「新潟=日本酒」と言っても過言ではないほどお酒のイメージが強い新潟。実際に、新潟県内には89の酒蔵があり、酒蔵数全国1位、消費量全国1位と、新潟と日本酒の関係は非常に深いのです。普段日本酒を口にしないという方も、耳にしたことがある銘柄がいくつかはあるのではないでしょうか。
この記事では、新潟県の県庁所在地・新潟市を含む、下越地方の酒蔵を紹介します。酒蔵の背景を知れば日本酒への理解も深まり、お酒も新潟もきっと好きになるでしょう。ぜひ記事を読んでから新潟清酒を楽しんでみてください。
下越地方の酒蔵は新潟市を中心に29蔵が点在
新潟県の北東部に位置する下越地方には、29の酒蔵が存在します。新潟市だけで15の酒蔵があり、その他、村上市や新発田市、阿賀野市、阿賀町、五泉市に酒蔵が点在します。
さらに、新潟市西蒲区は日本酒だけでなく、ワインやクラフトビール、ウイスキーなどの醸造場等が集まる全国でも珍しい場所です。西蒲原地域の5つの日本酒蔵では角田山と弥彦山の森林保護活動に取り組むなど、地域に貢献する蔵もあります。
そんな下越地方は上越新幹線、関越・北陸・磐越・日本海東北自動車道道と全国からのアクセスも良好で、中心部の新潟市にある新潟空港は国際便も就航している、まさに新潟の玄関口。阿賀町は福島の会津と接しており、村上市は山形と県境を接しているため東北地方との交流も深い場所です。
また、越後平野の北部に位置し海・山・川に囲まれた胎内市、城下町として発展してきた新発田市と、下越といっても言葉や文化、気候の違いがありとても広大な地域です。日本酒においても、ひと口に「下越の日本酒」とはくくれないほど、地域によってさまざまな酒蔵が存在しています。
新潟の酒蔵全89蔵の紹介はこちら
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新潟・下越の酒蔵
下越の酒蔵01:宮尾酒造
全国でも知名度の高い〈〆張鶴(しめはりつる)純〉(写真・左から〈〆張鶴 月〉〈〆張鶴 純〉)。純米酒がそれほど流通していなかった頃から、純米スペックの酒をていねいに造ってきたからこそ、今なお愛され続けている銘柄です。
2019年に創業200年を迎えたことをきっかけに純米大吟醸3種を少量ながらも定番化。そして、村上城址のことを親しみを込めて地元では「お城山」と呼んでいることから名づけられた新ブランド〈お城山〉をはじめ、品質第一を指針としながらも新たな挑戦していく心がファンを喜ばせています。
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下越の酒蔵02:王紋酒造
新発田藩の大地主、市島家から派生して酒造りを行ったのが始まりの市島酒造。2022年2月に社名を変更し、市島酒造から銘柄の〈王紋〉と同じく王紋酒造となりました。1979年に女性杜氏第1号が誕生し、多くの女性一級酒造技能士が活躍した蔵としても有名です。
目の前には諏訪神社があり歴史的な建造物もあることから、多くの方に来てほしいと2022年4月に体験型酒蔵リゾート施設〈五階菱〉をオープン。鏡開き、利き酒、旧仕込み蔵のプロジェクションマッピングなど、文字通り酒蔵を体験できるスポットとなっています。
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下越の酒蔵03:村祐酒造
わずか2名で仕込みを行なっている新潟市の村祐(むらゆう)酒造。水は2キロ先の山から湧き水を引いており、米はすべて新潟県産。代表銘柄は全国の公募で名づけけられたという〈花越路(はなこしじ)〉です。
2002年には、新しく〈村祐〉が誕生しました。新潟淡麗というイメージに風穴をあけるような、口当たり柔らかで甘い味わいです。蔵元の村山健輔さんの気負いのない仕事っぷりがお酒にも表れているのかもしれません。小さい規模だからこそ、隅々まで目が行き届き丁寧な仕事をしているのでしょう。
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下越の酒蔵04:大洋酒造
1945年、国の企業整備令が施行され、村上管内の14の酒蔵が合併して現在の大洋酒造が誕生しました。大洋酒造として設立したのは昭和ですが、母体となった各酒蔵の歴史は大変古く、1635年創業の蔵もあり、代々酒造りを続けてきた長い歴史と伝統があります。
村上市には、古くから長い歴史のある鮭食文化だけでなく、1996年度「全国肉用牛枝肉共励会」名誉賞受賞として日本一にも輝いた〈村上牛〉、そして米と豊かな食文化が根づいています。大洋酒造の主要銘柄である〈大洋盛〉はそれら地元の料理に合うもの、淡麗辛口で飲み飽きない酒というコンセプトで酒造りを続けています。また、山廃や低精米など新しい酒造りのチャレンジもしていきたいと意欲にあふれています。
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下越の酒蔵05:菊水酒造
