新潟のつかいかた

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新潟5大ラーメン
【燕背脂ラーメン】
新潟ラーメン伝道師が選んだ、
定番&個性派・進化系の5店舗 Posted | 2022/08/17

新潟5大ラーメン」とは、「長岡生姜醤油ラーメン」「燕背脂ラーメン」「新潟濃厚味噌ラーメン」「新潟あっさり醤油ラーメン」「三条カレーラーメン」の5つ。今回紹介する「燕背脂ラーメン」は、そのなかでも個性あふれるアレンジで店舗ごとのオリジナリティが強く、全国的に知名度が高いジャンルのラーメンです。

前回の「長岡生姜醤油ラーメン」に続き、新潟Komachi編集部に所属し、15年以上ラーメンを取材し続ける「新潟ラーメン伝道師」の片山貴宏さんが燕背脂ラーメンと、その人気店をご紹介します。

燕背脂ラーメンとは

全国的に「燕三条系背脂ラーメン」と呼ばれることもありますが、発祥は燕市。新潟県のほぼ中央に位置し、洋食器の生産で世界的にも有名な「職人のまち」です。

背脂たっぷりのスープとうどんのように太い麺は、戦後の高度成長期に忙しく働く職人たちにおいしい出前のラーメンを届けるため、〈杭州飯店〉が一般的な中華そばを改良したことが起源と言われています。スープが冷めないように表面にびっしり振りかけた背脂がコクを加え、伸びないように太くした麺がモチモチ感を生み、そのスタイルが燕市内で広まったというわけです。

玉ねぎや岩のりなどトッピングにオリジナリティがあり、麺・具・スープすべてに個性が光るスタイルは、そのオマージュ系ラーメンを提供する県外店も多く、知名度は今や全国区です。燕市に隣接する三条市のタクシー会社では、貸し切りで運転手がおすすめするお店を案内する「燕背脂ラーメンタクシー」を運行するなど、ラーメンファンにはたまらないサービスもあります。

新潟ラーメン伝道師・片山貴宏さんのコメント

「背脂たっぷりの見た目からこってりしていそうな印象ですが、煮干し中心のあっさりダシを使うお店が多く、くどさも思ったほどありません。幅広い層に愛されるバランスの良さが、地元に根づいた理由なんだと思います。麺の量が多いのも特徴で、どれも食べ応え満点です」

味も見た目も唯一無二! 全国にファンの多い元祖店〈杭州飯店〉

〈杭州飯店〉の「中華そば」
「中華そば」(900円)。

50台ある駐車場には県外ナンバーが多く止まり、70席の広い店内は常にお客さんでビッシリ。燕背脂ラーメンの総本山〈杭州飯店〉には、全国からファンが訪れます。店名に「飯店」とつくとおり、中華丼や焼きそば、ギョーザなど幅広いメニューをそろえていますが、ファンのお目当てはやはり「中華そば」です。

〈杭州飯店〉外観
JR燕三条駅からタクシーで訪れる県外客も多い。

スープを覆う背脂は国産豚にこだわり、外側の余分な脂は落とし、中心部分のみを使用しているのでスッキリした甘さが特徴。濃い褐色のスープは樽のまま仕入れた濃口の生じょうゆが味の要。キリッと角の立った塩味と背脂の甘みが見事にマッチします。全国から厳選した煮干しを使ったダシは香りが特徴で、スープを飲み込んだ後にふわっと心地いい香りの余韻を残してくれます。

「中華そば」のスープをレンゲですくう
煮干しが中心のスープは意外にあっさりしている。

うどんのような極太麺は毎朝打った麺をその日のうちに使用し、スープに負けない小麦の風味を楽しめます。ゆでる際に冷水を加えるので、麺の外側が締まり、独特のモチモチ感が生まれるそうです。「打ちたてじゃないとこの味は出せません。麺はその日のうちに使い切ります」と3代目主人の徐直幸さん。このこだわりが、半世紀以上ファンを魅了する理由です。

ザルですくった背脂をラーメンに振りかける様子
ザルですくった背脂をラーメンの上から小気味いいリズムで振りかける。

新潟ラーメン伝道師・片山貴宏さんのコメント

「麺の量は並盛りで約270グラムと一般的なお店の大盛りより大ボリューム。背脂を多めにして、コショウやお酢で味変を楽しむ常連さんもいるとか。一度お試しを!」

Information

【杭州飯店】
address:新潟県燕市燕49-4
tel:0256-64-3770
access:JR西燕駅から徒歩で約10分
営業時間:11:00~14:30、17:00~20:00(土・日曜は11:00~20:00) ※売り切れ次第終了
定休日:月曜(祝日の場合は翌日)、月2回月・火曜連休
駐車場台数:50台 席数:70席

燕背脂ラーメンを全国区に押し上げた立役者〈酒麺亭 潤〉

〈酒麺亭 潤〉の「中華そば」
「中華そば」(800円)。

燕背脂ラーメンの魅力を追求し、東京にも店舗を展開、今や全国区になった背脂ラーメンの立役者的な存在が〈酒麺亭 潤〉です。オーナーの松本潤一さんは、新潟ラーメンの魅力を海外にも伝えるべくドイツに店を構えるなど、熱き郷土愛で発信を続けています。

