新潟のつかいかた

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新潟・佐渡の酒蔵、全5蔵!
佐渡の豊かな自然に育まれた
個性豊かな銘柄が魅力 Posted | 2023/02/17

佐渡の最大の魅力は大自然。四方を海に囲まれていて、山、川、湖、そして畑や田んぼといった日本の縮図のような景観が広がっています。能楽や鬼太鼓、佐渡おけさといった伝統芸能など、独自の文化が息づいているのも特徴です。こんな魅力溢れる島で造られている日本酒に興味をそそられませんか。

佐渡には5つの酒蔵がありますが、どの蔵でも「新潟淡麗」とひと括りにできないほどバラエティに富んだ日本酒が造られています。また、佐渡は特産物も豊富で、代表的なおけさ柿のほかに、牡蠣、いか、南蛮エビ、寒ブリといった海産物や、いごねりなどの加工品も。佐渡の食材と佐渡の日本酒をぜひ味わってみてください。

自然豊かな環境が育む佐渡の酒

佐渡エリア5蔵の地図

新潟県の西部に位置する日本海側最大の離島、佐渡島。現在は5つの酒蔵がありますが、最盛期には200もの蔵が存在したといいます。それほど水や米に恵まれた環境だということでしょう。海洋性の気候で、四季の変化に富んでおり、それぞれの時期に楽しみがあります。

金北山(きんぽくさん)の雪解けとともに訪れる春は、「花の島 佐渡」といわれるほど島内各地でさまざまな草花が咲き乱れ、夏はマリンスポーツのほか、アースセレブレーションなどのイベントが目白押しです。秋には黄金色に輝く田園風景が広がり、海の幸がおいしい冬は日本海側特有の荒波が岩にぶつかり細かい泡ができる自然現象「波の華」も見ることができます。

特別天然記念物であるトキが放鳥されていることでも知られており、トキが生息するために必要な環境を整えるため、畑は農薬や化学肥料を減らし、田んぼで生態系調査を行うなどの取り組みをしているところもあります。こうした豊かな自然環境だからこそ美酒が生まれるのです。

新潟・佐渡の酒蔵

佐渡の酒蔵01:尾畑酒造

尾畑酒造の主要銘柄〈真野鶴〉3種の300ml瓶

米、水、人、佐渡の4つの宝の和をもって醸すという意味である「四宝和醸」という言葉をモットーとする尾畑酒造。廃校となった旧西三川小学校を再生させた学校蔵を、2014年から尾畑酒造のふたつ目の蔵として酒造りを行っています。

尾畑酒造の外観

その仕込みに加えて、酒造りを学びたいという人たちを受け入れる体験プログラムやワークショップの開催、東京大学未来ビジョン研究センターの研究室の設置など幅広い活動をしています。日本酒はもともとその地域に根づいた産物であり、地域循環型の産業。そこに、エネルギーや人も循環させることでサステナブル・ブルワリーとして進化している蔵なのです。

Information

【尾畑酒造株式会社】
創業:1892年
主要銘柄:真野鶴
住所:新潟県佐渡市真野新町449
電話番号:0259-55-3171
web:尾畑酒造株式会社
見学:通年
新潟県酒造組合HP:尾畑酒造株式会社

佐渡の酒蔵02:逸見酒造

逸見酒造の主要銘柄〈真稜〉の一升瓶

佐渡で一番小さい蔵である逸見(へんみ)酒造。仕込み量が少ないぶん、人の目が隅々まで届くのがメリットです。蔵のある一帯の地下には貝殻層が堆積。そこで濾過された地下水が使われており、新潟県では珍しい中硬水で仕込みをしています。

逸見酒造の外観

島内にある順徳上皇の火葬塚、真野御陵を由来に持つ銘柄〈真稜〉で山廃造りを続けており、複雑な酸とキレの良さがあります。もうひとつの銘柄〈至(いたる)〉は果実を思わせるフルーティーな香りで首都圏でも人気。昔ながらの造り方を守りながら新しいことへも挑戦し、規模は小さいながらも味の幅の広い蔵なのです。

Information

【逸見酒造株式会社】
創業:1872年
主要銘柄:真稜
住所:新潟県佐渡市長石84番地の甲
電話番号:0259-55-2046
web:逸見酒造株式会社
見学:要問い合わせ
新潟県酒造組合HP:逸見酒造株式会社

