関東圏からも近い上越地方。良質な米を育む土壌や気候であり、酒造好適米を生産している農家も多い場所で、夏は高温多湿、冬は積雪量が多いために低温多湿という発酵に適した環境です。だからこそ古くからお酒や味噌、醤油などの醸造が盛んに行われてきました。微生物の研究や発酵食品に関わりのある偉人も多く輩出しており、醸造技術の高い酒蔵が多いのが上越地方の特徴です。高品質な上越の日本酒を味わってみましょう。
Index この記事の目次
多種多様な日本酒が味わえる上越、妙高、糸魚川
上越地方には20の酒蔵があり、毎年10月下旬に開催される〈越後・謙信SAKEまつり〉は、上越地方だけでなく全国からも日本酒好きが集まる一大イベントです。日本酒をはじめ、どぶろく、ワイン、地ビールなどが一堂に集まり、上越地方の文化や酒造りを知ることができます。
上越地方は、上越市、妙高市、糸魚川市の3市からなり、上杉謙信ゆかりの地である上越市は歴史的スポットも多く、なかでも高田城址公園は日本有数の桜の名所としても知られています。自然にも恵まれた妙高市は、トレッキングやゴルフ、スキーなどのスポーツが楽しめ、良質な源泉のある温泉も点在しています。そして、糸魚川市はヒスイの産地として知られ、小滝川ヒスイ峡は日本で最初にヒスイの産出が確認された場所として有名です。
また、糸魚川は「フォッサマグナ」の西縁に位置し、新潟県では珍しい硬水の地域があります。このように上越地方は軟水と硬水の両方が湧き出るため、日本酒の味わいも多種多様です。
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新潟・上越の酒蔵
上越の酒蔵01:加賀の井酒造
新潟県でも古い歴史を持つ加賀の井酒造は、2006年の事業停止、2016年の糸魚川市大規模火災と数々の困難を乗り越えて酒造りを続けている蔵。軟水が特徴の新潟ですが、敷地内の水は中硬水のためほかとは違った味わいに仕上がります。
軟水である富山の蔵で仕込みをした経験がある18代目蔵元は「水にこそ土着感がある」と、蔵の井戸から湧き出る硬水を生かした造りを研究。自分がおいしいと感じる酒とエンドユーザーがおいしいという味を合わせながら仕上げていきたいと目標を掲げています。
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上越の酒蔵02:鮎正宗酒造
1時間に6000リットルも湧き出るという水に恵まれた妙高市の鮎正宗酒造。だからこそ水が味の決め手であると、水にこだわった造りをしています。そして作業後は確実に処理をして放流。水の汚濁防止に努めているのも、酒造りにおいて水の重要性を突き詰めているから。
6代目蔵元は、瓶内2次発酵のスパークリングや、ピンク色のにごり酒など若い世代や女性をターゲットとした商品も多く開発し、人気を博しています。今後もバリエーションを増やす予定で、幅広い世代に受け入れられることでしょう。
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上越の酒蔵03:竹田酒造店
上越市の海岸線からほど近い砂丘地帯に竹田酒造店はあります。創業当初からある〈かたふね〉は、甘口でふくらみのある味わい。〈はなじかん〉は女性をターゲットにした新銘柄で、甘みと旨みを追求した究極な酒を造りたいと完成させたもの。
地元の小学生を対象にして酒造好適米の作付け体験授業を行い、その米で醸した酒を20歳になった際にプレゼントするというプロジェクトも実施しています。本人たちが受け取る時には8年熟成しているその酒は何ものにも代え難く、日本酒の良さを次の世代に語り継いでいくきっかけとなるのではないでしょうか。
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上越の酒蔵04:武蔵野酒造
えちごトキめき鉄道高田駅から徒歩10分程度の場所にある武蔵野酒造。主要銘柄である〈スキー正宗〉は、スキー発祥の地として町おこしのため当時の市から依頼され、1927年に〈越山正宗〉から改名されたものです。第二次世界大戦中にはカタカナ名は敵性語とされ「寿亀」を「スキー」と読ませて販売されていました。2019年には、この〈寿亀正宗〉の名前が復活し、大吟醸、純米大吟醸、純米吟醸がラインナップされました。
また、他社製品を武蔵野酒造が表現するという実験的なTributeシリーズなど、常に魅力ある商品を生み出しています。
蔵の特徴は400リットルという小さい仕込みタンク。そのサイズを生かした新しい造りをしているといいます。2023年、産地の違う同一品種の原料米を使って味わいの差を試す仕込みをするようで、飲み手にとって実に楽しみでなりません。
