新潟のつかいかた

新潟5大ラーメンを徹底解剖! 新潟ラーメン伝道師が選んだ5大名店

新潟5大ラーメンとは?
それぞれの特徴と名店をご紹介 Posted | 2018/06/07

新潟県の食といえば、日本酒、魚、お米……だけではありません。2022年2月に総務省が発表した2021年家計調査で、新潟市が「中華そばにかけた外食費」で全国1位を獲得したとおり、ラーメンは新潟が全国に誇る食文化なのです。その人気の礎として長く地元で愛されているのが「新潟5大ラーメン」と呼ばれるご当地ラーメン。歴史は古く、約80年以上前から存在していて、その内容はどれも個性豊かです。

そんな新潟5大ラーメンの誕生の理由や代表的な店舗を、新潟Komachi編集部に所属し、15年以上ラーメンを取材し続ける「新潟ラーメン伝道師」の片山貴宏さんがご紹介。さらに、最近注目の新たな新潟ご当地ラーメンもピックアップ!

新潟5大ラーメンとは

新潟5大ラーメンの歴史は古く、半世紀以上前から存在していて、その内容はどれも個性豊かです。

新潟5大ラーメンとは、雪国の知恵として生まれ、体を芯から温めてくれる「長岡生姜醤油ラーメン」、大量の背脂と極太麺のインパクトで全国的にも知名度上昇中の「燕背脂ラーメン」、まるでつけ麺のように割りスープが一緒に提供される「新潟濃厚味噌ラーメン」、火力が思うようにいかない屋台だからこそ生まれた極細麺の「新潟あっさり醤油ラーメン」。そして、昭和初期から存在しながら、県内でも限られた地域でしか出合えない「三条カレーラーメン」の5つ。

どのラーメンにも、その地域ごとに象徴的な有名店があり、そのお店を中心にさまざまな個性あふれるラーメン店が独自の個性を武器にしのぎを削っています。有名店だけでなく、そこから派生したバラエティ豊富なラーメン店の違いを楽しめるのも新潟5大ラーメンの特徴です。

新潟5大ラーメン① 長岡生姜醤油ラーメン

長岡生姜醤油ラーメンの特徴

濃い飴色のスープに食べ応えのあるチャーシューとホウレン草、ノリ、ネギ。いわゆる「中華そば」的なクラシックなビジュアルながら、スープをすするとじんわりと広がる生姜の風味。これが「長岡生姜醤油ラーメン」の特徴です。

生姜たっぷりスープが体を芯から温める〈青島食堂〉

〈青島食堂〉の青島ラーメン

新潟市と長岡市に複数店舗を構え、東京・秋葉原にも支店を持つ〈青島食堂〉。生姜醤油ラーメンの元祖として、その知名度を首都圏に広めた立役者。

ゲンコツとショウガを煮込んで取ったダシと、チャーシューを煮込んだしょうゆダレがスープの肝。コクがありながらもスッキリした味わいに仕上げたスープに、細麺が好相性です。チャーシューには、豚のウデ肉を使うことが多く、スープに溶け出した脂身の甘みも、味わいに深みを生み出しています。レンゲにすくったスープを口へ運ぶと、ほんのりスパイシーなショウガがふわりと香ります。「チャーシューメン」は麺が隠れるほどウデ肉のチャーシューがたっぷりで若者に大人気です。

青島ラーメンのスープをレンゲですくう
青島ラーメン(800円)

新潟ラーメン伝道師・片山貴宏さんのコメント

「誕生のきっかけは『寒さ』。長岡市は新潟県内でも雪深い地域で、『寒い時期にラーメンでもっと温まってほしい』というご主人の思いから、高い保温効果が期待できる生姜をたくさん入れたスープが完成したそうです」

