ラーメン王国としての知名度が全国にも広まりつつある新潟県。その人気の礎として長く地元で愛されているのが「新潟5大ラーメン」です。エリア×ラーメンのジャンルの組み合わせで、新潟各地には地域ごとの個性あふれるラーメン店が存在します。
今回紹介するのは「長岡生姜醤油ラーメン」。新潟Komachi編集部に所属し、15年以上ラーメンを取材し続ける「新潟ラーメン伝道師」の片山貴宏さんが長岡生姜醤油ラーメンと、その人気店をご紹介します。
Index この記事の目次
長岡生姜醤油ラーメンとは
新潟県中部に位置する長岡市のご当地ラーメンといえば「長岡生姜醤油ラーメン」。オーソドックスな「中華そば」的な見た目ながら、濃い飴色のスープに、ホウレン草、ノリ、ネギなどが彩りを添えます。また、食べ応えのあるチャーシューもポイントのひとつで、調理法や使用する部位など各店のこだわりが見てとれます。
最大の特徴は、なんといっても「生姜」。スープをすするとじんわりと広がる生姜の風味は、冬の新潟の寒さを和らげてくれます。
長岡生姜醤油ラーメンは、都内に出店している店舗もあり、新潟5大ラーメンのなかでも首都圏にも知名度のあるラーメンです。長岡生姜醤油ラーメンの元祖と言われている〈青島食堂〉は、県外からも多くのファンが訪れ、その歴史は約50年。半世紀にわたって長岡で愛されているご当地ラーメンです。
新潟ラーメン伝道師・片山貴宏さんのコメント
「長岡生姜醤油ラーメンの誕生は、〈青島食堂〉のご主人の小さな気づかいがきっかけ。新潟県長岡市の冬は雪深く、『寒い時期にラーメンでもっと温まってほしい』という思いから誕生しました。そこで思いついたのがスープにたっぷりと生姜を入れること。ご主人の小さな気づかいが、長岡の味として知られるようになったのです」
長岡生姜醤油ラーメン①〈青島食堂〉
雪国ならではの滋味を生み出した元祖店
新潟市と長岡市に複数店舗を構え、東京・秋葉原にも支店を持つ〈青島食堂〉。長岡生姜醤油ラーメンの元祖として、その名を首都圏に広めた立役者です。創業は1961年で、当時は店名のとおり定食や麺類を提供していたそうですが、ラーメンの人気が高く約50年前にラーメン店に転向したそうです。
その人気の理由が、生姜をたっぷり加えたスープ。ひと口すすると生姜の風味が口中にじんわり広がり、食欲をかき立てられます。濃口醤油ベースのタレのコクとも相性は抜群。自家製の中太麺はモチモチ食感で、かむたびに生姜の存在感を楽しめます。
「体を温めてもらいたい」という気持ちから
長岡市は県内有数の豪雪地で、「お客さまにラーメンで体を温めてもらいたい」という理由から、スープの臭み消しに用いていた生姜の量を増やしたことで誕生しました。腕肉のチャーシューやホウレン草、メンマなど、トッピングは半世紀以上変わらず、メニューは「青島ラーメン」と「青島チャーシュー」の2種類のみ。追加トッピングができるので、好みの味にカスタマイズして楽しむことができます。
新潟ラーメン伝道師・片山貴宏さんのコメント
「濃口醤油がベースのタレと豚骨メインのダシを使っているので、スープをすすった瞬間は鋭い塩味を感じます。ただその後に生姜の爽やかな風味が追いかけてくるので、こってり感はほとんど感じません。本当にバランスの取れた一杯です」
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長岡生姜醤油ラーメン②〈たいち〉
特盛はなんと2人前350グラム
〈たいち〉のオープンは2009年。長年、中華料理の世界で腕を磨いたご主人が提供するラーメンは正油と塩の2種類で、いずれも生姜はもちろん、長ネギやニンニクなどの香味野菜をたっぷり使用。豚骨はご主人こだわりの青森県産豚ゲンコツで、力強いコクと濃厚な油を生姜の爽やかさが見事にまとめています。
地元長岡市の製麺所に特注した麺は滑らかなのど越しとモチモチ感が特徴。並盛りで175グラムと多く、大盛り(+200円)は250グラム、特盛り(+300円)になると2人前の350グラム! 丼は直径30センチのビッグサイズに変わり、バランスを考慮してスープも増量と、お得感満載です。
豚骨の強いコクと個性のあるトッピングが若者に人気
〈たいち〉の人気の理由は、個性のあるトッピング。丼を覆うチャーシューは定番の腕肉に加え、モモや肩ロースなどさまざまな部位を使用。手切りによる絶妙な食感の違いも楽しめます。極太メンマはサクッとした歯応えと黒コショウを利かせたピリ辛味が好評で、追加トッピングする人も多いそう。ボリュームだけでなく、細部に光るオリジナリティーが老舗の多い長岡市で人気を集めている理由です。
新潟ラーメン伝道師・片山貴宏さんのコメント
「より生姜を味わいたい人には、塩ラーメンもオススメ。塩ダレのスッキリ感が生姜の風味を引き立てるので、麺をすするたびに生姜をガツン! と感じられますよ」
Information
長岡生姜醤油ラーメン③〈ラーメンおこじょ〉