〈酒麺亭 潤〉外観
〈酒麺亭 潤〉。店内にはテーブルや座敷があり、休日は家族連れでにぎわう。

〈酒麺亭 潤〉の中華そばの特徴は、岩のり。板のりより磯の風味が強く、個性の強いスープにも負けない存在感があります。なかでも、スープが隠れるほど岩のりをトッピングした「岩のり中華」は人気が高いメニューのひとつです。

もうひとつの特徴が、背脂の量。デフォルトの「中油」や、増量した「大油」は燕市のラーメン店ではよく見かけますが、丼の上が真っ白になるほど背脂を振りかけた「鬼油」は〈酒麺亭 潤〉が発祥だとか。背脂好きにはたまらないサービスです。初めての方におすすめなのは、中油。煮干しを利かせたダシと背脂のコクのバランスを楽しんでみてください。

自家製麺は燕背脂ラーメンには珍しい丸麺。背脂がしっかり絡み、太麺ながらのど越しは抜群です。

追加トッピングの岩のり
岩のりは追加トッピング(+230円)する客も多い。
寸胴鍋で煮込まれている背脂
背脂はスープとは別の寸胴でじっくり煮込む。

新潟ラーメン伝道師・片山貴宏さんのコメント

「背脂を食べ慣れていないお客さんにも親しんでもらえるよう、東京の系列店では、背脂の粒が燕市の本店より細かいのだとか。背脂を振るザルの目をミリ単位で細かくしているという、お客さんにはわからない細部へのこだわりが、県外でも支持される理由です」

Information

【酒麺亭 潤 燕総本店】
address:新潟県燕市小牧464-12
tel:0256-66-3685
access:JR燕三条駅から車で約10分
営業時間:11:00~21:00
定休日:火曜
駐車場台数:37台 席数:60席
web:酒麺亭 潤|店舗案内
宅配にいがた麺の市
※「宅配にいがた麺の市」では、週替わりで新潟の人気ラーメンを販売しています。定期的に販売期間が変更されるので、販売期間をご確認ください。

濃厚スープに節系が香る、進化形〈味我駆〉

〈味我駆〉の「背脂中華 全のせ」
「背脂中華 全のせ」(900円)。

新潟県の中越地区から新潟市を縦断する国道116号線沿いにある〈味我駆(みがく)〉は2015年オープン。

煮干し中心のあっさりダシに、キレのあるしょうゆを合わせるのが燕背脂ラーメンのスタイルですが、こちらの看板メニュー「背油中華」のダシは、ゲンコツ中心の濃厚テイスト。冷やして味をなじませてから、煮干しやカツオ節、サバ節をたっぷり加えてフレッシュな風味を引き出します。

この動物系のコクと節系の香りはほかに類を見ず、まさに「進化形燕背脂ラーメン」と呼べる一杯です。

〈味我駆〉の外観
国道116号線沿いにある赤い看板が目印。

合わせるタレは新潟市南区〈扇弥商店〉の天然醸造しょうゆがベース。加温しない生じょうゆのため、香りやコクが強く、こってりしたダシや背脂にも負けない存在感があります。さらに、特製煮干し油をスープに浮かべて、燕背脂ラーメンらしさを演出しています。

寸胴鍋に入っているスープ
長時間炊いた豚骨ダシに魚介を加えてスープを仕上げる。

「スープがほかとは違うので、麺はスタンダードにしてバランスを取りました」と店主の大倉さんが語るように、地元燕市の製麺所から仕入れる麺は、おなじみの平打ち太麺。加水率が高く食感はモチモチで、独特のウェーブはスープとの絡みも抜群です。伝統を継承しつつ、革新的な側面を持つ一杯。老舗との味の違いをご堪能あれ。

卓上に用意されている玉ねぎのみじん切り
卓上には玉ねぎのみじん切りが常備され、無料で追加OK。

新潟ラーメン伝道師・片山貴宏さんのコメント

「丼は地元燕市産のメタル丼を使用しています。ステンレス製で保温性が高いため、食べ終わるまでスープの温度が下がりにくく、二重構造になっているので外側は熱くありません。金物産業がさかんな燕市ならではのこだわりにも注目です」

Information

【味我駆】
address:新潟県燕市吉田下中野591-5
tel:0256-77-8828
access:JR南吉田駅から車で約10分
営業時間:11:00~15:00、17:00~21:00 ※各30分前L.O.
定休日:不定休
駐車場台数:28台 席数:20席
宅配にいがた麺の市
※「宅配にいがた麺の市」では、週替わりで新潟の人気ラーメンを販売しています。定期的に販売期間が変更されるので、販売期間をご確認ください。