〈青島食堂〉の外観

Information

【青島食堂 宮内駅前店】
address:新潟県長岡市宮内3-5-3
tel:0258-34-1186
access:JR宮内駅から徒歩で約1分
営業時間:11:00~20:00
定休日:第3水曜、1月1日
駐車場台数:16台 席数:10席
web:青島食堂

新潟5大ラーメン② 燕背脂ラーメン

燕背脂ラーメンの特徴

濃口しょうゆが効いた煮干しベースの真っ黒なスープに、うどんのようなモチモチの極太麺、みじん切りの生タマネギ。そして、それらを覆い隠すような背脂がたっぷり。

新潟5大ラーメンのなかでもとくにオリジナリティーが強いのが「燕背脂ラーメン」です。

丼を覆う大量の背脂が最後までスープを熱々に〈杭州飯店〉

〈杭州飯店〉の中華そば

燕背脂ラーメン生みの親〈杭州飯店〉が立つのは、金物産業が盛んな燕市。約50年前の創業当時は金物職人たちへの出前が多く、スープが冷めにくいように背脂でフタをし、麺がのびにくいようにうどんのような太さにするなどの工夫が、現在のスタイルを生み出しました。

コクや甘みを加える役割も持つ背脂は、かつては使い道がなく廃棄されていたそうです。背脂はスープの保温だけでなく、「フードロス削減」という役割も担っていたのです。

〈杭州飯店〉の中華そばの背脂たっぷりのスープ
中華そば(850円)

新潟ラーメン伝道師・片山貴宏さんのコメント

「こってりしていそうな見た目ですが、スープは煮干しが中心のあっさり系なのでバランスがよく、くどさはありません。こってり好きの人は『大油』『中油』など背脂の量の追加も可能ですので、お試しあれ」

〈杭州飯店〉の入口

Information

【杭州飯店】
address:新潟県燕市燕49-4
tel:0256-64-3770
access:JR西燕駅から徒歩で約10分
営業時間:11:00~14:30、17:00~20:00(土・日曜は11:00~20:00)※売り切れ次第終了
定休日:月曜(祝日の場合は翌日)、月2回月・火曜連休
駐車場台数:50台 席数:70席

新潟5大ラーメン③ 新潟濃厚味噌ラーメン

新潟濃厚味噌ラーメンの特徴

新潟市西蒲区発祥の「新潟濃厚味噌ラーメン」はその名のとおり、超がつくほどスープが濃厚。別添えの割りスープを加えて好みの濃さに調整しながら楽しむ独特のスタイルです。

全国に数あるご当地味噌ラーメンのなかでも味噌の分量が少ないですが、そのパンチ力から札幌、山形と並び、日本三大味噌ラーメンにも数えられています。

お客さんへのサービスから生まれた、日本三大味噌ラーメン〈こまどり〉

〈こまどり〉の味噌ラーメン

元祖の〈こまどり〉は、赤味噌を中心に数種類の味噌をブレンドしてつくる味噌ダレが決め手。動物系のダシでしっかりとコクもあり、押し寄せる濃厚さも相まって、一度食べればヤミツキになる味わいです。ミニ丼で提供される割りスープを少しずつ足して、自分好みの味を探りながらいただきましょう。

〈こまどり〉には味噌ラーメンが10品もあり、メニューに応じてダシだけでなく、味噌の種類や産地も変えています。お店に足を運ぶ時はぜひ食べ比べてみてください。

〈こまどり〉の味噌ラーメンのスープをレンゲですくう
味噌ラーメン(780円)
〈こまどり〉の店内に並ぶたくさんの味噌樽

新潟ラーメン伝道師・片山貴宏さんのコメント

「元祖の〈こまどり〉は創業当時、同じ西蒲区の岩室温泉にお店がありました。宿泊客の方が飲んだ後のシメに味噌ラーメン食べたところ、味が濃くて食べられないというクレームが入り、ご主人がやかんに味を薄めるスープを入れて届けたことがきっかけだそうです」

