新潟のつかいかた

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新潟県の名物
「へぎそば」ってどんなそば?
へぎそばの聖地、
小千谷・十日町エリアから
地元情報誌『Komachi』
が選ぶ9店 Posted | 2022/11/25

コシヒカリ、日本酒、鮮魚、ラーメン……etc. 新潟県に来たらマストのグルメは数あれど、この時期にぜひ食べてほしいものといえば「へぎそば」。へぎそばは新潟県の郷土料理のひとつで、ツルツルとしたのど越しと、弾力のあるコシを楽しめる、新潟県民なら誰もがなじみのあるおそばです。

今回は、へぎそばの特徴や食べ方とともに、新潟県内でへぎそばの2大聖地として知られる小千谷市と十日町市、さらにはへぎそば発祥の地といわれる魚沼エリアから、おすすめの9店をご案内します。

そもそもへぎそばって何? 意外と知らないへぎそばの特徴

へぎそばを蕎麦猪口で食べる様子
写真提供:新潟県観光協会

へぎそばは、新潟県の長きにわたる織物文化とそばの食文化が融合して生まれた郷土料理。食べるとコシが強くてのどごしがよいのが特徴の、冷たいそばです。

「へぎ」と呼ばれる剥ぎ板でつくった四角い器に、そばをひと口程度に丸めて盛りつけます。へぎとは、「剥ぐ=はぐ=へぐ」のなまりで「剥ぎ」が語源と言われています。

また、盛りつけるときには、ひと口分ずつ小分けにしたそばを親指に絡ませ、水きりは「手振り・手びれ」と呼ばれています。これは、織物をするときの糸を紡いだ「かせぐり」に由来する手繰りという動作を表しています。

そして、器や盛りつけも独特ですが、つなぎにふのりが使われているところもへぎそばの特徴のひとつです。

ふのりとは? へぎそばにふのりが使われる理由

へぎに綺麗に盛られたそば
写真提供:新潟県観光協会

「ふのり」とは、紅藻類の清浄な岩礁海岸の潮間帯(潮の干満によって海と陸に変化する場所)に生息する海藻です。澄んだ近海のごく限られた場所で1年のなかでも限られた時期でしか収穫できません。

もともと織物のよこ糸を張るためにふのりが使われていました。ふのりは煮溶かすとトロリとした糊状になります。このふのりを使ってそばがつくれないかと考えたのがへぎそば誕生のきっかけだったと言われています。

このふのりをつなぎに使った滑らかなそばだからこそ、ほかのそばにはない美しい盛りつけができるのです。

こうした独自の食文化をもつへぎそばは、十日町地区では2021年に、小千谷地区では2022年に、文化庁が認定する、世代を超えて受け継がれてきた100年続く食文化「100年フード」に選出されました。

へぎそばの食べ方は? 地域で異なる薬味にも注目

へぎそばと天ぷら、漬物やたくさんの薬味が並んでいる
写真提供:新潟県観光協会

へぎそばは、ひと口分が盛りつけられたそばを取り、そばつゆにたっぷり浸して食べます。つゆは一般的なそばつゆと同じく、かつお節や昆布からとった出汁に、しょうゆや砂糖で味つけをしたものが多いです。

一方、薬味には、刻みネギやゴマ、からしがつくのが特徴です。からしはつゆには溶かさずに、そばの上に少量のせていただきます。全国的にはそばの薬味はわさびが一般的ですが、なぜへぎそばはからしがつくのかというと、魚沼地方はわさびが生育に適さないため、代わりにからしで食べる風習があるからです。