佐渡の酒蔵03:天領盃酒造

天領盃酒造の新ブランド〈雅楽代(うたしろ)〉3種の四合瓶

小さな酒蔵が再編を繰り返しながら続き、1983年に佐渡銘醸が設立されたのが天領盃酒造の前身です。2018年、経営難になったこの蔵を自力で資金調達して買収し、当時全国最年少の蔵元となった加登仙一さんは業界でも注目されました。

天領盃酒造の外観

主要銘柄である〈天領盃〉は昔から愛されており、2019年に発売された新ブランド〈雅楽代(うたしろ)〉は穏やかで軽快、今まで天領盃酒造にはなかった味わいで人気となっています。

〈雅楽代〉の開発とともに〈天領盃〉もリブランディングして刷新。また、蔵の敷地内には佐渡初のクラフトビールブルワリーが誕生しました。〈天領盃〉と同じ仕込み水で醸造されたビールも話題となっています。

Information

【天領盃酒造株式会社】
創業:1983年
主要銘柄:天領盃
住所:新潟県佐渡市加茂歌代458
電話番号:0259-23-2111
web:天領盃酒造株式会社
見学:通年
新潟県酒造組合HP:天領盃酒造株式会社

佐渡の酒蔵04:北雪酒造

北雪酒造の主要銘柄〈北雪〉2種の四合瓶

超音波振動や音楽を聴かせて貯蔵する熟成酒にはじまり、ほかにはない設備投資を行い次々と新しいことを取り入れてきた北雪酒造。全国的にも貴重な遠心分離機もそのひとつ。

醪(もろみ)を透明な酒と粕(かす)に分ける上槽という作業では、多くの蔵がヤブタ式という自動的に搾れる機械を使用しているなか、北雪酒造では遠心分離機で高速に回転させることで遠心力を利用して酒を抽出しています。粕はヤブタ式のように板状ではないため後の処理に非常に苦労するのですが、それで醪本来の味や香りを生かすことができるのです。

北雪酒造の外観

また、側面から発酵状況が観察できるという利点と、サイズが小さいためによりこだわりを持って仕上げられることから、ガラスタンクを導入。お酒がさらにおいしくなるためにはどうすれば良いのかと常に試行錯誤している蔵なのです。

Information

【株式会社北雪酒造】
創業:1872年
主要銘柄:北雪
住所:新潟県佐渡市徳和2377-2
電話番号:0259-87-3105
web:株式会社北雪酒造
見学:要問い合わせ
新潟県酒造組合HP:株式会社北雪酒造

佐渡の酒蔵05:加藤酒造店

加藤酒造店の主要銘柄〈金鶴〉2種の一升瓶

1915年創業の加藤酒造店。1993年に現在の場所に蔵を移転させたのは、より良い水を求めたため。それにより理想とする酒質に近づけることができました。使用する米はすべて佐渡産。佐渡島内でも唯一の全量佐渡産米を使用している蔵です。

加藤酒造店の外観

だからこそ、自然栽培の酒米〈越淡麗〉で醸した〈上弦の月〉や無農薬栽培の酒米〈たかね錦〉を使用した〈拓(ひらく)〉など、米にこだわりを持った商品が多くあります。主要銘柄である〈金鶴〉は飲み飽きない酒で、地元で広く愛され島内消費がほとんど。

今後は苦みを抑えた酒質にチャレンジしたいといいます。良い水とこだわりの米で、さらにきれいな味わいとなっていくのでしょう。

Information

【有限会社加藤酒造店】
創業:1915年
主要銘柄:金鶴
住所:新潟県佐渡市沢根炭屋町50
電話番号:0259-52-6511
web:有限会社加藤酒造店
見学:なし
新潟県酒造組合HP:有限会社加藤酒造店

この記事の取材をした2022年の年末から年明けにかけて、佐渡は大雪による停電が続くという事態が起こり、漁業や企業、そして酒蔵にも大きな影響を与えました。それでも、良い経験と思えるようにしたいという前向きさや、停電エリアへ炊き出しに行くなど協力しあう島の人々の姿には心打たれるものがあります。

そんな方々が携わっているお酒はとてもおいしい。そして佐渡にある蔵は5蔵それぞれが、驚くほどバリエーション豊かなのです。すべての蔵のお酒を飲み比べ、確かめてみてはいかがでしょう。きっと心に響く一本が見つかるはずです。

credit text:山村真由美 監修・協力:新潟県酒造組合