Information

【こまどり】
address:新潟県新潟市西蒲区竹野町2454-1
tel:0256-72-2827
access:JR巻駅から車で約10分
営業時間:11:00~14:30、16:30~21:30 ※土曜・祝日は11:00~21:00、日曜は11:00~19:00
定休日:木曜
駐車場台数:80台 席数:60席

新潟5大ラーメン④ 新潟あっさり醤油ラーメン

新潟あっさり醤油ラーメンの特徴

新潟市の中心部には、1960年代頃まで多くの堀が流れていました。その堀沿いに軒を連ねていた屋台から生まれた一杯が「新潟あっさり醤油ラーメン」。そうめんのような極細麺と丼の底が見えるほど透き通ったスープが特徴です。

屋台時代から続くあめ色スープと超極細麺〈三吉屋本店〉

〈三吉屋本店〉の中華そば
中華そば(650円)

新潟市の繁華街、古町エリアにお店を構える〈三吉屋 本店〉は、歴史深い「新潟あっさり醤油ラーメン」をいまに伝える代表格。

製麺所に特注している麺はほどよくコシがあり、のど越しは抜群。極細麺が鶏ガラや豚骨をベースにした飴色スープの中を泳ぐ姿は美しさを覚えるほどですが、のびないうちにサッといただきましょう。かみ応えのある豚モモ肉のチャーシューやコリコリ食感のメンマ、ネギといったおなじみのトッピングも相まったノスタルジックな一杯です。

〈三吉屋本店〉の中華そばの少し縮れた麺

新潟ラーメン伝道師・片山貴宏さんのコメント

「創業当時の〈三吉屋 本店〉の屋台では、大きな火力を使った仕込みや調理ができませんでした。鶏ガラや煮干しを弱火でじっくり煮込むことであっさりしたスープが生まれ、お客さんを待たせないためにすぐゆであがる超極細麺を使ったそうです」

〈三吉屋 本店〉の外観

Information

【三吉屋 本店】
address:新潟県新潟市中央区西堀通5-829
tel:025-222-8227
access:JR新潟駅から車で約10分
営業時間:11:00~16:00、17:00~19:00
定休日:火曜
駐車場台数:なし 席数:22席

新潟5大ラーメン⑤ 三条カレーラーメン

三条カレーラーメンの特徴

三条カレーラーメンはご当地ラーメンとして認知され始めたのが2010年頃のため、他県への知名度でいうと新潟5大ラーメンのなかではやや印象が薄いですが、その歴史は80年以上と最も古いと言われています。

現在、三条市内の30店以上でカレーラーメンが提供されており、その内容はラーメンの上にカレールーをかけたり、ダシとルーを混ぜてカレースープに仕上げたりと、お店によりさまざま。

80年以上前から愛される、二大国民食のコラボ〈正広〉

〈正広〉のカレーラーメン

70年以上の歴史を持つ〈正広〉はダシとルーを混ぜたカレースープタイプ。ご主人こだわりの約1年間長期熟成させた約20種のスパイスからつくる特製ルーに、昆布やカツオ節、豚骨からとった和風ダシをブレンドして仕上げています。

タマネギ、ニンジン、豚肉とおなじみの具材は食べ応え満点。スパイシーな味わいはもちろんご飯とも好相性で、お店ではカレーライスも人気です。夏季限定で登場する「冷やしカレーラーメン」は油分を取り除いていて、暑い時期にさっぱり食べられると好評。

カレーがよく絡んだ麺
カレーラーメン(900円)

新潟ラーメン伝道師・片山貴宏さんのコメント

「昭和初期に銀座の洋食店で修行された方が家業の食堂を継ぎ、そこでラーメンとカレーを組み合わせたのが起源と言われています」

〈正広〉の外観

Information

【正広】
address:新潟県三条市石上2-13-38
tel:0256-31-4103
access:JR燕三条駅から車で約5分
営業時間:11:00~14:30 L.O.(日曜・祝日は15:00 L.O.)、17:00~21:00 L.O. ※火曜の昼は14:30まで
定休日:月曜(祝日の場合は翌日)
駐車場台数:30台(共有) 席数:80席