地域によってはわさびを出すお店もありますが、からしかわさびか選べたり、薬味に刻みのりやくるみがついたりと、地域によって少しずつ楽しみ方が異なるようです。

名店がずらり! 小千谷名物へぎそば3選

【 へぎそば1 】時代に流されず守り続ける角屋流のふのりそば
〈小千谷そば 角屋〉

〈小千谷そば 角屋〉のへぎそば
厳選したそば粉を使い、つなぎにふのりを使って打ち上げるへぎそば(3人前・7合2640円)。

明治22年(1889年)の創業以来、変わらない味を守り続ける老舗〈角屋〉では、水を使わず、ふのりだけでつないだコシのあるへぎそばを提供しています。小千谷で栽培したそば粉を石臼で挽き、ふのりを寒天のように濃密に煮ることで、つるりとしたのど越しとコシの強さを生み出しています。みごとな漆塗りのへぎに盛られたふのりそばは、何度食べても感動ものです。

〈小千谷そば 角屋〉の店内
創業130年以上の老舗の風格が漂う店内。

削りたての本枯節を使った甘めのつゆも、こちらの代名詞。一切の妥協を許さず、脈々と受け継がれてきた伝統の味が、今日も多くのファンを魅了しています。

Information

【小千谷そば 角屋】
address:新潟県小千谷市桜町4992
tel:0258-83-2234
access:JR小千谷駅から車で約10分
営業時間:11:00~14:30L.O.、16:30~19:30L.O.
定休日:不定休
駐車場台数:25台 席数:60席

【 へぎそば2 】小千谷産のそば粉を自家製粉! 野菜も自家栽培するこだわりの味
〈小千谷の蕎麦処 須坂屋〉

須坂屋のへぎそば
へぎそば(2人前1600円)。そばは地元で採れたものを中心に使用し、自社工場で製粉、製麺しています。

小千谷市の郊外にある〈須坂屋〉は、地元の玄そばを仕入れて自家製粉し、ふのりと小麦粉を加えて、二八で打つのが特徴。つなぎや水分量をその時々の粉の状態によって微調整することで、ふのりそばならではののど越しの良さを引き出しています。そばは井戸から汲み上げた沸き水で打っていて、ほのかな甘みが感じられると評判です。

須坂屋の店内
風格のある店舗。店内は天井が高く、ゆったりと過ごせます。

メニューは、創業から変わらずそばと天ぷらのみ。天ぷらに使う野菜も自家栽培にこだわり、先代から引き継いだ味を守り伝えることに力を注いでいます。

Information

【小千谷の蕎麦処 須坂屋】
address:新潟県小千谷市大字小粟田1721-1
tel:0258-82-3295
access:JR小千谷駅から車で約10分
営業時間:11:00~18:00
定休日:火曜、ほか不定休
駐車場台数:30台 席数:120席

【 へぎそば3 】香りを重視したふのりそばを風情あふれる古民家で
〈まるいち〉

〈まるいち〉のへぎそば
へぎそば(2人前1650円)は、創業当時から使っているというへぎで提供。薬味はシンプルにネギとワサビのみ。

小千谷市街から十日町市へ向かう山道に立つ〈まるいち〉では、地元産のそばを100%使い、一番粉とふのりのみで打ったそばが自慢。そばの香りを立たせるため、ふのりの量は控えめにしているのがこちらの特徴で、ツルリとした食感と、後を追うそばの上品な香りを楽しめます。

そんなそばを引き立てるつゆも、ご主人の自信作。地元の〈山崎醸造〉のしょうゆをブレンドして熟成し、利尻昆布や7種の削り節を加えることで、旨みが調和したまろやかな味わいに仕上げています。

〈まるいち〉の内観
古民家を移築した店内。築120年以上経た貫禄ある佇まいが魅力です。

ご主人の丁寧な仕事が光るそばを求めて、足しげく通うファンも多いのだとか。田園風景を眺めながらそばを手繰る、贅沢なひとときを過ごしてみてくださいね。

Information

【まるいち】
address:新潟県小千谷市真人町794-1
tel:0258-86-3037
access:JR下条駅から車で約10分
営業時間:11:00~14:00、17:00~20:00
定休日:水曜、火曜夜
駐車場台数:20台 席数:40席

〈繁蔵 田麦そば〉のへぎそば

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