コシヒカリ、日本酒、鮮魚、ラーメン……etc. 新潟県に来たらマストのグルメは数あれど、この時期にぜひ食べてほしいものといえば「へぎそば」。へぎそばは新潟県の郷土料理のひとつで、ツルツルとしたのど越しと、弾力のあるコシを楽しめる、新潟県民なら誰もがなじみのあるおそばです。
今回は、へぎそばの特徴や食べ方とともに、新潟県内でへぎそばの2大聖地として知られる小千谷市と十日町市、さらにはへぎそば発祥の地といわれる魚沼エリアから、おすすめの9店をご案内します。
そもそもへぎそばって何? 意外と知らないへぎそばの特徴
へぎそばは、新潟県の長きにわたる織物文化とそばの食文化が融合して生まれた郷土料理。食べるとコシが強くてのどごしがよいのが特徴の、冷たいそばです。
「へぎ」と呼ばれる剥ぎ板でつくった四角い器に、そばをひと口程度に丸めて盛りつけます。へぎとは、「剥ぐ=はぐ=へぐ」のなまりで「剥ぎ」が語源と言われています。
また、盛りつけるときには、ひと口分ずつ小分けにしたそばを親指に絡ませ、水きりは「手振り・手びれ」と呼ばれています。これは、織物をするときの糸を紡いだ「かせぐり」に由来する手繰りという動作を表しています。
そして、器や盛りつけも独特ですが、つなぎにふのりが使われているところもへぎそばの特徴のひとつです。
ふのりとは? へぎそばにふのりが使われる理由
「ふのり」とは、紅藻類の清浄な岩礁海岸の潮間帯(潮の干満によって海と陸に変化する場所)に生息する海藻です。澄んだ近海のごく限られた場所で1年のなかでも限られた時期でしか収穫できません。
もともと織物のよこ糸を張るためにふのりが使われていました。ふのりは煮溶かすとトロリとした糊状になります。このふのりを使ってそばがつくれないかと考えたのがへぎそば誕生のきっかけだったと言われています。
このふのりをつなぎに使った滑らかなそばだからこそ、ほかのそばにはない美しい盛りつけができるのです。
こうした独自の食文化をもつへぎそばは、十日町地区では2021年に、小千谷地区では2022年に、文化庁が認定する、世代を超えて受け継がれてきた100年続く食文化「100年フード」に選出されました。
へぎそばの食べ方は? 地域で異なる薬味にも注目
へぎそばは、ひと口分が盛りつけられたそばを取り、そばつゆにたっぷり浸して食べます。つゆは一般的なそばつゆと同じく、かつお節や昆布からとった出汁に、しょうゆや砂糖で味つけをしたものが多いです。
一方、薬味には、刻みネギやゴマ、からしがつくのが特徴です。からしはつゆには溶かさずに、そばの上に少量のせていただきます。全国的にはそばの薬味はわさびが一般的ですが、なぜへぎそばはからしがつくのかというと、魚沼地方はわさびが生育に適さないため、代わりにからしで食べる風習があるからです。
地域によってはわさびを出すお店もありますが、からしかわさびか選べたり、薬味に刻みのりやくるみがついたりと、地域によって少しずつ楽しみ方が異なるようです。
名店がずらり! 小千谷名物へぎそば3選
【 へぎそば1 】時代に流されず守り続ける角屋流のふのりそば
〈小千谷そば 角屋〉
明治22年(1889年)の創業以来、変わらない味を守り続ける老舗〈角屋〉では、水を使わず、ふのりだけでつないだコシのあるへぎそばを提供しています。小千谷で栽培したそば粉を石臼で挽き、ふのりを寒天のように濃密に煮ることで、つるりとしたのど越しとコシの強さを生み出しています。みごとな漆塗りのへぎに盛られたふのりそばは、何度食べても感動ものです。
削りたての本枯節を使った甘めのつゆも、こちらの代名詞。一切の妥協を許さず、脈々と受け継がれてきた伝統の味が、今日も多くのファンを魅了しています。
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【 へぎそば2 】小千谷産のそば粉を自家製粉! 野菜も自家栽培するこだわりの味
〈小千谷の蕎麦処 須坂屋〉
小千谷市の郊外にある〈須坂屋〉は、地元の玄そばを仕入れて自家製粉し、ふのりと小麦粉を加えて、二八で打つのが特徴。つなぎや水分量をその時々の粉の状態によって微調整することで、ふのりそばならではののど越しの良さを引き出しています。そばは井戸から汲み上げた沸き水で打っていて、ほのかな甘みが感じられると評判です。
メニューは、創業から変わらずそばと天ぷらのみ。天ぷらに使う野菜も自家栽培にこだわり、先代から引き継いだ味を守り伝えることに力を注いでいます。
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【 へぎそば3 】香りを重視したふのりそばを風情あふれる古民家で
〈まるいち〉
小千谷市街から十日町市へ向かう山道に立つ〈まるいち〉では、地元産のそばを100%使い、一番粉とふのりのみで打ったそばが自慢。そばの香りを立たせるため、ふのりの量は控えめにしているのがこちらの特徴で、ツルリとした食感と、後を追うそばの上品な香りを楽しめます。
そんなそばを引き立てるつゆも、ご主人の自信作。地元の〈山崎醸造〉のしょうゆをブレンドして熟成し、利尻昆布や7種の削り節を加えることで、旨みが調和したまろやかな味わいに仕上げています。
ご主人の丁寧な仕事が光るそばを求めて、足しげく通うファンも多いのだとか。田園風景を眺めながらそばを手繰る、贅沢なひとときを過ごしてみてくださいね。
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