ご当地の食材をお取り寄せして調理し、おうちにいながら現地を訪れたような最高の旅気分を味わう連載企画「旅する食卓」。今回は、新潟が誇るお米〈新之助〉を取り寄せて、シェフのレシピを自宅で再現してみましょう。挑むのは、これまで周囲を震撼させてきた料理ベタ女子。新潟からはるばるやってきた〈新之助〉たちの運命やいかに!?
新之助さん、いらっしゃ〜い!
ずっと待っていました。アツアツの炊きたてご飯を前に「日本人でよかった……」と涙ぐめる、この季節を。いよいよやってきましたね、新米のシーズンが!
もはやDNAレベルでお米を愛しているといってもいい、私たち日本人。お米のトップスターといえば、やっぱり〈コシヒカリ〉でしょうか。しかし最近、その主要産地として知られる新潟県が、着々と次世代のスターを育んでいるらしいじゃありませんか。
そのルーキーの名は〈新之助〉。2017年にデビューし、なんとその翌年には雑誌『日経トレンディ』誌の「米のヒット甲子園」で大賞を受賞するという快挙を達成。お米界のスターダムを一気に駆け上がりました。
一体どんなお米なの? さっそく〈新潟ふるさと村〉のオンラインショップで注文したところ、数日後にやってきたのがこちら!
こ、このお米……っ、めちゃくちゃ運気あげてくれそう! まるでミュージアムショップに飾られていそうなモダンな紅白デザインは、おめでたい“ハレの日のお米”を意識したものなんだとか。食べるだけ、いや炊くだけで開運できそうな神々しい気配です。
炊いてみました!
親御さんである新潟県が胸を張っていうには、「ウチの子(新之助)の魅力は粒が大きく、甘みとコクが強いところ!」なんだとか。んー、粒……大きい……かなぁ?
よく研いだあとは、しっかりとお水につけました。理想の給水時間を調べてみると、一般的に春・秋は45分、夏は20〜30分、冬は60〜90分ほどが理想とされていました。
炊きあがった〈新之助〉は……、あーっ! 粒、大きい! すみませんでした! はっきりとわかります。透明感があってツヤツヤ。湯気の中でお米たちがピンと立っています。
口に運ぶと、鼻に抜けるいい香り。噛むとじわっと甘みがあって、食感はふっくらモチッと。冷めてもやわらかいので、お弁当などにも適しているそうです。
一流シェフのレシピ動画を視聴
さてこの〈新之助〉、このままシンプルにいただいてもおいしいのですが、『ミシュランガイド新潟2020特別版』に掲載されたフランス料理店〈uoni〉のオーナーシェフ・西澤敬介さんが教えてくださったのは、なんとフレンチスイーツへのアレンジです。
昔ながらの甘酒でもなく、おばあちゃんのおはぎでもない。フランスの風薫るオシャレなお米スイーツのレシピ動画がこちら!
フランスでの修業歴を持つ西澤さんによれば「リオレといえば“ママンの味”」。お母さんやおばあちゃんがつくってくれる家庭料理だと言います。重要なステップは3つ。「牛乳でご飯を煮る」「生クリームを泡立てる」「両者を合わせる」だけ!
さあ、今回もとんでもないモテレシピの登場です。簡単なのに極上の味が約束されている、ずるいレシピ。デキる女だけが知っている、費用(手間)対効果バツグンのレシピです。
これをマスターして、好きなだけ愛する老若男女をもてなそうではないか! そして思う存分モテようではないか……! そんな気持ちを同じくする乙女の皆さま、ぜひご一緒に、レッツ・クッキング。
〈新之助〉の「リオレ」に挑戦!
【材料】(2人分)
・新之助(ご飯) …… 茶碗1/2杯
・牛乳 …… 200グラム
・グラニュー糖 …… 20グラム
・生クリーム …… 50グラム
・バニラビーンズ …… 1/4本
・生姜 …… 5グラム
・ブルーチーズ …… 30グラム
・エクストラバージンオリーブ油 …… 適量
・黒こしょう …… 適量
まずは、炊いた〈新之助〉、牛乳、半割りにしたバニラビーンズを鍋に投入。アクセントとなる生姜も、粗みじん切りにして加えましょう。
「いわば、ミルクでつくるリゾットのようなイメージです。本場では生米からつくるのですが、ここでは余ったご飯をチンして使ってもちゃんとおいしくできます。失敗知らずのコツは、きちんと計量すること、ですね」(西澤さん)
いつも目分量でテキトーにやっている私の所業を見抜いたシェフの貴重な金言に従って、正確に計量! それぞれを鍋に入れて、火にかけましょう。
グツグツしてきたら、10分ほどかけて弱火で煮込みます。
「ゆっくりコトコトと煮ることで、お米からもっちりとした粘りが出るのです。これがおいしさのヒミツ! 水分がなくなるまで、焦げつかないようにかき混ぜてくださいね」(西澤さん)
この間に、並行してフワフワの生クリームをつくりましょう。生クリームをボウルに入れて、氷を当てながらツノが立つまで泡立てます。
あ、あれ? ツノができないぞ。ブーンブーン。結局、不慣れな私はツノの誕生まで30分を要し、鍋を焦がしかけました。最初に生クリームをつくっておけば……反省。
ちなみに、慣れている方なら10分ほどで泡立て終わり、ちょうどその頃には鍋の中もいい具合に完成しているという、スムーズな工程で進むはず!
