新潟のつかいかた

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半農半Xや6次産業化など、
新しい農業のかたちを実現した3人 | Page 2 Posted | 2020/10/09

「こんな人になりたい」と尊敬するウコン農家と6次産業化の道を模索

「地域のおじいちゃんがつくるウコン畑を継ぎ、ウコンを使ったドリンクを開発する」

最初に聞いたときは畑を継ぐことも、新潟でウコンをつくることもイメージが湧きませんでした。そう話し、継業と6次産業化の決意をしたのは、2016年に地域おこし協力隊として三条市下田(しただ)地域にやってきた田中美央さん。決めた理由は、ウコン農家山崎一一(かずいち)さんと過ごすなかで、「こんな人になりたい」と感じたからだそうです。

田中美央さん

Profile 田中美央さん

仕事:派遣社員 1989年生まれ。新潟市出身。旅行代理店勤務後、ピースボートで世界一周の船旅に出たときに地域を知らないことを痛感し、地域おこしに興味を持つ。2016年、三条市の地域おこし協力隊へ着任。退任してウコン事業を始める。web:Instagram

やさしさと誠実さを兼ね備えるウコン農家・山崎さんに惹かれて

ウコン農家山崎一一さん
一般的に南国で育つウコンを寒さの厳しい新潟に持ち帰り、栽培を成功させた山崎さん。現在、92歳。

田中さんとウコン農家の山崎さんとの出会いは、農作物のパンフレットをつくっているとき。

取材に行くと、秋風が吹く寒空の下、ひとりで収穫をしていたそう。そこから少しずつ手伝ううちに山崎さん自身に惹かれるようになりました。

「不慮の事故で足を悪くしてしまった山崎さんは、『家族に迷惑をかけたくない』と体を動かすためにウコン栽培を始めたそうです。もともとは南国でつくられるウコンでしたが、独学で雪国・新潟での栽培を成功させた、スーパーじいちゃんなんです」

今では道の駅で人気商品になり、スパイスカレーを提供する〈三条スパイス研究所〉で使われている山崎さんのウコン。その種芋を受け取り、田中さんも協力隊の畑でウコンの栽培を始めました。

ウコン農家を継ぎ、もっと多くの人に伝えるために6次産業化に着手

ウコンのノンアルコールシロップ
「ウコンが持つ、香木のような芳醇な香り」をコンセプトとしたノンアルコールシロップ。

協力隊を退任して次の仕事を考えていたとき、自らの人生を振り返ると、ずっと続けているのはウコンの栽培だけだったことに気づきます。山崎さんのやさしさと真摯な姿勢から、「こんな人になりたい」と休耕田を借りてウコンの栽培と商品開発を始めました。

「今は、ノンアルコールのウコンシロップを開発しています。アルコールを分解しやすいという効能で有名なウコンは、お酒を飲まない人からすると、遠い存在じゃないですか。そんな人にももっと身近に感じてほしくて。アルコールを飲む人も飲まない人も、同じウコンシロップからドリンクをつくれるようになればと思っています」

感性の近い人が集うシェアハウスで。暮らしにも遊びを盛り込む

友人・知人と晩酌中
シェアハウスには県内外さまざまな場所から、友人・知人が訪れる。

田中さんは現在、プロジェクトを一緒に進める友人とシェアハウス生活をしています。そこに集まるのは、旅人や、プロジェクトメンバーの知人。どの人も感性が近く、話していて会話が弾むそうです。

また、月に1度はおいしいものを食べる会を開催。三条市に移住してきた人のつながりが生まれる場にもなっています。

「最近、三条市に働きに来たり、住み始めた人が多いんですよね。でも、職場だけだとつながりも生まれにくい。そうした人と友人づてに知り合って、おいしいものを持ち寄り、一緒にごはんを食べたりしています」

「人生は長く、楽しいもの」。これは以前山崎さんがふとした会話のなかでこぼした言葉。プロジェクトでも、私生活でも、この精神を持ちながら生きていければと語る田中さんの瞳は、真っ直ぐに未来を捉えているようでした。

こども鍬

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