燕の老舗の流れを汲む新潟市の名店〈滋魂〉

〈滋魂〉の「中華そば」
「中華そば」(780円)。

麺が見えないほどスープには背脂がビッシリ。中央に玉ねぎと岩のりを浮かべたビジュアルは、燕背脂ラーメンの王道。国産小麦を贅沢に使った太麺は、やや角の取れた丸い形状でのど越しが抜群で、すするたびに煮干しがフワリと香ります。味わいも燕市で長く親しまれている味わいです。

〈滋魂〉外観
新潟の空の玄関口、新潟空港から車で約5分。

店主の安東さんは燕背脂ラーメンの名店〈酒麺亭潤 燕総本店〉で店長を務め、地元の新潟市で2010年に独立。「JUN ism」を看板に掲げ、スープにやや動物系のコクを加えて幅広い層に愛されるようアレンジを加えています。

味の要の背脂は「A脂」と呼ばれる、形、味ともに上質なものを使用。さらにボイルした後一度冷すことで、臭みが抜けて甘みが際立ちます。背脂の増量は中油・大油・鬼油まで無料というのも、修業元の〈酒麺亭潤〉と同様です。

背脂と煮干しが煮込まれている鍋
5種の煮干しをメインにサバ節などを使用した香り高いスープ。

中華そばのほかに、濃厚な豚骨ダシと味噌ダレを合わせた「禁断の濃厚味噌らーめん」や、煮干しの旨味を凝縮させたスープがクセになる「超絶煮干そば」など、修業元にはない独自のメニューもそろい、多くの常連に支持されている人気店です。

〈滋魂〉の「野菜味噌らーめん」
背脂たっぷりの「野菜味噌らーめん」(950円)も人気。

新潟ラーメン伝道師・片山貴宏さんのコメント

「燕市の老舗の背脂ラーメンに比べるとスープがややライトな仕上がりです。背脂はやや粒が大きめで、プチプチとした食感を楽しめます。くどさがなく甘みもあるので、背脂増量がオススメ!」

Information

【滋魂】
address:新潟県新潟市東区松崎1-1-28
tel:025-272-9260
access:JR新潟駅から車で約20分
営業時間:11:00~15:00、17:00~21:00 ※スープがなくなり次第終了
定休日:水曜、ほか不定休あり
駐車場台数:7台 席数:24席

長年地元で愛されるピリ辛系背脂〈王風珍〉

〈王風珍(わんふうちん)〉の「王風麺(赤)」
「王風麺(赤)」(890円)

約50席の広い店内にはカウンター、テーブル、座敷を完備し、平日はトラックドライバーやサラリーマン、休日は家族連れでにぎわう〈王風珍〉。

自家製太麺で提供する背脂醤油ラーメンをメインに、炒め野菜の旨味と熟成赤みそのコクが好相性の味噌ラーメンをはじめ、背脂なしの塩ラーメンやタンメンなど幅広いメニューがそろいます。また、〈王風珍〉のある旧吉田町のソウルフード「鳥肉のレモン和え」もあり、テイクアウトする常連も多いそうです。

〈王風珍〉外観
国道116号線沿いに店を構える〈王風珍〉。

店名を冠した「王風麺」は、辛味ネギがついた「赤」と、白髪ネギの「白」の2種類。特に「王風麺(赤)」は食べ進めるなかで煮干しが香るスープに、豆板醤、ニンニク、生姜の辛みや酸味が広がり、一度で二度おいしい仕上がりに。

「王風麺(赤)」のスープと辛味ネギをレンゲですくう
煮干しを長時間煮込んだダシと上質な背脂が好相性。

国産の全粒粉入り自家製麺はコシのある食感が特徴で、シャキシャキの辛ネギとの食感の違いを楽しめます。並盛りでも200グラムとボリューム感があり、厚みのあるやわらかい豚バラチャーシューが3枚ものっていて、この食べ応えが男性人気を集める理由です。

「玉ねぎらーめん」
「玉ねぎらーめん」(780円)も長年の人気メニュー。

新潟ラーメン伝道師・片山貴宏さんのコメント

「燕背脂ラーメンの多くは煮干し主体のダシですが、〈王風珍〉は豚と鶏をしっかり利かせているので、ほかとは違うこってりしたコクを味わえます。ネギのシャキシャキ食感がこってりスープをマイルドにしてくれるので、辛みの苦手な方は『王風珍(白)』や『玉ねぎらーめん』をぜひ!」

Information

【王風珍】
address:新潟県燕市下粟生津2955-2
tel:0256-92-7748
access:JR粟生津駅から車で約5分
営業時間:11:00~22:00
定休日:月曜
駐車場台数:30台 席数:47席

麺・具・スープのそれぞれに個性が光る燕背脂ラーメンは、お店によりこだわりもさまざまです。ものづくりのまちで職人の胃袋を長年支えてきた地域の味、ぜひ味わってみてください。

「宅配にいがた麺の市」では、新潟の人気ラーメンを販売しています。新潟のラーメンに特化し、豊富なラインナップを取り揃えています。冷凍状態でお届けするので長期保存が可能です。ぜひ、ご自宅でも人気店の味をお楽しみください!

credit edit:Komachi編集部