おうち時間が増えた中で、自炊の腕をあげている人も多いのでは? そんな方へ、新潟の名産品を自宅でアレンジするレシピをお届けします。これまでに試したことのないメニューをつくって、「おうち居酒屋」を楽しんでみてはいかがでしょうか。
今回は新潟県長岡市にある栃尾の名物「栃尾の油揚げ」をピックアップします。
Index この記事の目次
そもそも「栃尾の油揚げ」とは?
今では全国区の知名度となっている「栃尾の油揚げ」は、新潟県長岡市の北東に位置する栃尾地域の名物。地元では「あぶらげ」と呼ばれ親しまれ、一般的なものの約3倍というジャンボサイズの油揚げは、県内ではメインのおかずとして食卓に上がることがしばしば。
口に入れるとパリッとした噛み応えと適度な弾力があり、芯までフワッと柔らかい食感が特徴です。クセのない淡白な風味で、そのまま食べるのはもちろん、煮物や和え物などさまざまな楽しみ方ができます。
味の決め手となるのは生地の滑らかさと弾力性。油揚げを揚げる前の生地は一見普通の豆腐のように見えますが、実は違います。油揚げ専用に固めにつくられており、これを低温と高温の異なる2種類の油で揚げることで「栃尾の油揚げ」が完成します。
江戸時代から受け継がれる、歴史ある味わい
「栃尾の油揚げ」で知られる、長岡市にある栃尾地域。戦国武将の上杉謙信公が青年期を過ごしたゆかりの地でもあります。このエリアにはなんと16店(2020年7月時点)もの油揚げ屋さんがあり、地元では「あぶらげ店」として親しまれています。
特徴はなんといってもその大きさ! 平均で長さ20センチ、幅8センチ、厚さ3センチで、初めて手に取る人は厚揚げと間違えるほどだそう。低温と高温で2度揚げることで、外はパリッと中はふっくら仕上がっています。
このジャンボサイズの油揚げの起源は江戸時代にまで遡り、ふたつの説が語り継がれています。
ひとつが「秋葉神社説」。上杉謙信公が「楡原(こればら)の蔵王堂」より移したと伝えられる火伏せの神様である「秋葉三尺坊大権現(あきばさんじゃくぼうだいごんげん)」を祀る「秋葉神社」は、全国に多くの神社や末社があり、秋葉信仰における「日本総本廟」の称号をもっています。
江戸時代中期になると、全国からこの秋葉神社へ参拝者が訪れるようになり、何か特別なお土産を、とつくられたのが油揚げだったといわれています。
そしてもうひとつが「馬市説」。栃尾には江戸時代から続くうま市があり、昔は馬の取引が行われていました。当時馬の売買が成立すると、現代でいう契約書の代わりにお酒を酌み交わしたそうです。栃尾の油揚げはこの時、手づかみで食べられる酒の肴として考案されたともいわれています。
シンプル イズ ベスト! 油揚げそのものを味わう
江戸時代に生まれ、令和の時代にも愛されている「栃尾の油揚げ」。オーソドックスなのは、ネギやおかか、生姜、大根おろしなどの薬味をのせてお醤油をかける食べ方。油揚げの弾力とそのものの味わいを堪能できます。
なお、ポイントは電子レンジで温めたあと、フライパンかオーブントースターで軽く焼き目をつけること。中はふわふわ、外はパリパリでおいしく仕上がります。
また、「はさみ焼き」といって、油揚げに切り込みを入れて、キムチや納豆、ネギ味噌、チーズなど好みの具材を詰めてから両面をカリッと焼くのも、おなじみの食べ方です。もともと食べ応えのある「栃尾の油揚げ」がさらにパワーアップしますよ。
栃尾の油揚げのアレンジレシピ① 栃尾の揚げ揚げ浸し
栃尾の油揚げをさらに揚げてつくるレシピです。つくり方は、まずひと口大に切った油揚げを砂糖・醤油・おろし生姜と絡めます。これに、片栗粉を薄くつけて揚げた後、乱切りにしたなすを素揚げにします。
それから出汁・醤油・みりんを小鍋に入れてひと煮立ちさせ、この出汁を揚げた油揚げにかけます。最後に、素揚げしたなすを添え、大根おろしをのせて細ねぎを散らしたら完成です。揚げ出汁豆腐より出汁を含みやすく、よく染みた出汁がジュワーッと口の中に広がるのがたまりません。
全部で3度揚げ!?「栃尾の揚げ揚げ浸し」はサックリジューシー
栃尾の油揚げのアレンジレシピ② 栃尾の白和え
栃尾の油揚げを皮と中身の部分に分けて調理して白和えにするレシピです。まず、油揚げを横半分にスライスし、皮部分と中身を切り分けます。次に外側の皮部分をトースターで2~3分焼き、細めの短冊切りにします。
切り分けた油揚げの中身は白味噌・薄口醤油・砂糖と一緒にブレンダーなどでなめらかにします。最後にくるみと、油揚げの皮部分、中身を和えます。油揚げの皮のサクサクした食感と、中身のなめらかな口当たりのコントラストが絶品です。
水切り不要! 栃尾の油揚げを使った「栃尾の白和え」
「あぶらげ」と相性抜群な、栃尾の銘酒を醸す蔵
上杉謙信公の元服名「長尾景虎(かげとら)」にちなんで命名されたお酒〈越乃景虎〉を醸すのは、1847(弘化4)年創業の〈諸橋酒造〉。長岡市の東部、魚沼丘陵と越後山脈に挟まれた栃尾盆地にあり、冬には冷たい風が吹き下ろし、豪雪地帯として知られる場所で地元に親しまれるお酒をつくっています。
水と緑が豊富な自然環境で、原料にも恵まれているという同蔵。地元の棚田から採れた良質の酒米と、自社の井戸から汲み上げる天然水、聖なる神の森として伝えられ「名水百選」にも選ばれた「杜々の森(とどのもり)」の湧水を仕込み水に使用しています。
〈諸橋酒造〉が酒づくりにおいて大切にしているのは、「自己主張しすぎないお酒」というもの。「あくまでも食事の脇役であり、喉元をすっと落ちていくようなお酒」を目指しているといいます。
また、「毎日飲む普通酒だからこそ決して手を抜かずつくる」という先代の言葉を受け継ぎながら、日々お酒を仕込んでいます。
そんな〈諸橋酒造〉のお酒と「栃尾の油揚げ」を味わいながら、栃尾の歴史に思いを馳せてみては?
購入可能なお店
「栃尾の油揚げ」は表参道駅・徒歩1分のアンテナショップ〈ネスパス〉で購入できます。
web:表参道・新潟館ネスパス
※新型コロナウイルスの影響により営業日・営業時間を変更しておりますので、詳細はHPにてご確認ください。
お取り寄せ
お店によって素材や製法が異なり、味わいにも違いがある「栃尾の油揚げ」。複数社の取り扱いがあるこちらのサイトで取り寄せて、食べ比べてみるのもおもしろいかもしれません。
お取り寄せ:栃尾の油揚げの通販|新潟直送計画
諸橋酒造の詳細
web:諸橋酒造
credit text:長谷川梨紗(くらしさ) photo:長谷川浩史(くらしさ)