鍋の中の水分がなくなったら、鍋を火から外します。グラニュー糖を加え、氷をあてながら混ぜて冷やします。
十分に冷えたら、先ほどつくった生クリームを3回に分けて投入。これでリオレづくりはおしまい。冷蔵庫で2時間ほど寝かせます。
うーん、待ちどおしい。気分を盛り上げるべく、フランス映画でも見ましょうかね〜。と、ジリジリ待った2時間後、キンキンに冷えたリオレがキッチンに再登場。
仕上げには、味のアクセントとしてブルーチーズをポン。さらに、黒こしょう、オリーブ油をまわしかけて、と。
最後に魔法の秘密兵器「エディブルフラワー」を散らせばできあがり! ご覧ください、一瞬で華やかになるこの様子を。これぞトッピング・マジック。
さあ、完成です! さて、お味のほどは……?
パリ帰りの〈新之助〉、新たな境地へはばたく!
スプーンを入れた瞬間、もっちりとした弾力に驚き。なるほど、さすがは粒の大きい〈新之助〉。あんなに炊いてこね回した後でも粒がしっかりと残っていて、本当にリゾットみたい。口に運ぶと……噛みしめるごとに、じわっ、じわっと甘い! お米特有のやさしい甘みがやみつきに。
ママンの包容力そのもののようなクリーミーなミルクの味も、ちょっとやんちゃなブルーチーズの塩気もたまりません。オリーブ油がとろとろでハチミツみたい。見える。青空の下に広がるパリが見える……!
同時にうれしいのが、ふんわりと香る生姜。日本人の舌におなじみの風味。パリの街角からカッコいいパリジャンが出てきたと思ったら、フレンチファッションでばっちりキメた日本人〈新之助〉だった……みたいな。久しぶり。みちがえたよ〜。
フレンチでありつつ、お米への愛とリスペクトを感じさせる、新潟県民のシェフらしいお米愛にもジーンとしちゃうスイーツ「〈新之助〉のリオレ」。
ごちそうさまでした!
Recipe
【材料】 2人分
・新之助(ご飯) …… 茶碗1/2杯
・牛乳 …… 200グラム
・グラニュー糖 …… 20グラム
・生クリーム …… 50グラム
・バニラビーンズ …… 1/4本
・生姜 …… 5グラム
・ブルーチーズ …… 30グラム
・エクストラバージンオリーブ油 …… 適量
・黒こしょう …… 適量
【作り方】
1 冷蔵庫にある残りご飯〈新之助〉と牛乳、粗みじん切りの生姜、半割りにしたバニラビーンズを鍋に入れ弱火で煮る。
2 10分 ほど煮ると水分がなくなり粘りが出てくるので、焦げないようにかき混ぜる。
3 ご飯を煮ている間に、氷をあてながら生クリームを角が立つまで混ぜる。
4 煮終わったら、火から鍋を外し、グラニュー糖を入れ混ぜる。
5 鍋の中身を、氷をあてたボウルに入れ、かき混ぜながら冷やす。
6 冷えたら立てた生クリームを3回に分けて合わせる。
7 冷蔵庫に入れ2時間程度寝かせる。
8 皿に盛り付け、チーズ、黒こしょう、オリーブ油をかけて完成。
Profile 矢口あやは
大阪生まれ、東京在住。ライター・編集・イラストレーター。雑誌やWEB、書籍などの制作を中心に活動。料理が大の苦手。文化祭でゴマ団子を調理した際には破裂した団子が天井で跳ね返り、意中の人を直撃した。 Web|ayaha-yaguchi.amebaownd.com Instagram|@ayaha614
credit text:矢口あやは photo:やまひらく