1972年に日本初の生原酒缶として誕生した〈菊水ふなぐち〉。コンビニやスーパーでも手軽に購入できるので全国的な知名度を獲得しています。2010年にはアメリカに現地法人〈KIKUSUI SAKE USA,INC.〉を設立し、アメリカのバーでも缶のまま飲まれています。
そのほかにも、スマートパウチや缶のスパークリングなど、幅広いラインナップで商品を展開できているのは、製造工程に厳しい衛生管理基準値を設定し高品質を保っている証拠。国内外のあらゆる人が日本酒を楽しめる酒造りを追求しています。
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下越の酒蔵06:近藤酒造
5つの泉が湧き出ていたという言い伝えがある五泉市。その名のとおり豊かな水に恵まれた大地に近藤酒造は建っています。市の東側には菅名岳があり、積雪が地下水となり長い年月をかけ通称「どっぱら清水」が岩の割れ目から湧き出ています。
近藤酒造では、一年で一番水が澄む日といわれる、寒の入りから9日目(寒九)にこの水を汲み、酒造りの仕込み水に使用しています。
代表銘柄である〈越乃鹿六〉は、グルメ漫画『美味しんぼ』でフランス料理のエスカルゴに合うと絶賛された一品で、「鹿六」の名は料理の神、酒の神である「磐鹿六雁命(いわかむつかり)」に由来。〈五百万石〉や〈越淡麗〉など酒造りに必要な米の自社栽培にも力を注いでいます。
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下越の酒蔵07:金鵄盃酒造
かつて城下町として栄えた村松地域にある金鵄盃(きんしはい)酒造。霊峰・白山がそびえ立ち、その雪によって水が豊富にある場所です。
4年ほど前から地元の五泉市産の米を使用しています。8軒の農家と契約しており、社員が携わっている米もあるようで、米に愛情を注ぐ蔵人がいるからこそ酒造りにも真摯に向き合っているのがうかがえます。現在取り組んでいるのは、村松公園の桜から採取した桜酵母。村松らしい酒を造りたいという思いから桜酵母の酒造りに初挑戦。誕生したら村松公園の花見には欠かせない地酒となるでしょう。
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下越の酒蔵08:麒麟山酒造
蔵のある津川は毎年5月に行われる祭「狐の嫁入り行列」で知られる場所。使用する米はすべて地元の阿賀町産で、自社の事業部と地元農家の協力で23年かけて現在の麒麟山の味にたどり着きました。
生産の70パーセントが普通酒という〈麒麟山〉は毎日気兼ねなく楽しめるようにと地元の人が求める酒造りを心がけています。2020年にはコロナ禍によって交流が断たれた地元の方々へ向けて「おうちで麒麟山」という企画をし、特別ブレンドの〈麒麟山〉を配布しました。
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下越の酒蔵09:今代司酒造
新しいコンセプトや美しいデザインにこだわり、現代に合った地酒の魅力を発信する今代司(いまよつかさ)酒造。今と昔、人と人、地方と都市を結ぶという考え方を持っており、それは世界中のデザイン賞を受賞している〈錦鯉〉などラベルにも表現されています。
台所をリノベーションしてまるでミュージアムショップのような売店にし、酒蔵ツアーも常時開催。新潟駅から徒歩15分ほどの場所にあり、日本酒初心者も年齢も関係なく楽しめる、まさに新潟地酒の入り口となっています。
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下越の酒蔵10:石本酒造
新潟市のほぼ中央に位置する亀田郷にある蔵は、阿賀野川と信濃川を結ぶ小阿賀野川に囲まれた砂丘地で、阿賀野川水系の良質な水に恵まれています。亀田郷は江戸時代から梅の名産地であり、初春の残雪の中、可憐な花に彩られます。寒さに堪え、凛とした美しさを放つこの梅の花が、〈越乃寒梅〉の名の由来となっています。
戦後、満足のいく米が手に入らず多くの蔵が過酷な状況にあるなか、少量しか造れないのであれば喜ばれる酒を造ろうと上質な酒を造り続けていました。凛と咲く梅一輪に、自らの酒造りの美意識を重ね、いつの時代も変わらず美しさを放つ寒梅のように、日本酒の真の価値を、世代を超えて伝えています。
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下越の酒蔵11:DHC酒造
DHC酒造は、新潟市北区(旧豊栄市)の地で100年以上に渡り日本酒を造りつづけてきた酒蔵です。2014年にDHCグループの一員となりDHC酒造として生まれ変わりました。
食の安全性を保証する制度として、約450年の歴史を誇る「コーシャ※」認証取得など、1908年の創業以来の品質重視の方針を引き継ぎ、日本酒のさらなるおいしさを追及し続けています。また、酒造の古くからの母屋を一部改装し、販売所〈越後の里 嘉山亭〉を開設。地元の人、観光客の憩いの場として多くの人を楽しませています。