スッキリ系鶏スープにフレッシュな生姜が香る
ラーメン職人歴20年以上のオーナーが腕を振るう〈ラーメンおこじょ〉は、2017年に創作ラーメンを競う「WRGP(ワールドラーメングランプリ)」でファイナリストに選ばれた経験を持つなど、オリジナリティーあふれる一杯が人気の店。2022年から提供を始めた「ラーメン(生姜)」の味わいは、見た目に反して独自性にあふれています。
最大の特徴はスープに鼻を近づけるだけでも感じる、生姜のフレッシュな香り。地鶏が中心のダシの仕込みのときには生姜を加えず、営業開始前にスープに生姜を大量に投入することで他店にはない強い風味を実現しています。
窯焼きの肩ロースは崩れるほどやわらかい
チャーシューの部位は肩ロース1種類。箸で持つだけで崩れるほどやわらかく仕上げた煮豚はもちろん、イチ押しは窯焼き。塊のままタレに2日間漬け込み、炭火を入れた特製の窯でじっくり焼き上げます。仕上げに背脂で全体をいぶすというひと手間を加えて完成するその味わいは、豚肉の持つ味がギュッと凝縮。
ほどよい歯応えで、かむほどに旨味があふれてきます。生姜ペーストで味変ができるなど、食べ方にもオリジナリティーがあふれる一杯です。
新潟ラーメン伝道師・片山貴宏さんのコメント
「卓上の生姜ペーストは鶏油と一緒に繊維質がなくなるまで丁寧に攪拌されていて、スープとのなじみは抜群。生姜の風味がさらにアップするので、少しずつ加えて風味の変化を楽しんでください」
Information
長岡生姜醤油ラーメン④〈麺屋 かしん〉
王道を継承したニューフェイス
〈麺屋 かしん〉は長岡市のベッドタウン、宮内エリアに2019年オープン。宮内エリアは長岡生姜醤油ラーメンの元祖〈青島食堂 宮内駅前店〉をはじめ、老舗ラーメン店がひしめく長岡市屈指の激戦区。
看板メニューは、長岡市内の有名店で修業したご主人が腕を振るう「生姜醤油ラーメン」。生姜を中心に香味野菜をたっぷりと使用したスープは、透き通ったビジュアルながら旨味が凝縮。キレのある醤油ダレとも相性が抜群で、鼻から抜ける生姜の香りがすっきりと全体を締め、最後までペロリと食べられます。
麺が見えないほど大きなチャーシューは脂身の甘い豚バラ肉が2枚。追加トッピングの多さも〈麺屋 かしん〉の特徴で、香ばしい炙りチャーシューや炒め野菜、バターなど10種類以上あり、自分好みのカスタマイズを楽しめます。
「生姜味噌ラーメン」「まぜそば」も人気
生姜を利かせたダシに香ばしい炒め野菜をたっぷりのせた「生姜味噌ラーメン」や、ネギとひき肉、卵黄を豪快にかき混ぜて食べる「まぜそば」も人気で、ラーメン激戦区で若者から年配の方まで広く愛されるお店です。
新潟ラーメン伝道師・片山貴宏さんのコメント
「卓上に辛味ダレと魚粉があるので、味変にオススメです。炒め野菜をトッピングするとスープにコクが加わり、珍しい生姜醤油スープのタンメンを味わえます」
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長岡生姜醤油ラーメン⑤〈ちょび吉〉
新潟駅近くで味わう強烈な生姜フレーバー
JR新潟駅から徒歩圏内にある〈ちょび吉〉。落ち着いた店内にはロックバンド「キュウソネコカミ」の曲が流れていて、新潟市でライブがあるときはバンドメンバーも訪れるそうで、ファンの間では聖地として親しまれています。
オープン以来の定番メニュー「ド生姜醤油ラーメン」は、長岡生姜醤油ラーメンを愛する店主が本場の味に自らのオリジナリティを加えた一杯。注目すべきポイントは、強烈な生姜感です。
まさに「ド級」の生姜の香り
大量の生姜をダシはもちろん、タレ、香味油にまで惜し気もなく大量に使い、仕上げに自家製のジンジャーパウダーを加えて、他店の追随を許さない圧倒的な生姜の香りを実現。スープをすすった瞬間に生姜の香りが鼻を抜け、豚骨たっぷりのダシと県産の醤油を複数ブレンドしたタレによるコクが全体をバランスよくまとめています。
モチモチ食感の中太ストレートはとツルッとしたのど越しを楽しめ、食べ進むたびにスープを吸って麺が黒く染まり、すすった時の生姜感が増していきます。
長岡生姜醤油ラーメン発祥の地・長岡市のものとはまた違う、まさに「ド級」の生姜の香りを堪能してみてください。
新潟ラーメン伝道師・片山貴宏さんのコメント
「生姜をもっと味わいたい人は、キレのある塩ダレと合わせた『スーパージンジャーヘブン』がオススメ。生姜に複数のスパイスを加えたフレッシュな香りが、生姜好きにはたまらない一杯です」
Information
生姜の利かせ方だけでなく、チャーシューの部位や仕込みなど、長岡生姜醤油ラーメンには見た目ではわからない個性が詰まっています。ぜひその違いを食べ比べてみてください。
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credit edit:Komachi編集部