5大ラーメンだけじゃない! 注目の新潟ご当地ラーメン

ここまでは新潟県内各地で半世紀以上根づく5つのラーメンを紹介してきましたが、ラーメン王国新潟にはまだまだ知られざるご当地ラーメンが存在します。なかでも片山さんが注目しているふたつのご当地ラーメンを紹介します。

上越妙高豚骨ラーメン:臭みのない濃厚豚骨スープ〈オーモリラーメン〉

〈オーモリラーメン〉のラーメン

新潟県の南西部に位置し、長野県に隣接する妙高市に立つ〈オーモリラーメン〉は創業70年超の老舗。看板メニュー「ラーメン」は豚骨と水のみで仕上げた濃厚なスープが最大の特徴。15時間以上、アクをとりながらじっくり煮込むことで、臭みを抑えた味わいに仕上がるそうです。

現在は、妙高市と隣接する上越市内でこのスタイルのラーメンを提供するお店は10軒ほど。オーモリラーメンは通販も行っていて、足を運ばなくてもお店の味を楽しめます。

濃厚豚骨スープをレンゲですくう
ラーメン(700円)

新潟ラーメン伝道師・片山貴宏さんのコメント

「モチモチの太麺は創業当時から自家製で、ほかのお店に麺を卸した際にスープのつくり方を教えたことで、このスタイルが地元で広まりました。地元のスーパーでも麺とスープのセットを販売していて、地元では『ラーメンといえばオーモリ』という人も多いです」

Information

【オーモリラーメン 新井店】
address:新潟県妙高市柳井田町2-12-20
tel:0255-72-9870
access:妙高はねうまライン北新井駅から車で3分
営業時間:11:00~16:00
定休日:木曜
駐車場台数:60台 席数:100席

新潟濃厚マーボーメン:チーズ&背脂たっぷり!〈たまる屋〉

チーズと背脂たっぷりの〈たまる屋〉の背脂マーボーメン

マーボーメンといえば中華料理店でおなじみのメニューですが、その多くはラーメンの上にマーボー豆腐をのせるスタイル。2014年頃から新潟市では、中華料理店とは違うタイプのマーボーメンを提供するお店が増えています。

ブームの火つけ役といわれている〈たまる屋〉では、並盛りで1.5玉分の麺に、500グラム以上のマーボー豆腐がたっぷり! 仕上げに四川サンショウと背脂を豪快に振ったウマ辛な一杯。ご飯との相性も抜群で半ライスを注文してミニマーボー丼を楽しむのもおすすめです。

〈たまる屋〉の背脂マーボーメン
背脂マーボーメン(890円)

新潟ラーメン伝道師・片山貴宏さんのコメント

「豚骨主体のこってりスープの上にとろみの強いマーボー豆腐をのせるお店や、背脂やチーズをたっぷり入れる汁なし系など、スタイルはさまざまですが、共通しているのは、どれも濃厚。新潟濃厚味噌ラーメンを代表に、新潟県では味の濃いラーメンが多いので、それをマーボーメンに応用したことが人気を集めた理由だと思います」

Information

【たまる屋 女池インター店】
address:新潟県新潟市中央区鳥屋野417
tel:025-278-7500
access:JR新潟駅から車で15分
営業時間:11:00~22:00(21:30 L.O.)※スープがなくなり次第終了
定休日:なし
駐車場台数:50台 席数:28席

新潟のご当地ラーメンはどれも個性豊か!

オリジナリティーにあふれる新潟のご当地ラーメンはいずれも、地元のお客さんにラーメンをおいしく食べてもらいたい! という思いから誕生しました。次回は新潟5大ラーメンそれぞれの老舗、人気店などをご紹介していきます。

credit edit:Komachi編集部