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上越の酒蔵05:丸山酒造場
県南西部に広がる高田平野の東側、世界有数の豪雪地帯である東頸城(くびき)丘陵に接する里山にある丸山酒造場。その前身は糀屋を生業としたと伝わっています。
日本酒造りの責任者を杜氏と呼びますが、新潟県には越後杜氏と呼ばれる杜氏集団が存在し、このエリアは越後杜氏三大流派の一つ、頚城杜氏の拠点です。農繁期には米づくり、冬には酒造りに励み、お互いの経験や知識が共有され、高度な酒造技術が培われた土地です。
丸山酒造場では昭和初期から主要銘柄に〈雪中梅〉を掲げ、日々の疲れを癒すやわらかな甘さが特長です。普通酒であっても手間暇を惜しまない箱麹法による糀づくりを続けています。
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上越の酒蔵06:新潟第一酒造
前身の亀屋酒造と5つの蔵が合併して誕生した、上越市の新潟第一酒造。北越急行ほくほく線の車窓から見える高台に蔵があります。合併した際に公募によって命名されたのが代表銘柄〈越の白鳥〉。
現蔵元は、酒造好適米の契約栽培や、季節労働である蔵人制度を廃止して年間雇用の社員での製造を始めるなど改革を進め、品質向上に努めてきました。創業から100年を過ぎ、「安らぎと喜びと感動を伝える酒造り」をモットーに従業員のみで酒造りを行ない、一口飲んだだけでわかるインパクトのある味わい、酒質で世界へ羽ばたいてゆこうと研鑚しています。
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上越の酒蔵07:君の井酒造
妙高市の君の井酒造は、創業が1842年とされていますが、たび重なる火災によりそれより以前の記録がなく、実際にはもっと古い創業なのかもしれません。
日本酒を造る土台となる酒母/酛(しゅぼ/もと)は、現在では人工の乳酸を添加し、安定かつ効率的に育成することができる「速醸酛」が主流で行われているなか、君の井酒造では蔵つきの乳酸菌を利用する「山廃酛」による酒造りを、製法が確立されてから今日まで続けています。ホーロータンクの導入にもいち早く尽力し、伝統製法を守りながら新しく設備投資するなど、品質向上に努めています。
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上越の酒蔵08:千代の光酒造
千代の光酒造は豪雪地として知られる妙高市の比較的高地にあります。大毛無山(おおけなしやま)の賜物である清らかな地下水や、冬場は雪に覆われて気温が一定になる蔵など、酒造りに適した環境が整っています。厳選した新潟県産の酒造好適米を使用するのはもちろんのこと、肥料をほとんど使わず栽培した〈山田錦〉を採用するなど原料にもこだわっています。
2015年に発売された新ブランド〈KENICHIRO〉は、次期蔵元が自身の名前を銘柄名にした渾身のシリーズ。年々ブラッシュアップされており、甘みと酸が際立ち、定番商品とはまた違った味わいです。
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上越の酒蔵09:田原酒造
糸魚川市押上のヒスイ海岸にほど近い場所にある田原酒造。糸魚川の水はミネラル分を含む中硬水。敷地内の井戸はその中硬水のため、主要銘柄である〈雪鶴(ゆきつる)〉の目指す味には適さないといいます。そこで、頸城駒ヶ岳山麓の天然湧水を汲みに行っています。
それだけでなく、上槽も全量槽搾り。自動圧縮機とは違い手間と時間がかかりますが、それだけ雑味の少ないきれいな味わい。〈雪鶴〉のきめ細かく柔らかな口当たりは軟水である湧き水と搾り方が大きく関係しているのです。
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上越の酒蔵10:渡辺酒造店
渡辺酒造店は、長野県・富山県の県境に近い山間の根知谷にあります。雪深い自然豊かな環境で、2003年から酒造好適米の自社栽培を始めて、米づくりから酒造りまで一貫生産するドメーヌ・スタイルの日本酒をつくる国内唯一の酒蔵です。
新潟県オリジナル品種米の〈五百万石〉と〈越淡麗〉のみを栽培し、醸造しています。根知谷の気候風土を映し出す味わいは、収穫年(ヴィンテージ)によって微妙に違います。
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田中酒造株式会社 | |
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創業 | 1643年 |
主要銘柄 | 能鷹 |
住所 | 新潟県上越市長浜129-1 |
