雪国に生きる知恵に触れる
第二浩和蔵から徒歩数分のところにあるモダンな建物が、八海山雪室。
雪室というのは雪を使った天然の冷蔵庫で、豪雪地帯の暮らしから生まれた知恵。電気冷蔵庫が普及する昭和30年代まで雪国各地で利用されていて、新潟県にも60もの雪室があったそう。
近年、こうした文化を見直そうと、雪室に関するさまざまなプロジェクトが新潟県内外で展開されていますが、八海山雪室でも日本酒をはじめとするさまざまな食品を貯蔵し、商品開発を行っています。貯蔵方法は、雪の中に食品を直接埋めて貯蔵する「かまくら型」と、庫内に雪を貯蓄して空間全体を冷やす「氷室型」のふたつの大きく分けられ、八海山雪室は後者の様式。
「冬になったら雪はその辺にいくらでもあるので(笑)、重機を使って1週間くらいかけて庫内に雪を詰め込みます」
最大1,000トンもの雪が入り、夏場でもそれらがすべて溶けることはなく、室温は年間通して4℃前後に保たれます。電気冷蔵庫との大きな違いは、湿度。雪室は90%程度と多湿なので、やわらかい寒さが特徴的なのだとか。またサーモスタットによる温度のブレがないので、貯蔵する食品にかかるストレスも少ないともいわれています。この雪室を利用したのが、〈純米吟醸 八海山 雪室貯蔵三年〉という商品。
「雪室で長期間貯蔵すると、味がまろやかになるんです。この雪室には約36万リットルのお酒を貯蔵できるのですが、より長く貯蔵したら味がどう変化するのか試作しているところです」
雪室には日本酒だけでなく、野菜やコーヒーも貯蔵していて、これらは同施設内にある〈千年こうじや〉で購入することも。ここでは保存食には欠かすことのできない、米、こうじ、発酵などをテーマにしたオリジナル商品を販売しています。
「私は県外出身なのですが、魚沼は発酵食や保存食が本当に充実していて驚きました。大抵の野菜や山菜は、干したり塩漬けにしたりして保存するのですが、これもやはり冬を中心に暮らしが巡っているからこそ。核家族が比較的少なく、3世代同居も珍しくないので、おばあさんが若い世代にこうした技術を伝承することが、今も自然に根づいているのだと思います」