※イスラム教徒のハラールフードのように、ユダヤ教徒が食べてもよいとされる食品のこと。
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下越の酒蔵12:峰乃白梅酒造
越後平野のほぼ中央、日本海に面して連なる弥彦山と角田山。その角田山の麓の福井地区に蔵があり、以前は福井酒造という名でした。主要銘柄である〈峰乃白梅〉が誕生したのは1979年で、当時としては珍しく普通酒を廃止し、特定名称酒のみ製造。品質の山頂を目指して〈峰〉を、味わいに清らかさを求めて〈白梅〉と命名したといいます。
現在はラベルも一新し、コンペティションにも参加。結果も残し、歴史ある古い蔵でありながら、時代に合わせてより良く変化し続けています。
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下越の酒蔵13:越後鶴亀
越後鶴亀は1890年創業。新潟市の中心部から車で約1時間、角田山(かくだやま)の山麓の町の中にあります。人々に喜ばれる美味しい酒を目指し、銘柄も分かりやすく、おめでたい商標をという思いから「鶴亀」という名がつきました。
越後鶴亀のお酒は旨味と酸味のある味わいが特長の酒質です。それにはフレッシュであることも大切な条件。特定名称酒の火入れは1回だけ、その後お酒をすべて瓶貯蔵しています。ワイン酵母で醸した純米吟醸、純米大吟醸、スパークリング、生酒をはじめ、ラベルデザインで受賞するなどパッケージもセンス溢れる商品が多くあります。
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下越の酒蔵14:笹祝酒造
蔵の敷地には竹林が広がり、そこからイメージして6代目蔵元の友人がデザインしてくれたというパンダのキャラクターが印象的な〈笹祝〉。かわいらしいラベルや新しい商品が次々と出されていますが、地域に根ざした酒造りは変わりません。
2017年に見学できるように酒蔵を改築したのも、蔵内を見てみたいという地元の声から。2023年3月には新たな施設〈麹の理科室(仮)〉をオープン予定。麹に触れて学び、そこから日本酒に親しみを持ってほしいという蔵元の願いが込められ、家族で行ける酒蔵を目指しています。
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下越の酒蔵15:弥彦酒造
眼下に日本海と新潟平野を一望する弥彦山、その麓には彌彦神社。自然と神の恩恵を授かっている「泉」と呼ばれた地に弥彦酒造があります。初代が「泉流醸造法」を確立し、大正時代頃までは「泉流に腐造なし」とまで言われ、県内の蔵から大いに歓迎されたほどの酒蔵です。
泉流を習得した蔵人たちは多くの蔵で杜氏となって活躍したことから、出世蔵と称されていました。古代米〈愛国〉を復活させるなど、農業から醸造まですべて弥彦産にするべく〈彌彦愛国プロジェクト〉も実現。また、越後一宮彌彦神社に仕える御神酒蔵でもあります。
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越後桜酒造株式会社 | |
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創業 | 1890年 |
主要銘柄 | 越後桜 |
住所 | 新潟県阿賀野市山口町1-7-13 |
電話番号 | 0250-62-2033 |
web | 越後桜酒造株式会社 |
見学 | 通年(月曜休み) |
新潟県酒造組合HP | 越後桜酒造株式会社 |
越つかの酒造株式会社 | |
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創業 | 1781年 |
主要銘柄 | 越乃あじわい |
住所 | 新潟県阿賀野市分田1328 |
電話番号 | 0250-62-2011 |
web | 越つかの酒造株式会社 |
見学 | 通年(土日・祝日は休み) |
新潟県酒造組合HP | 越つかの酒造株式会社 |
白龍酒造株式会社 | |
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創業 | 1839年 |
主要銘柄 | 白龍 |
住所 | 新潟県阿賀野市岡山町3-7 |
電話番号 | 0250-62-2222 |
web | 白龍酒造株式会社 |
見学 | なし |
新潟県酒造組合HP | 白龍酒造株式会社 |
ふじの井酒造株式会社 | |
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創業 | 1886年 |
主要銘柄 | ふじの井 |
住所 | 新潟県新発田市藤塚浜1335 |
電話番号 | 0254-41-3165 |
web | ふじの井酒造株式会社 |
見学 | なし |
新潟県酒造組合HP | ふじの井酒造株式会社 |
金升酒造株式会社 | |
