“食べる幸せ”と“食べられる幸せ”いっぱいの一膳
そのままでも十二分においしい〈角屋旅館〉のご飯ですが、前日までに予約を入れると、また違うおいしさを味わうことができます。
そのひとつが、玄米ご飯。しっかりと浸水させ、時間をかけて炊き上げられた玄米ご飯には、噛めば噛むほど出てくる豊かな味わいが。臭みも一切ないので、玄米食を一度試してみたいという方にもおすすめです。
ふたつ目は、胃腸が疲れているときにうれしいお粥。普通に炊いたご飯よりも、さらに甘みを感じられるお粥はお客さんにも人気だそうで、女将の美幸さんいわく「『体調が悪いわけではないけど、お粥にしてほしい』と、おっしゃる方もいるんですよ」とのこと。
そして3つ目が、低タンパク米のご飯。「近くにお米を乳酸菌発酵させて、タンパク質を除去するメーカーがあるんです。病気や体の都合など、希望者に向けてお出ししています」と安永さん。
持病の関係で食事制限のあるお客さんでも、滞在中は安心して食事を楽しめるようにと、症状にあわせた食事も用意している〈角屋旅館〉。その背景には村杉温泉の湯治場としての効果の高さと、“すべてのお客様に、貴重な旅を心から楽しんでもらいたい”という旅館の心づかいがありました。
旅の時間を、幸せなひとときにする心配り
「お客様のほとんどは療養をされたいという方や妊婦さんで、ご家族やお知り合いに『2、3日宿泊すると体がすごく楽になるから』と紹介された方々ばかり。さまざまな事情のあるお客様がいらっしゃいます」と安永さん。
「『どうしても、ここの旅館で』と思ってくださっているのですから、予約のお電話をいただく際にはいろいろとお話をうかがい、食事だけでなくお部屋の種類、枕や家具などもご希望に沿ったものを用意するようにしています。以前は何社かの旅行代理店と契約をしていたのですが、現在はお客様の事情を知ることができるように、直接予約を受けるかたちにしました」
「お電話でかなり深いところまでお話をしてくださったりもするので、お客様とのおつきあいは表面上の簡単なものではないですね」と女将さん。「そこにあれこれ手を出したり、口を出したりするわけではないですけれども、気持ちで受けるというか……つかず離れずの距離感が良いと、以前にお客様にほめていただいたことがあります」
仲の良い友だちと観光名所を巡る、にぎやかなグループ旅行も楽しいですが、大切な人と静かにゆっくりと心身をいたわる旅行も、長い人生の中では必要なもの。新潟の豊かな自然の恵み、そして新潟の人々のあたたかみを、五感を通して味わえる〈角屋旅館〉。清らかな水と澄んだ空気が育んだ、とびきりのごはんをいただきながら、新潟の新たな楽しみ方を、ぜひ発見してみてください。
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credit photo:斎藤隆悟 text:林みき