保たれているといってもいいほど。
「パリ」「ふわ」「塩辛さ」という“三位一体”が〈越後屋〉のおにぎりの特徴。崩れやすいから大切に両手で持ち、まずは海苔の「パリ」。小さな穴を開けてあるので、噛み切りやすいのです。そして「ふわ」。言うまでもなく、まるで炊き立てごはんのふんわり感。そして「塩辛さ」。具を多めにしているので、どこから食べてもひとくち目で具に達します。これがほとんど同時にやってきて、海苔とご飯、具が口の中で三位一体になるのです。
〈かっぽうぎ〉は、もともと酒屋さんでした。日本酒の消費量が落ちていくなかで、同じ米に注目しておにぎりを始めたといいます。
「米食(べいしょく)から米食(こめしょく)へ」と副店長の宮下竜也さんは言います。時代は移り変わり、米(べい)=アメリカに代表される欧米食など、お米以外の選択肢も増えました。しかし日本人なら、お米をしっかりと食べてもらいたい。新潟の食文化の中心にある最高のお米を使ったおにぎりは、なによりの贅沢です。
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〈にぎり米〉のほろほろおにぎり 】