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創業 | 1822年 |
主要銘柄 | 金升 |
住所 | 新潟県新発田市豊町1-9-30 |
電話番号 | 0254-22-3131 |
web | 金升酒造株式会社 |
見学 | 要問い合わせ |
新潟県酒造組合HP | 金升酒造株式会社 |
下越酒造株式会社 | |
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創業 | 1880年 |
主要銘柄 | 蒲原 |
住所 | 新潟県東蒲原郡阿賀町津川3644 |
電話番号 | 0254-92-3211 |
web | 下越酒造株式会社 |
見学 | 通年(土・日曜は休み) |
新潟県酒造組合HP | 下越酒造株式会社 |
塩川酒造株式会社 | |
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創業 | 1912年 |
主要銘柄 | 越の関 |
住所 | 新潟県新潟市西区内野町662 |
電話番号 | 025-262-2039 |
web | 塩川酒造株式会社 |
見学 | 要問い合わせ |
新潟県酒造組合HP | 塩川酒造株式会社 |
樋木酒造株式会社 | |
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創業 | 1832年 |
主要銘柄 | 鶴の友 |
住所 | 新潟県新潟市西区内野町582 |
電話番号 | 025-262-2014 |
見学 | なし |
新潟県酒造組合HP | 樋木酒造株式会社 |
高野酒造株式会社 | |
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創業 | 1899年 |
主要銘柄 | 越路吹雪 |
住所 | 新潟県新潟市西区木山24-1 |
電話番号 | 025-239-2046 |
web | 高野酒造株式会社 |
見学 | 要問い合わせ |
新潟県酒造組合HP | 高野酒造株式会社 |
株式会社越後伝衛門 | |
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創業 | 1996年 |
主要銘柄 | 伝衛門 |
住所 | 新潟県新潟市北区内島見101-1 |
電話番号 | 025-388-5020 |
見学 | なし |
新潟県酒造組合HP | 株式会社越後伝衛門 |
株式会社越後酒造場 | |
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創業 | 1932年 |
主要銘柄 | 甘雨 |
住所 | 新潟県新潟市北区葛塚3306-1 |
電話番号 | 025-387-2008 |
web | 株式会社越後酒造場 |
見学 | なし |
新潟県酒造組合HP | 株式会社越後酒造場 |
宝山酒造株式会社 | |
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創業 | 1885年 |
主要銘柄 | 宝山 |
住所 | 新潟県新潟市西蒲区石瀬1380 |
電話番号 | 0256-82-2003 |
web | 宝山酒造株式会社 |
見学 | 通年(不定休) |
新潟県酒造組合HP | 宝山酒造株式会社 |
朝妻酒造株式会社 | |
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創業 | 1909年 |
主要銘柄 | 雪乃幻 |
住所 | 新潟県新潟市西蒲区曽根251-2 |
電話番号 | 0256-88-7895 |
web | 朝妻酒造株式会社 |
見学 | なし |
新潟県酒造組合HP | 朝妻酒造株式会社 |
LAGOON BREWERY合同会社(輸出用清酒製造免許蔵) | |
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創業 | 2021年 |
主要銘柄 | 翔空 |
住所 | 新潟県新潟市北区前新田乙576-1 |
電話番号 | 025-250-0069 |
web | LAGOON BREWERY合同会社 |
見学 | 通年 |
新潟県酒造組合HP | LAGOON BREWERY合同会社 |
新潟の日本酒がひとまとめに「新潟淡麗辛口」と言われた時代はもう過去の話。各蔵それぞれ個性的な味わいがあり、多彩なラインナップを揃えています。しかし、新潟清酒が高品質であるのはどの蔵も同じで銘醸地であることに間違いはありません。選ぶのにひと苦労するかもしれませんが、迷ったときは、蔵のストーリーやその地域性を思い出してみてください。きっと心に響く一本があるはずです。
credit text:山村真由美 監修・協力:新潟県酒造組合
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