電話番号 | 025-546-2311 |
web | 田中酒造株式会社 |
見学 | なし |
新潟県酒造組合HP | 田中酒造株式会社 |
妙高酒造株式会社 | |
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創業 | 1815年 |
主要銘柄 | 妙高山 |
住所 | 新潟県上越市南本町2-7-47 |
電話番号 | 025-522-2111 |
web | 妙高酒造株式会社 |
見学 | 要問い合わせ |
新潟県酒造組合HP | 妙高酒造株式会社 |
株式会社小山酒造店 | |
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創業 | 1831〜1845年 |
主要銘柄 | 越後自慢 |
住所 | 新潟県上越市大潟区土底浜3627 |
電話番号 | 025-534-2022 |
見学 | なし |
新潟県酒造組合HP | 株式会社小山酒造店 |
頚城酒造株式会社 | |
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創業 | 1936年 |
主要銘柄 | 久比岐 |
住所 | 新潟県上越市柿崎区柿崎5765 |
電話番号 | 025-536-2329 |
web | 頚城酒造株式会社 |
見学 | なし |
新潟県酒造組合HP | 頚城酒造株式会社 |
代々菊醸造株式会社 | |
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創業 | 1783年 |
主要銘柄 | 吟田川 |
住所 | 新潟県上越市柿崎区角取597 |
電話番号 | 025-536-2469 |
見学 | 要問い合わせ |
新潟県酒造組合HP | 代々菊醸造株式会社 |
加藤酒造株式会社 | |
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創業 | 1864年 |
主要銘柄 | 清正 |
住所 | 新潟県上越市吉川区下深沢233-1 |
電話番号 | 025-548-3765 |
web | 加藤酒造株式会社 |
見学 | なし |
新潟県酒造組合HP | 加藤酒造株式会社 |
上越酒造株式会社 | |
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創業 | 1804年 |
主要銘柄 | 越後美人 |
住所 | 新潟県上越市飯田508 |
電話番号 | 025-528-4011 |
web | 上越酒造株式会社 |
見学 | 要問い合わせ |
新潟県酒造組合HP | 上越酒造株式会社 |
株式会社よしかわ杜氏の郷 | |
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創業 | 1999年 |
主要銘柄 | よしかわ杜氏 |
住所 | 新潟県上越市吉川区杜氏の郷1 |
電話番号 | 025-548-2331 |
web | 株式会社よしかわ杜氏の郷 |
見学 | 通年(月曜は休み) |
新潟県酒造組合HP | 株式会社よしかわ杜氏の郷 |
池田屋酒造株式会社 | |
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創業 | 1812年 |
主要銘柄 | 謙信 |
住所 | 新潟県糸魚川市新鉄1-3-4 |
電話番号 | 0255-52-0011 |
見学 | なし |
新潟県酒造組合HP | 池田屋酒造株式会社 |
猪又酒造株式会社 | |
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創業 | 1890年 |
主要銘柄 | 月不見の池 |
住所 | 新潟県糸魚川市新町71-1 |
電話番号 | 025-555-2402 |
web | 猪又酒造株式会社 |
見学 | なし |
新潟県酒造組合HP | 猪又酒造株式会社 |
発酵文化が根づいている上越地方。日本酒はもちろんのこと、〈浮き糀みそ〉や発酵調味料〈かんずり〉などの発酵食品も名物のひとつになっています。
これら上越地方の発酵食品や郷土料理と、高品質でバリエーション豊富な日本酒を合わせてみてはいかがでしょうか。冬の雪が美しい湧き水となり良い米を育て、頚城杜氏などの技術者によってその米が酒になり、その酒を地元の食と一緒に味わう。こんな格別な楽しみ方を堪能してみてください。
credit text:山村真由美 監修・協力:新潟県酒造組合
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