あなたの手で、棚田を守ろう!
最高の晴天に恵まれた9月某日。十日町の棚田エリアは見渡す限り黄金色! この日は〈まつだい棚田バンク〉登録者の稲刈りイベントです。複数日にわたって開催されるなか、この日は約50人が集まりました。駐車場を覗いてみると、東京など新潟以外のナンバーもたくさん並んでいます。旅がてらに遠方から来ている人も多いようです。
まずは地元スタッフから、刈った稲をわらで束にまとめるための結び方を習います。手慣れた手つきでこなすリピーターから、初めて稲やわらに触る子どもたちまで。いろいろな人たちが練習しています。
あとは難しいことはありません、どんどん稲を刈っていくだけ。慣れている人の周りはあっという間に刈り終えて、スペースができていきます。腰を曲げたままの重労働も、みんなでやれば楽しい作業になるようです。
刈り終わった棚田は、子どもたちの絶好の遊び場。走り回ったり、昆虫やカエル獲りに夢中のようです。バッタやカエルもたくさんの種類が棲息しています。それだけ肥沃かつ多様性のある棚田であるという証拠です。こうした棚田を〈まつだい棚田バンク〉は、会員を巻き込んで保全してきました。
「〈大地の芸術祭〉自体が、たくさんの人を巻き込もうというコンセプトを持っています。私も移住して10年近く経つので、新鮮な気持ちはわからなくなってきていますが(笑)、ここに来てもらうとみなさんいい刺激をもらっているようです」という竹中さん。
参加者の多くからは「地元の人とコミュニケーションを取れることが楽しい」という声があがります。
「苦労しながら自然と密接した生活を送ってきた地元の人の話を聞いていると、ひと言ひと言に重みがあります。自然と対峙していると、覚悟ができるんだと思うんです。棚田での体験を通して、こんなに魅力的な人たちがいるということも知ってもらいたいです」
みんなが写真を撮りたいと思う棚田の風景の裏には、それを守っている地元の人たちがいます。しかし、そこに住んでいなくても棚田を守る側に回ることも可能なのです。もし美しい景観を守っていきたいのなら、保全に協力してみるのもいいでしょう。なんといっても、おいしいお米と楽しい田植え・稲刈り体験がついてきます。日本の米文化の多様性を象徴する棚田、残していくべき文化のひとつではないでしょうか。
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credit photo:ただ(ゆかい) text:大草朋宏