新潟の日本酒の知られざる知識や楽しみ方を、新潟清酒ガイドブック『THE NIIGATA SAKE BOOK』から、ご紹介します。
新潟県は、日本酒生産量が全国第3位、酒蔵の数も日本一の酒どころです。新潟の日本酒は、豊かな自然環境と人々の努力の賜物。米、雪、水、技、人のどれが欠けても完成しません。そして、この5つの要素こそがおいしさの理由でもあるんです。
【米】酒米の栽培も盛んな日本一の米どころ
荒々しい日本海と連なる名峰に挟まれた広大な越後平野と、山間部の棚田。うまい地酒の原料である米は新潟で育てられます。新潟は米の産出額日本一の米どころ。背景には、日本海側の特徴である夏の長い日照時間があります。
新潟では食用米とともに、酒米の栽培も盛んです。全国でも多く使われている〈五百万石〉や〈越淡麗〉などが新潟生まれの代表的な酒米。〈五百万石〉で醸した日本酒は、すっきりとした味わい。〈越淡麗〉は、すっきり感とふくよかな味わいを兼ね備えています。
しっかりと米を磨き込み、高級な特定名称酒をどこよりも多く生産しているのも大きな特徴です。この傾向は普通酒も同じで、毎日の晩酌酒でも新潟の銘柄は好まれています。
【雪】新潟らしい酒をつくる雪の恵み
新潟は、冬になると山間部で4メートル以上も雪が積もる地域があり、国内有数の豪雪地帯。雪による低温は空気を浄化し、雑菌の繁殖を防ぎ、麹菌や酵母菌などの微生物の働きにとって最適な環境です。新潟らしい淡麗なつくりに不可欠な低温長期発酵に適した環境は、雪の恵みがもたらすもの。定温無振動の雪室で日本酒を低温熟成させる蔵もあります。
【水】淡麗な味わいを生みだす水
酒づくりでは水中のミネラル分が発酵を促し、ミネラルの少ない軟水で仕込むと発酵に時間がかかります。新潟の天然水のほとんどは雪解け水を多く含む軟水です。硬水で仕込んだ日本酒がフルボディーになりやすいのに対し、軟水はライトな味わいになる傾向があります。冬の積雪による安定した低温の環境のなか、軟水を使い醸すことで、なめらかで淡麗な新潟清酒がつくり出されます。
【技】技術発展のために設立した日本酒専門の試験場
新潟(かつての越後)で最も古い造り酒屋の創業は1550年頃。新潟で酒づくりに関わる男性(酒男)たちは冬期間に全国へ出稼ぎに行き、技を習得し、やがて〈越後杜氏〉集団へと成長。彼らは我慢強く勤勉、実直な気風で、腕を磨き、高い評価を獲得。江戸時代から明治時代まで越後杜氏は2万人を数え、活躍の場は関東・中部地方を中心に26都道府県に及び、明治初期には全国一の杜氏集団へと発展しました。
また、受け継がれてきた越後流の技術のさらなる発展を図るため、1930年に〈新潟県醸造試験場〉が設立されました。品質の向上や新潟清酒が全国にその名を馳せた背景には、この試験場の存在があり、現在、日本酒を専門とする県立試験研究機関としては全国唯一となっています。
【人】日本酒づくりの技術を未来へつなぐ人々
明治時代に最盛期を誇った〈越後杜氏〉。その技を継承する蔵は現在でも関東・中部地方を中心に存在しています。毎年4月には「越後流」の名のもと、独自の品評会を開催し、杜氏たちが自慢の酒を出品し、技を競っています。
時代の流れとともにつくり手の雇用が通年化されるなか、新潟県では1984年に、全国的にも例を見ない“蔵人の学校”として新潟清酒学校を設立しました。
越後杜氏の伝統の技と精神を確実に未来に繋げていこうとする思いから、酒蔵で働く若者たちを、酒蔵の経営者や杜氏、酒造技術者、新潟県醸造試験場が指導しています。現在では卒業生は500人、卒業後に杜氏となった人は30人を超え、職種も製造だけでなく営業職などにも広がり、新潟の酒づくりの“人”を支えています。
日本酒のテロワールを目指す〈新潟清酒産地呼称協会(Niigata O.C.)〉
〈新潟清酒産地呼称協会(Niigata O.C.)〉では産地呼称マークを設けており、マークのついた日本酒は5つの規定をクリアした100%新潟産の地酒です。地酒それぞれには、生産地域の土壌・気候と、酒蔵・蔵人の技術が生み出す、本物の個性が詰まっています。これはワインでいうテロワールであり、新潟生まれの日本酒を選ぶ確かな理由となっています。
Niigata O.C. 5つの基準
① 原料米は100%新潟県産
② 醸造地は新潟県
③ 仕込み水は新潟県醸造試験場で適正が確認された新潟の水
④ 精米歩合60%以下の特定名称酒
⑤ 品質管理委員会で認められたもの
テロワールを示す、新潟の日本酒を楽しもう
米、雪、水、技、人。それぞれのストーリーを知れば、一層奥深い味わいを楽しめそう。新潟の日本酒を選ぶときは、テロワールを示す産地呼称マークもぜひチェックしてみてくださいね。
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この記事は、新潟清酒ガイドブック『THE NIIGATA SAKE BOOK』の一部を転載し再編集したものです。紹介されている情報は2018年3月31日時点のものです。
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